<< 前へ次へ >>  更新
93/118

第91話 俺の番が来た

アヴニールさんに無理やりねじ伏せられた光の斬撃は……バリンと大きな音を立て、粉々に砕け散ってしまった。


と同時に……まだ決着が着いたわけでもないのに、観客席からは盛大な歓声が鳴り響いた。


「は……はああぁぁぁぁ!? なあヴァリウス、あんなことあっていいのかよ!」


「流石にあれはちょっとウケますね」


エボルバは目の玉が飛び出そうなほど驚いていたが、俺は笑ってそう返した。



確かに……アヴニールさんのパワーは、どう考えても尋常ではない。

英雄の最上位魔法であるギャラクシースラッシュは、まともに受けてはいけない技の代表格とも言えるものなのだ。


本来なら、絶妙な角度で強力な対魔法結界をあてがい、いなすくらいしか無傷で済む方法は存在しない。

それを……事もあろうかアヴニールさんは真正面から物理的に受け止め、尚全くの無傷でいるのだ。


テイマーを除けば、彼は前世と今世合わせた中でも間違いなく最強だろう。



だが……俺はそのことを、むしろありがたいと思っていた。


これほど強力な選手を相手に、真っ向勝負で誰の目にも明らかな勝ち方ができたら……人々の目に、テイマーの真の力を強く印象づけることができる。

それは間違いなく、今後の活動にとって大きなプラスになるはずだ。


第一ラウンドの戦いも、悪くはなかったのだが……お互い戦略がちょっとトリッキーだったため、傍目には滑稽な試合になってしまっていた気がするからな。


それとうってかわって、次の試合は、観客の目にも見ごたえのあるものにできるだろう。


第一ラウンドの試合があんなのだったのも、ギャップで次の試合の印象を強められると考えれば、あの勝ち方がむしろ最適だったとも言えるかもしれない。


ケイディには悪いが……この大会、俺の手で締めくくらせてもらおう。


そんな風に俺は、試合の順番が回ってくるのがちょっぴり楽しみにもなっていた。



「ウケるって……なんでアレ見てそんな余裕でいられるんだよぉ……」


エボルバは呆れたような声のトーンで、そう口にした。



ギャラクシースラッシュを破ったアヴニールさんは……そのまま跳躍して一気にケイディとの間合いを詰めた。


そして……衝撃波を伴うパンチの連撃を、何十発と繰り出していった。


ケイディは最大限の防御を展開し、それに対抗しようとしたが……ものの数秒で、勢いに押されてそのまま場外落ちしてしまった。


そうして第二ラウンドの第一試合は、アヴニールの圧勝に終わった。



……さて、じゃあそろそろ試合に出る準備をしようか。


『コーカサス、ベルゼブブ。試合前の腹ごしらえだ』


俺は2匹に念話でそう伝え、収納魔法から取り出したビーストチップスを分け与えた。


『いよっしゃあ! 食事こそフードだぜ!』


『ヴァリウス、次はどんな作戦で行くんだ?』


『そうだな、まずは……』


2匹がビーストチップスを頬張る中、俺は次の試合で最適と考えられる立ち回りを伝え、準備を整えた。



「では、行ってきます」


「おう。なんかもう、次の試合どうなるのか怖いぜ……」


インターバルが終わる頃になって、俺は筋斗雲を取り出しつつエボルバに挨拶をし、それから2匹と共に試合場に向かった。



試合場に上がると……アヴニールさんは既に、コンディション調整を終えてその場に立っていた。


その穏やかそうな表情からは逆に、集中力を最大限まで高めているのがひしひしと伝わってきた。


こういうメンタルの奴が、一番手ごわかったりするもんなんだよな。

などと考えつつ……俺はコーカサスとベルゼブブに目配せをし、お互い万全を期していることを確かめ合った。


<< 前へ次へ >>目次  更新