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50.枯れ木は燃える

投稿一ヶ月記念です!!

感想ありがとうございます( ´∀`)

見てくれてる人がいると分かって嬉しい(`・ω・´)

 絶望的な気持ちが消え、勇気を注がれた趙括は背筋を伸ばして、挑発するように楼昌を眺めた。


 楼昌は恐怖を覚えた。どうしてこんなにも多くの人が若造ごときに助言するのが理解できなかった。


 荀子は怒りを覚えた。趙国は数十年前よりもさらに荀子を失望させた。


 趙王は羞恥を覚えた。十分な鼎をまだ準備していないのに、もし礼儀を失って、彼らが趙国から去ったらどうしようと考えた。


 宴席の雰囲気がおかしくなり、老いた大臣は趙王の両側に座った。楽毅は座ることができなくなったので、龐公と呼ばれる老人が彼の隣に座り、手を背後に回して抱き上げ、楽毅は何とか彼の腕の上に座ることが出来た。


 藺相如は咳をしながら、趙王を見て、口を開けた、

 「上君、私は戦争は国家の存亡にかかわる一大事と聞きます。慎重にならなければなりません。趙括は長平に行ったことがあり、そこの状況もよく知っているのです。あなたはどうして彼の言葉を聞かずに、邯鄲から一歩も出たことがない悪人の話を聞くのですか?それは王の行為にふさわしい行為でありますか?」


 趙王は慌てて頭を下げ、

 「あなたの言う通りです。確かに王の行為にふさわしくありません。」


 藺相如はまた、

 「上君はかつて私のもとで勉強したことがあったはずです。私も諌言を聞かないで、最終的には災いをもたらした諸王の話をしたはずです。」


 「趙括は趙国の賢人であり、民は彼の徳のために彼を愛し、敵は彼の才能のために彼を恐れています。上君はどうして悪人の話を聞いて、彼を軽んじることができるのですか?」


 「上君は賢人を愛していることは私も知っています。しかし、もしあなた様が賢人の諫言を聞くことでできないのであれば、たとえ天下の賢人を集めたとしてもどうなりますか?国の繁栄は王の近くにどれほどの賢人が集まっているのではなく、王が彼らの言葉に耳を傾けることができるかどうかにかかっているのです!」


 藺相如はそう言って、また激しく咳をした。


 趙王は慌てて、

 「寡人は肝に銘じました。もうこれ以上無理をしないでください。」


 田単は目を閉じて何も言わない。しかし彼がここに来た以上、すでに立場を説明している。楽毅は茫然と周囲を見て、時には頭が覚め、時には頭が混乱している。隣の老人は何度も彼の口元の涎を拭いた。


