54話 ボッチ 王女姉妹と死の円舞曲
さっそく次の階層へ、と行く前に宝箱の中身を回収しておく。
ボタンへと投げつける前に散々耐久度を削っていたこともあり、宝箱の破壊に成功していた。魔法の鎖を操って床に落ちていたSPスクロールを回収。
それと師匠も帰還で回収。
回収されるのは大鎌で切りつけて分裂する前の本体のみだ。もう片方の分裂した側は本体が回収されるとともに消えていった。
作業を一瞬で終えた後は、すぐさま下層へと突き進む。
次は地下三階層。奇数だからまた罠&迷宮の階層だ。
とはいってもやることは同じ。探知で地形情報の確認をしながら、いつ事故死してもおかしくないような速度で空の散歩を楽しむだけだ。
数々の罠を避けながら進み、ときにはゴリ押しで突破しながら順調に攻略を進めた。厄介だったのはゴリ押したときに罠が起動して、毒の煙幕が四方に撒き散らされたときだ。
俺の装備の効果により、毒については無効化されて問題は無かった。けれど、辺り一面が紫色の煙幕に覆われて視界が塞がれたときは困ったもんだ。
あのときは役に立たない視覚は邪魔になるので、探知を使用しつつ感覚をより尖らせるためにも目をつぶってカウンター移動しながら攻略した。
もう阿呆ほど練習してきただけに、カウンター移動は視界が閉じていようが問題なく成功した。
この慣れ親しんだ感覚は、もはや呼吸をするよなもので緊張感もなくリラックスしていた自分自身に驚いたものだ。
と、そんなこんなあって気づけば次のボス部屋に辿り着いてた。
豪華絢爛、という言葉が相応しい黄金色の煌めきに意匠が懲らされた門が俺を出迎えた。躊躇はしない。その大仰に開け放たれた門に誘われるように中へと進んだ。
そこには二つの人影があった。
その人物達は、全身に包帯が隈無く巻かれていて肌の露出が一切なかった。まさにその姿はミイラである。
身体の線が細く柔らかな身体つきから二人とも女性なのだろうと推察できる。
まず二人を見た印象として、決定的に違う点を述べるとしたら悲しいまでの胸囲の差だった。
片方は、包帯の上からでもはっきりと分かるほど二つの盛り上がったお山が、はちきれんばかりに自己主張している。もう片方は、山が削りとられて更地にされたのかと思わされるほどの絶壁であった。
その二人の頭上には『嘆きの王女姉妹《姉》』『嘆きの王女姉妹《妹》』とそれぞれに表示されていた。お山がある方が妹で、無い方が姉である。
なんとなく、姉妹でこれだけの差があるとすれば、お姉さんの方は妹さんに対してコンプレックスを抱いていたのではないかと余計な邪推を働かせてしまった。
今回のボスはこの二人――かつて王の娘達であった姉妹の遺骸である。ダンジョン化による影響でモンスターへと変貌して死の淵より蘇ったというのが設定だ。
ボスの特徴としては、魂の共鳴による不死属性を持っている。簡潔に説明すれば、二人を「同時」に倒しきらないと何度も蘇る仕様となっているのだ。
そのためには姉妹達のHPを削って調整し、「同時」に倒しきれるタイミングでプレイヤー同士の息の合った「協力プレイ」が必要になってくるというわけだ。
俺は他のプレイヤーが攻略する映像を見ていたときのことを思い出す。攻撃のタイミングが僅かにずれてしまったことで、せっかく削ったボスのHPが全快してしまい、絶叫を上げていたプレイヤー達がやけに印象的に残っている。
姉の方は物質召喚による物量でプレイヤーを襲う。
かつて王族が宝物庫に所有していた武器の数々を、開かれた異空間の穴から射出して攻撃。その量も凄まじく、それらを避けながら何とかボスに近づいてダメージを与えるのは中々に困難だ。
妹の方はデバフによるプレイヤーへの妨害が主である。デバフとは各種パラメータを引き下げ、弱体化させる事。ステータス異常魔法のことだ。
妹は【死者の怨腕】というスキルを発動し、地面から死者の腕を生やしてプレイヤー達に触れようと迫ってくる。それに触れてしまうとプレイヤーのステータスがダウンしてしまう。
死者の腕には三つの種類ある。
『黒き腕』が防御力の低下。『白き腕』が素早さの低下。『灰の腕』が二つの能力を兼ね備えた両ステータスの低下となっている。
これも厄介で、腕に触れ続ければプレイヤーのステータスが下がっていき、しまいには走ることすら叶わず歩き状態に強制され、紙防御力になったところに姉の物質召喚による攻撃が突き刺さるという最悪の組み合わせだ。
まあ、元から防御も素早さも0の俺には関係ないけどな!
