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第64話 すごいパーティーだったらしい

「『クヌースの矢印希望』が帰還したというのは本当か!」


しばらくすると……気絶してしまった受付嬢の代わりとしてか、見たことのない初老の男がギルドの奥から駆けつけてきた。


よく見るとその男は、胸元に特徴的な紋章を身につけていた。



……この紋章、どっかで見たことがあるな。

確か、生徒手帳のどっかのページに載ってたような。


もしかして、この男……


「貴方はギルドマスターさんですか?」


記憶が正しければ、と思いながら、俺はそう聞いてみた。



「ああ。いかにも、ワシがメルケルス冒険者ギルドのギルドマスター、ディエンだ」


俺の問いに、男はそう答えた。

そしてこう続けた。


「キミ……『クヌースの矢印希望』と共にギルドに来たらしいが、一体何がどうなっている?」


混乱を隠しきれないといった表情で、俺と4人を交互に見るギルドマスター。


その問いには、俺が口を開くより先にリーダーが答えだした。


「自決島で彷徨って(さまよって)いるところを、ヴァリウス殿に助けていただいたのです」


そしてそのリーダーの説明に、残り3人が説明を加えだした。


「ヴァリウス殿がいなければ、我々は自決島からは生還できなかったでしょう」

「俺たちじゃあ歯が立たねえような魔物共も、この方は平然と倒しなすったんだ」

「この方はブルーフェニックスを始め、名も分からぬ災厄のような魔物も素材としてしか見ていなかった。目を疑うような、恐ろしくも心強い光景だった……」


ブルーフェニックス?

……ああ、金角銀角に会うまでの道中で、変異種のインディゴフェニックスも倒した気がするな。


おそらくは、その見間違えか。



などと考えていると、今度はギルドマスターが口を開いた。


「ブルーフェニックス……ああ、それならワシも聞いたことがある。このヴァリウスという男、ヘルクレスの討伐のついでとか言ってブルーフェニックスを売ろうとしたことがあるらしくてな」


「何でしょう……物凄いデタラメな話なのに、全く違和感を感じないのは私の心が麻痺してるんですかね……」


ギルドマスターの話を聞いて、なぜかリーダーはため息をついてそう言った。



……あー、あの臨時パーティーを組んだ時の話か。

あの時は色々と我儘を言ったから、その分お返しに何かしようと思ったんだよな。



そんな風に、思い出に浸っている間。

ギルドマスターは難しい表情で手早く数枚の書類を処理し……それから、俺の目をみて口を開いた。


「あー、ヴァリウス君……。前代未聞の事態だけに、関係各所への対応に回ってからでないとハッキリしたことは言えないのだが……キミには恐らく、何らかの特別措置が取られるよ」


……特別措置?

俺はその言葉を聞いて、ちょっと不安を感じた。


「特別措置って……一体何のことでしょう?」


恐る恐る、そう質問してみる。

それに対して帰ってきた返事は、こんな内容だった。


「そうだな。まず……キミは、Sランク冒険者に認定されることだろう」


……そんなのあったっけ。

生徒手帳にも、ギルドで貰った書類にも書いてなかった制度の話になり、俺は困惑した。


だが……「クヌースの矢印希望」のメンバーの反応は違った。


「な……まさか、ギルド創設以来一度として使われる事のなかった、あのランクが解放されるのですか?」


プレックスがギルドマスターにそんな質問をしたのだ。



……Sランク、そんな大層な制度なのか。

まあそれなら、一般的なガイドに書くような内容では無いだろうから、俺が知らなかったのも無理はないな。


しかし、ただAランクパーティーを連れ帰ったってだけで、そんな歴史を動かす様な事態になるのだろうか。

俺が死者蘇生を使ったことは、ギルドマスターには知りようもないはずだし……


などと疑問に思っていると、ギルドマスターは更に耳を疑う様な発言をした。


「それからキミは、近いうちに国王に謁見することになるだろう」



……は?

この話、どこまで大きくなるつもりなんだ?


「あの……Aランクパーティーを自決島から連れ帰ったのって、それほど大ごとなのでしょうか?」


いよいよおかしいと思った俺は、そう質問した。


「『クヌースの矢印希望』は、20年前に自決島で殉職したとされていた、国内最強にして伝説のAランクパーティーだったのだぞ。そしてキミは、その失われていたと思われた伝説を復活させたのだ。それがどれほどの意味を持つかは、言うまでもないだろう」


俺の質問に、ギルドマスターはそう興奮気味に答えるのだった。


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