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第32話 パーティー結成

「臨時パーティーメンバーの募集って、どうやればいいんですか?」


「そうですね、通常であれば、知り合いの冒険者を集めて結成するような形となるんですが……ヴァリウス君、この街に来てまだ日が浅いですもんね。知り合いがいないとなると、協力してくれそうな冒険者を探す必要がありますね……」


受付嬢は、顎に手を当てて難しい顔をした。


……そうなのか。

片っ端から声かけたりするのって、苦手なんだけどな。

でも……四の五の言ってられないか。


そんなことを考えていると、受付嬢が連れてきた男が、助け舟を出してくれた。


「よかったら、私が館内アナウンスを出そうか? 通常なら、そんな方法で臨時パーティーメンバーを集めるのは不可能に近いが……なんせヴァリウス君は精鋭学院生の賢者だ。一時期でもパーティーを組みたいという需要は、あるかもしれないよ」


……まじか。

そんな事までしてくれるとは、ありがたい。

志願してきてくれた人になら、ある程度「戦いはコーカサスにやらせてあげてください」とかの要望も通しやすいだろうしな。


「……それで、お願いします」


俺は即座に返事をした。





こうして、俺はパーティーメンバー招集のアナウンスをしてもらうこととなったのだが……これがまた、とんでもない事態を引き起こしてしまった。


なんと、建物内の8割の冒険者が、志願に殺到してしまったのである。


これはこれで、メンバー選びが難しい。

どの冒険者がどんな人となりかなんて、一切把握してないし……一体、何を基準に決定したらいいものか。


一人で悩んでも埒があかないと思ったので、俺は受付嬢にこう聞いてみた。


「あの……この中で、『どの冒険者がおススメ!』とか、あったりします?」


「そうですね。私でしたら、魔法使いのアイリアさんと、剣士のメイシアさんをメンバーに選びますかね。パーティーとしてのバランスも良いですし、ギルド職員としての経験から、ヴァリウス君ならあの2人と最も上手くやっていけると思うんで」


受付嬢はそう言って、2人の女性冒険者を指差した。


「……あ、本当はギルド職員がこういう所に口出しするのは不適切なことなんで、私が今の発言をしたのは内緒ですよ?」


受付嬢は、そう付け加えた。


そこは安心してほしい。

俺は、特別に便宜を図ってくれた人に、恩を仇で返したりはしないからな。


「では、その2人で」


俺がそう頼むと、受付嬢が手際よく処理をしてくれて……程なくして、俺はアイリアさん、メイシアさんの2人と一緒に、Bランク相当戦力のパーティーとして依頼を受けることとなった。




ギルドを出ると、改めて自己紹介から始めることにした。


「俺はヴァリウス、精鋭学院の1年生です。本日はよろしくお願いします」


「アタシはメイシア。まさか精鋭学院の賢者と同じパーティーを組める日が来るなんて、思ってもみなかったぜ。楽しみにしてるぜ」


「わ、私はアイリア、です。せっかくの機会なので……しっかりと依頼をこなせるよう、全力で頑張ります!」


2人の自己紹介を聞きつつ、俺は筋斗雲を自分の近くに呼び寄せた。

ちなみに、コーカサスには10分の1スケールに変身してもらい、ただの虫を装わせている。


今の段階でテイマーだと明かして、「詐欺だ」とか言ってパーティー解消されても困るからな。

実際にヘルクレスと戦わせる段階になるまで、真実は伝えないつもりだ。


「お2人は、何か移動手段をお持ちですか?」


俺はそう聞いた。


「移動手段? 大して遠くまで行くんじゃねえしさ、徒歩でいいんじゃねえのか?」


「私も徒歩のつもりでしたが……」


どうやら、2人とも移動手段は持ち合わせていないらしかった。


「そうですか。俺はいつも、この『筋斗雲』という乗り物で目的地まで移動しているんですが……これ、俺以外が乗ろうとしても乗れないんですよね……」


どうぞ、触ってみてくださいと促すと、2人は筋斗雲に触ろうとしたり、腰掛けようとしたりしだした。


「わわっ、なんだこれ!」


「不思議な雲ですね……」


俺以外の人間には乗れないというのが本当だと確認が済んだところで、俺は役割分担の提案をすることにした。


「では……お二人には徒歩で依頼場所まで歩いていただくとして、俺がこの雲に乗って上空から索敵するというのでどうでしょう? 危険が迫っていれば、可能な限り、上空から対処もします」


そう言って、俺が筋斗雲に乗ると……2人が目を丸くした。


「え゛……? マジでこれ乗れんのかよ……」


「これが精鋭学院生……私たちとは、格が違うのですね」


……いや、俺がこれに乗れるのは精鋭学院生だからじゃなくて、孫悟空の討伐者だからなんだけどな。

まあその事を伝えても余計に混乱を招くだけだと思うので、言わないでおくが。


「ってかさ、『上空から索敵』って……これ、空を飛べるのか?」


メイシアさんが、食い入るようにそう質問してくる。


「飛べますよ。ってか、現に浮遊してるじゃないですか」


そう返すと……2人は、コソコソと何か喋りだした。


「なあ……もしかしてアタシら、とんでもない奴とパーティー組んだんじゃねえのか?」


「精鋭学院生は常軌を逸した天才の集まりと聞いてましたが……まさか、常時空を飛べる人までいるなんて、聞いてませんでした」


興奮してるのか、ヒソヒソ話がヒソヒソ話になってなくて、こちらに筒抜けである。


なんか、筋斗雲程度で過大評価もいいとこな気がするが……これはこれで、テイマーだと明かしても大丈夫な雰囲気に近づいてるってことでもある気がする。

とりあえず、いい兆候だと思っておくか。


「では、僕が言った通りの役割で大丈夫でしょうか?」


俺は、最終確認を取った。


「あ……ああ。なんか変な気もするが、悪いことじゃあないしな」


「それでお願いします」


どうやら、これで決定のようだな。


「じゃあ、出発しましょう!」


俺は筋斗雲の高度を上げ……パーティーメンバーとなった2人を、見守り始めた。

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