 趙王は荀子の方を見て、再び賢人への渇望の火が燃えてきて、笑って、

 「寡人は荀子が来ると聞いたことがありましたが、まさかこんな早く来るとは思いませんでした。城を出て迎えに行かなかったのは寡人の過ちです。許してください。」


 荀子は冷たい顔をして、例え趙王がこのように礼遇しても、何の変化もなく、

 「私が稷下にいた時に、あなた様が砂漠の中で水を欲しがるように賢人を渇望していると聞きました。それで私は稷下を離れてここへ来たのです。」


 「まさか趙括のような賢人でも王宮で排斥を受けているとは思いも寄らなかったです。これでは、今後誰があなた様に忠義を尽くしてくれるのでしょうか?」


 趙王は驚いて、慌てて立ち上がり、趙括に向かって一拝して、

 「寡人は悪人の言葉に耳を傾き、あなたの策を使わないのは間違っていた。寡人は二度とこんな真似をしません。」


 隣に立つ楼昌は顔を赤くし、驚いて趙王を見た。


 趙括も立ち上がり、一拝をした。もし自分の過ちを改正できるのであれば、明君になれるかもしれないと思った。


 それに、先ほどの会話で趙括は薄々趙王の趣味に気付いたので、

 「もし上君が私のような取るに足らない人の諫言も受け入れてくれるのであれば、今後はきっとより多くの賢人が上君を補佐し、国を治める策を出してくれるでしょう。」


 趙王はそれを聞いて、ニッコリととても嬉しそうにして、

 「あなたは趙国の宝であり、荀子でさえあなたを称賛してくれている。誰もあなたが取るに足らないとは思わないでしょう。あなたの提案を承諾しよう!」


 趙王は虞卿の方を見た。趙王が宴席を開き、臨武君を招待して以来、虞卿はずっと何も言わずに酒を飲み続けた。


 「虞卿、寡人はあなたが平原君と親しいのを知っているので、東武城に行って、寡人の命令を伝えに行ってくれないか?」


 趙王の言葉を聞いて、楽毅の世話をしている老人はまた、頭を上げて、

 「上君、臣から一言あります。」


 趙括はこの老人を知らないが、彼にすごく好感を持っている。助けに来てくれたからではなく、楽毅を丁寧に世話をしてくれるからである。


 彼の様子から、恐らく楽毅将軍よりも年を取っているはずだ。しかし、無理をして楽毅将軍を支えてくれるのは、実に優しくて強靭な老人である....と趙括は評価した。


 すると趙括は、趙王が荀子を尊敬するほど、この老人を尊敬してくれていることに気付いた。


 老人の話を聞いて、趙王は頭を少し下げて、

 「何でしょうか。」


 趙王が頭を下げたのを見た趙括はぎょっとしたが、周りの人は当たり前のように思った。老人の年は大きいが、廉頗将軍のように豪快ではないが、力強かった。


 老人は微笑んで、

 「まさに藺公の言う通りです。戦争は国の存亡にかかわる一大事です。どうか平原君と共に私も各国に遣わしてください。」


 趙王は困った顔をして、

 「各国の間は道のりが遠く、あなたの体でどうして耐えられますか?寡人はあなたを苦しめたくないのです。」


 老人は目を明るくして、笑って、

 「臣は枯れ木は役に立たないが、火をつければ、より明るく燃えると聞いたことがあります。臣はもう年老いた...最後にもう一度燃えさせてください。」


 途端に、趙王は言葉を失い、最後にうなずいて、

 「では平原君と共に、各国に救援要請してください。」


 楼昌は趙王はすでに決心したと分かった。楼昌は趙王のどんな決定でも逆らわず、趙王のどんな意見でも賛同してきた。ゆえに、彼は趙王の側近になれたのである。


 なぜなら、彼が出してきた策は全部、趙王が考えた策であり、楼昌はただそれを言葉にしただけであるからだ。


 楼昌は無理に笑顔を作り、

 「私は龐公が言ったことは非常に...」


 「黙れ!」

 老人が支えている楽毅が忽然叫んだ。怒った様子で楼昌睨んで、

 「あんたが次に私の前で口を出したら、私の杖でその頭を打ってやる!」


 怒った楽毅はまるで昔のように覇気があり、目には殺気が満ちていた。楼昌は怯えたウサギのように、頭を下げ、全身を震わせて、口を開けることはなかった。


 趙括はやっとほっとした。この度の救援の結果はどうなるか分からないが、試してみなければ分からない。


 趙王は親切に皆に話しかけて、皆に戦を討論させる考えもあったようだが、楽毅の体はやはり休憩を必要になった。


 趙括は立ち上がり、

 「私が楽毅将軍を屋敷に連れ戻します。」


 趙王は引き留めようとした、

 「寡人はまだ色々と馬服子に尋ねたいことがあって...」


 荀子は趙括の焦りを察して、

 「上君が何らかの疑問があれば、私に聞くといいです。私は才能がないが、稷下で常に人に教えているので、上君の役に立つはずです。」


 趙王は荀子がいたから、これ以上趙括を引き留めなかった。田単もこれ以上ここにいる気がなかったので、言い訳を作ってこの場を去った。


 二人は楽毅を支えながら王宮から出た。趙括が笑いながら出てきたのを見た戈は、事が成功したと理解して、微笑んだ。


 楽毅を馬車に乗せて、田単が去ろうとしたが、趙括は彼の前に来て一拝をした、

 「以前は私が悪かったです。あんな風に悪口を言うべきではなかった...お許しください。」


 田単は何も言わずに、ため息をして、身を振り向いて去った。その後ろ姿は少し寂しく感じさせた。


 楽毅将軍は疲れたか、屋敷に戻るまで何も話さなかった。


 屋敷にたどり着くと、楽毅将軍の馭者がすでに門の前で待っていた。趙括たちを見た馭者は微笑んで、

 「最初は藺公が連れていって、最後に馬服子が連れ戻してきたのですか?ハハハ..このままでは私が馭者の仕事を失うかもしれません。」


 趙括は楽毅を部屋に連れて、寝転ばせて、小声で、

 「ありがとうございます...」


 部屋を出たら、戈が馭者と何かを話していた。馭者は趙括が見えて、趙括に一拝して、

 「このごろ、あなた様の門客は毎日のように贈り物を持って来て楽毅将軍を拝見しに来ました。楽毅将軍は非常に嬉しくて、毎回毎回一時間以上雑談なさるのです。私は楽毅将軍がこんな...こんなにも楽しい様子を..見たことがありません...あなた様の恩徳は決して忘れません...」


 馭者は言葉が詰まって、涙を流した。


 「そんなこと言わないでください、私はやるべきことをやっただけです。逆に今回は助けてもらいました。私が役目を終えたら、また訪れに来ます。」


 馭者と別れを告げて、趙括は馬車に乗り、戈が馬車を操りながら嬉しそうにして、

 「子君はまだ知らないと思いますが、先ほどに藺公たちが王宮の前に来た時に、門番をしている武士たちがあろうことにも藺公たちが立ち入らないように止めたのですよ。」


 「藺公は怒りのあまりに、杖を持って武士たちを殴ったのです。当然ながら、武士たちは殴り返す度胸もなく...ハハハ!!」


 趙括は戈の言葉を聞いて、ゆっくりと笑顔になって空を眺めた。


 ありがとう...

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