8.何を以ってここに至らんや
「私はあなたの取り決めに従い、秦国の将軍にあなたの計画について話しましたが、今までのところ、あなたの計画は機能していません。」
趙異人は彼の前にひざまずいている呂不韋を見て不審に尋ねた。
呂不韋は彼の質問を聞いたが、真剣に受け取らず、笑顔で言った。
「許歴に趙括を趙王に勧めるように頼んだのは、ただ趙王にこのような男がいることを趙王に思い出させるためだけだ。」
「今の戦争は、趙王を混乱状態に陥らせるほど危機的状況にあるわけではない。趙王が水に溺れた人のように絶望的になったら、趙括という趙国の命を救う藁を掴まないわけがあるのだろうか?」
趙異人はうなずき、呂不韋が言ったことは妥当だと考え、
「それでは次に何をすればいいのか」と尋ねた。
呂不韋は微笑んで言った。
「趙括のことはあなたにとって、それは注目に値しない小さな問題です。私がこの事を提案するように頼んだ理由は、秦の人々にあなたのような公子がいることを思い出させるためです。秦王は年老いた、あなたの父である安国君が太子として設立されました。」
「安国君はあなたの兄弟である子傒を気に入っている。また子傒には母親が後宮にいて、彼を支えている。あなたの母親は寵愛を受けていない。秦王が亡くなった後、安国君が王位を継ぐことになるため、秦王の周りにいるあなたの他の兄弟と競争することを期待すべきではありません。」
「あなた方ですら不幸が予測不可能である趙の国にいます。秦の人々が趙の国を打ち負かし、邯鄲を取り囲んだら、趙王はあなたを殺さないと思いますか?」
趙異人はショックを受け、「それでは、どうすればいいですか?」
「公子が私に耳を傾けることができるなら、このまま邯鄲に残って、楚服を着て、そしてもっと友達を作ってください。」
「なぜですか。」
「安国君はとても華陽夫人を寵愛していると聞いたことがある。華陽夫人には子供がいないが、太子を立候補の事に参与できる。彼女から始めるしかない、公子はここに住んでいるが、貧しく、何か夫人に献上する物もありません。」
「この呂不韋は裕福ではないが、千金を持って西の秦国に行き、安国君と華陽夫人にしばらく仕え、公子を太子に立候補させるように説得してきます。」
これを聞いた趙異人は、急いで呂武偉にお辞儀をして敬意を表して、
「あなたの計画が実現されれば、秦国の土地をあなたと分け合うつもりです。」
呂不韋は何も言わずに、立ち上がって趙異人に別れを告げました。趙異人は彼を門まで送って、呂不韋のは手を取り、繰り返して言った、
「私は事の成功よりもあなたの安全を心配しています。無事に戻って来られるように、危険を冒さないでください。」
いくら心でこれが趙異人の自分を味方にする手段だと分かっても、呂不韋は少し感動したのだ。
自分はやはり間違っていなかった、異人は危険を危惧せず一人で邯鄲に残り、自分自身のことを心配するよりも、他人を心配するとは....
呂不韋の表情も次第に厳粛になり、
「今の度は公子のためにきっと成功させて見せます、もし失敗したら...生きて戻るつもりはありません。」
趙異人は門の横に立ち、呂武偉の馬車を見ていた。ゆっくりと出て行った馬車を見て、長い間立って中庭に入った。
家臣を一人呼んできた趙異人は、「楚服を一式買ってきてください。」と言った。
なぜ楚服を着るって?それは華陽夫人が楚国人であり、楚服を着て、楚国への感情を表すことが多いからだ。庭に立つ趙異人はどうしようもなく呟いた、
「楚国の「鳥の言語」を学ばなければならないとは、本当に面倒なことだ...」
この時、許歴も趙王に再び会った。
趙王は上に座り、彼の二人の上卿は彼の左側に座り、許歴は彼の右側に座り、厳粛に言った
「これが曾母投杼の物語です。上君には根拠のない情報を区別し、廉頗将軍を信頼し続けてほしいです。」
趙王は長い間沈黙して、頭を上げ、注意深く彼の前の許歴を見た、
「寡人はもともと許歴はただ戦争ができるだけと思っていた。まさか寡人は歴を過小に評価していたとは。」
許歴は少し恥ずかしそうに見えたが、彼は趙括の言った事をまだ覚えていて、何も言わなかった、長くため息をついて言った、
