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第74話 朱雀の最期

「グオオオオオオロロロロロォォォ!」


フルオロレンゲドウ酸を流し込むと、ドラゴンは再びのたうち回り出した。


……朱雀が乗っ取ったドラゴンとはいえど……内部からの攻撃に弱いのは、変わらないみたいだな。

声帯が溶かされていっているからか、叫び声もどんどん小さくなっている。


ただ……流石は朱雀の配下と言うべきか、この攻撃を以ってしても尚、致命傷にはならなさそうだ。

というのも……このドラゴン、ただ悶絶しているだけというにはちょっと不自然な悶え方をしている。

おそらく、フルオロレンゲドウ酸が心臓や大動脈には触れないよう調整しながら悶えているのだろうな。


全臓器を犠牲にしてでも、俺を倒すまでは生き延びようという腹づもりか。

器用なもんだ。



……ならば、追撃あるのみだ。

吐き気からかそれ以外の要因からなのかは知らないが、ドラゴンは今、口を塞げられないでいる様子だ。

それを、利用させてもらおう。


俺は再びドラゴンの口の前に転移した後、収納魔法を発動するふりをしながらこう語りかけた。


『もう1発お見舞いしてやる』


すると……ドラゴンは、最初と同じような神通力障壁を展開し、それで口を覆うようにした。


……かかったな。

そう思いつつ、俺はルナメタル製の剣に目一杯神通力を流しながら、その障壁に剣を突き立てた。


そして……僅かに入ったヒビめがけて、最大出力の魔力譲渡を発動した。



二重苦により、更に激しく悶絶するドラゴン。

もはや器用な調整をする余裕もなくなったのか……そののたうち回り方は、以前と比べてより不規則となった。


それから、しばらくすると。

ついにドラゴンは、グッタリと地面に倒れ伏した。



『貴様……覚えておけ……次……転生した時は……この世界を……破壊……し尽くして……やる……』


最後の力を振り絞るかのように、朱雀はそんな念話を飛ばしてきた。


……そろそろ、トドメを刺すタイミングのようだな。

それも……急がないとまずいかもしれない。


フルオロレンゲドウ酸の効果だけで死なれては、コイツに来世を与えてしまうことになるからな。

手遅れになる前に、ちゃんと俺の神通力で、コイツを葬ってやらなければ。


『コーカサス、ベルゼブブ、これを飲んでから俺に魔力を分けてくれ』


そう伝え、2匹にエリクサーを渡す。

2匹が全回復し、俺が2匹からの魔力譲渡を受け取り始めたタイミングで……俺はあの魔法を唱えた。


「如是切。如是断。本末究竟等」


魔法でドラゴンの片目の瞼を切断すると……俺はそれをひっぺがし、剥き出しになった眼球にルナメタル製の剣を突き立てた。

剣先が脳天(コックピット)に到達する。

これにて……朱雀は、完全に消滅したというわけだ。



さてと、まずは報告といくか。


「麒麟よ、我の前に姿を現し……互いに益となる取引を為さん」


俺は例の呪文で、戦闘に巻き込まれないようにと一旦帰ってもらってた麒麟を呼び出した。


『見ての通りだ。朱雀は消滅した』


『おお! 無事勝ったのじゃな!』


麒麟はドラゴンの死体を目にすると、嬉しそうな様子を念話で伝えてきた。


『配下装備型で出現された時には、もうダメかと思ったのじゃが……』


『結構、骨が折れる相手だったが……工夫すれば、何とか倒せたぞ』


『実にありがたい話じゃ……。これでもう、我が封印しておかねばならないのは3体だけとなったのじゃな……』


麒麟はそう言って、感慨に耽りだした。



……そうだ。

せっかくだし……アレが可能か聞いてみるか。


『一応聞くが……この死体、旨味調味料に交換できるか?』


『どれどれ……あ、これは無理じゃな。こんなのを交換素材に出したら永遠に恨むぞよ』


……マジか。

そんな言うほどかよ。


『なぜだ? 朱雀の死体は、貢ぎ物としては適さないのか?』


『そうではなくてじゃな……。お主、これを討伐するのにエグい毒を使っておるじゃろ? それを渡されても、我も途方に暮れるのじゃ』


……フルオロレンゲドウ酸を使って討伐した方が問題だったか。

ぶっちゃけ俺としては、フルオロレンゲドウ酸を用いて討伐した死体の扱いが面倒くさそうだから、旨味調味料にしてしまえればと思ったのだが……麒麟までもがゲテモノ扱いするとは。


『分かった……。なら今回は報告だけだから、もう帰っていいぞ』


『そうか。朗報を聞けて良かったぞ、さらばじゃ〜』


麒麟はそう言い残して、姿を消した。




……やれやれ。


こうなった以上は、自分たちでドラゴンを解体するしかないか。



この死体、ギルドに持ってく訳にはいかないしな。

もしそんなことをすれば、内臓から流れ出すフルオロレンゲドウ酸で解体師が大怪我してしまうだろう。


ドラゴンの死体は、無駄な部位が無いなどとはよく言ったものだが……これに関しては、話が別。

体内組織は、フルオロレンゲドウ酸でほぼ全滅していると考えるべきだろう。


である以上は……そうだな。

鱗と角だけ回収して、あとは収納魔法の肥やしにでもするとするか。


『コーカサス、そのドラゴンの鱗を剥がしていってくれ。ベルゼブブは、俺に魔力譲渡をかけてくれ』


2匹にそんな指示を出す。

俺はベルゼブブから受け取った魔力も加味して、「如是切。如是断。本末究竟等」でドラゴンの角を切り落とした。



コーカサスは、自慢の大顎の力に任せ、次々と鱗を剥がしていく。

その作業に関して俺が手伝えることは特に無いので、様子をじっと見守っていると……何人かの人が、こちらに向かって駆けつけているのが目に入った。

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