俺にとって妹さんはお飾りもいいところだ。問題は姉の方で、物質召喚の数々をどう攻略していくかだが、ぶっちゃけてしまうと作戦なんて考えていない。
――正面から猪のように突っ込んでゴリ押しで粉砕してやるッ!
俺が中へと突入すると同時に『嘆きの王女姉妹』が動きだし、戦闘が開始された。
俺から見て正面に『嘆きの王女姉妹』が縦一列に離れて並らび立つ。前衛に『嘆きの王女姉妹《姉》』、後衛に『嘆きの王女姉妹《妹》』の布陣だ。
『嘆きの王女姉妹《妹》』は、地面から大量の死者の腕を召喚し、その様は三途の川から「おいで、おいで」と手を振っているようにも見える。
俺にとって害はないから無視するけどな。
『嘆きの王女姉妹《姉》』が両腕を掲げると空間に夥しいほどの穴が開き、そこから様々な形状をした武器が覗いていた。
斧、槍、斧槍、短剣、双剣、長剣、大剣、大鎌、鎖鎌、手裏剣、手甲鈎、モーニングスター、ウォーハマー、ランタンシールド、フンガ・ムンガ、ソードブレイカー……と挙げればキリがない。
メジャーなものからマイナー武器まで各種取り揃えられていて、制作したであろう運営の趣味が窺える。
俺も用途不明な特殊武器とか何だかんだで好きだけどな。
本来であれば、五人のプレイヤーに対して均等に武器が飛んでくるのだが、俺は生憎と一人だ。全ての武器が俺に集中して、数の暴力が襲い掛かってくる。
それを俺は――――。
パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィ、パリィッ――
――両腕に木の枝を装備し、【パリィ】のスキルで全て弾き落としながら宙を駆けてボスに近づいていく。
時間にすれば数十秒も掛かっていなかったが、俺にとっては濃密で濃厚な時間だった。少しでもミスすれば即死するという緊張感を味わいながら、けれども俺は楽しんでいた。
ニヤリと口角を吊り上がらせ、迫り来る死を乗り越えて生にしがみつく。
気づけば、眼前に『嘆きの王女姉妹《姉》』が居て、【クイックチェンジ】のスキルで大鎌に武器を切り替え、その胴体に深々と突き刺した。
このときに【手加減】のスキルを使って、仮死状態にしておくことを忘れない。
そのまま『嘆きの王女姉妹《姉》』を大鎌に突き刺したまま真っ直ぐと加速し、『嘆きの王女姉妹《妹》』に接近して二人同時に貫いた。
その瞬間【手加減】のスキルを解除する。
二つの閃光が膨れ上がり、暴発すると眼前には次へと続く階層が開かれていた。
――見たか、これが真のゴリ押しというものだッ! 反省はしていないし、後悔もしてないッ!!
ゲート・オブ・バビ(ry
……いや、なんでもないです。
あの……読者さん、評価ポイント地面に落としていますよ?
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.(⊃P⊂)
し-J´
え?いらないんですか!?作者にくれるって!?
ありがとう!
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