「臣はこれを上君に言ったのは褒美が欲しいのではありません。臣は廉頗将軍のために来ました。」
趙王は大笑いして、
「寡人は知っている、だから安心してください、寡人は流言飛語を信じたりしない。」
許歴はやっと立ち上がり、趙国王に頭を下げ、注意深く王宮を出た。
彼が去った後、趙王は彼の左側の二人を見て、
「これは決して許歴が言えるような事ではない。誰かが彼にこれを教えたのですか?」と尋ねた。
二人は若くありません。一人は体が細く、冷たい顔色で座って、目を細め。もう一人は常に咳をしているため、趙王の心を苦しめた。
「都平君、寡人に言うことはないのか」趙王は思わず尋ねた。
都平君の名前は田単と呼ぶ、元々は斉国人であったが、斉国が滅亡しそうになった時、彼が出現して斉国を救ったのである。彼が斉国を築き上げたと言っても過言ではない。その為もあって、斉王に危惧され、ますます仲が悪くなった。それを見た趙王は五十も多くの城と引き換えに田単を斉王からもらった。最初は趙国の将軍の位置につかせたが、今となっては趙国の宰相となった。
しかし彼が斉王に五十の城で趙王に渡されてから、ますます無口になり、この文武両道、この斉国を救った斉人は貨物のように売られた。いくら趙王が敬意を示しても、田単はずっと冷たいままだ。
彼は生きているが、あの有能で、楽毅を打ち負かした斉国の救世主は死んだようだ。
彼は趙国のほとんどの将軍と仲が悪い。
趙王の質問を聞いて、田単は言った
「臣と許歴は道で会ったらで頭をうなずくことくらいの関係でしかありません。彼のことをよく知りません。」
趙王はどうしようもなくため息をついて言った、「あなたはもう戻って休むと良い。」
田単は立ち上がって趙王に頭を下げ、お辞儀をして王宮を出た。
ここに残っているのは趙王と趙国のもう一人の伝説の人物であった。趙王の前に座っている老人は髪は白くなり、時折咳をして、趙王は時間の力を感じざるを得なかった。
趙王は敬意を表して頭を下げて言った
「藺公、寡人に何か言うことはないですか。」
趙王の前に座っているのは、正しく趙国の前期宰相、藺 相如であった。
藺 相如は頭を上げた、その蒼白な顔は趙王の心を苦しめた。
「許歴の提案が上君に拒否されてから、きっと趙括を訪ねたに違いない。」
「これは趙括、又はその門客が言ったかもしれない。ただ、許歴の言ったことは正しい、廉頗将軍を左遷してはいけません。」
「趙括は若いが、高い評判を持っている。」と趙王はそう言った。
「上君は名声だけで趙括を任命するのであれば、接着剤を使用して箏の糸を柱を接着し、それを演奏するようなものです。趙括は父親が残した本を読むだけで、柔軟に使用する方法を知りません。」、藺相如は言った。
「ならば寡人が都平君田単を使ってはどうですか?」
「田単は将軍たちと性格が合わず、ましてやその心は斉国にある。趙国に来てから、その心は死んだ。彼は廉頗将軍のように趙国の存亡を気にしない、私は不適切だと思う。」
「なら寡人が昌国君楽毅を使ってはどうですか?」
「楽毅将軍は趙国に帰服したばかりです、燕王は彼を憎んで、殺そうとしている。もし上君が楽毅将軍を使うようなことがあれば、燕の怒りを買うことでしょう。趙国だけでは秦国と戦えない、今こそ燕、斉、魏国などの助けを必要としている、上君は彼を使ってはなりません。」
藺 相如が言い終わるとまた咳をして、血が口先から流れた。趙王は驚き、自ら藺相如を支えた。
武士に命令して、藺相如を屋敷に返すように頼み、藺 相如に休むように再三促した。趙王は一人で王宮に座り、孤独そうに見えた。
趙王は幼い時から王座に就き、ずっと趙国の覇業を成し遂げようとした。王の位置について一年目から、斉を連合し、秦国の侵攻を止めた、それから秦に対する復讐についてずっと考えていた。
彼は趙の人材が多ければ、秦国を倒せると思って、五十の城と引き換えに田単と交換した。
また適切な時期を見て、楽毅の家の手紙を使って楽毅を降参させた。
だが、なぜだ、なぜ思うように行かない?なぜ趙は秦に勝てないのだ?
趙王は拳を握りしめて、目は血が走った。
寡人は王の自称,“ちん”とか“よ”とかに似ている。