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42.子君さえいれば

ID.1519369の多くの誤字報告に感謝です!


 ここは長平、ここは趙括の悪夢。


 丹水を渡る橋は大きくないため、馬車は通過できないのだ。李牧は兵士たちに馬車から食料を川の向こうまで運ばせた。


 趙括は少し不安そうに立っていた。


 馭者たちも兵士たちと一緒に食料を運んだ。ここまで来ると、彼達の使命も果たせたと言える。何人かの人が趙括を尋ねた、

 「私たちは主を待たせたくないので、帰る許可を出してくれませんか。」


 趙括は彼達を見て、

 「皆には苦労を掛けてしまいました。私に宴会を開かせて皆の労をねぎらわせてから、別れるのはどうでしょうか?」


 彼らは厳粛に見え、首を横に振った、

 「これが私たちの使命です。使命は果たさなくてはなりません。本来果たすべき使命で褒美をもらったら、私たちは恥ずかしくて死にます。どうか帰らせてください。」


 趙括はうなずいて、

 「分かりました。皆が残りたくないのであれば、少しお待ちください。単独で帰るのは危険なので、皆で一緒に帰ってください。」


 馭者たちも一度待ち伏せを経験したことがあるので、素直に趙括の言ったことに従った。李牧は趙括を連れて廉頗に会いに行こうと思ったけれど、趙括はどうしても最後まで食料が運び終わるまで見たいと言ったから、仕方なく趙括と一緒に待つことにした。


 遠方からまた兵士たちが現れた。彼らは李牧と違う。李牧は趙括を迎えに来たのだが、彼らは食料を迎えに来たのである。彼らも食料を運んでくれたおかげで、すぐに片付いた。


 馭者たちと騎士たちは自分たちの空っぽの馬車を見てやっと安心した。そして、皆は趙括を見た。


 趙括が一歩前に踏み込むと、皆が彼を囲んだ。趙括は皆が聞こえるように大声を出した、

 「私は、困難な時に受けた恩恵は倍で返すと聞いたことあります!この度、どう返したらよいのか分からないほど皆から恩恵を受けました!」


 「そのような事を言わないでください。私たちは別にあなた様に恩恵を与えた事はありません。」


 「皆の護衛がなければ、私は死んでいたかもしれません。なぜ恩恵と言えないのでしょうか。」

 趙括は趙傅の手を掴んで、

 「あなたが去る前に、伝えたいことがあります。」


 趙傅はぎょっとして、すぐに、

 「言ってください。」


 「あなたが馭者たちとともに帰って、馬服郷を通過するときに、郷人たちに私が無事であることを伝えてください。そして、私の母に、私が馭者と騎士たちに恩恵を受けたので、家の財産を彼らに分け与えるようにと伝えてください。」


 趙傅は慌てて、

 「あなたの褒美はもらえません。」


 趙括はわざと不快な顔をして、

 「この趙括の褒美は欲しくないと言いたいのですか?」


 趙傅は仕方なく、頭を下げ、

 「分かりました。」


 それで趙括は皆のことを見て、大きく一拝した、

 「皆のために宴会を開いて、もてなすつもりでしたが。括も同じく家を離れた身で、皆の家族が恋しい気持ちが分かります。ここで別れることにしましょう!道中気を付けてください!」


 趙傅は彼を起こした。皆も泣きながら趙括と別れを告げた。その様子に李牧は目を見開き、対岸の騎士たちでさえこちらの泣き声が聞こえて、驚いたのである。


 彼らが去った後に、空も少し暗くなってきた。趙括と李牧はやっと川を渡り、後ろに幸と戈がついていた。


 「馬服子!!」


 「馬服子!!!」


 橋を渡ったら、すぐに叫び声が聞こえたのである。数万人もの趙国の兵士たちがここに集まり、趙括をじっと見つめた。趙括が微笑むと、まるで好きなアイドルを見たファンのようにさらに声が大きくなった。彼達は顔を真っ赤にして、涙を流す人もいた。


 李牧は小声で、

 「大兄はもともと名望が高いが、荻が来た後にさらに高くなりました。さらに、今ではこんなにも食料を送ってきて、もしあなたが将軍になれば、彼達はきっとあなたのために命を捨てることができます。」


 趙括は一瞬固まったが、何も言わなかった。李牧は周りの兵士たちを見て苦笑いした。

 「廉頗将軍は兵士たちを励ますためにいろんなことをしてきましたが、大兄の微笑み一つにも勝らないとは。さすがは大兄だ。」


 前方に若い都尉が来て、趙括を見て、顔を赤くした、

 「司馬尚は馬服子に拝見いたします!馬服子はお元気ですか!!」


 「元気です!」


 「廉頗将軍があなた様を呼んでいます。」


 長平城に行く道で、馬服子来たのを聞いた兵士たちは皆門から頭を出して、道を見た。


何もしていないにもかかわらず、兵士たちにこんな風に見られ、趙括は心に針が刺さったかのように感じた。


 長平城は小さな城である。司馬尚は趙括たちをある屋敷の前に送ったら、そこを離れた。離れる時は三歩歩くたびに振り向いて趙括を見た。


 趙括は屋敷に入り、門客が立っていた。その門客は趙括をある部屋に連れた。


 「この世に後輩が先輩を待たせる道理はない!」

 廉頗将軍が大声で言った。大きな男だ。


 趙括は慌てて、

 「将軍を待たせたの私の過ちです。お許しください。」


 廉頗は忽然笑いは始めて、趙括の前に来て、

 「今の人の成長速度は恐ろしいな。李牧もそうだが、お前もそうだ。数年間でここまで成長して...」


 廉頗はそう言いながら、趙括の手を引っ張って、趙括に席に座らせてから、自分も座った。


 「もし馬服君もお前の今の姿を見たら、きっと喜ぶだろう。」


 趙括は何も言わなかったが、廉頗は続けた、

 「彼が一番心配していたのがお前だった。いつも戦争していたから、お前を教育できなかったと言っていた。」


 「しかし、彼よりよほど君子だな。俺が先のように彼に質問していたら、とっくに剣を抜いていた。」


 趙括はぎょっとして、

 「私の父は温厚な人です。」


 「温厚???」廉頗は少し変な様子を見せ、

 「お前がそう言うのであれば、そういう事にしよう。」


 廉頗は急に厳粛な顔になり、

 「俺は近頃、ずっと馬服子を待っていた。馬服子に尋ねたいことがあったな。」


 趙括は何かがおかしいと感じ、

 「どうぞ言ってください。」


 廉頗は息を荒げて、怒った様子で、

 「お前の門客の荻というやつが、俺が無能のじじいで、馬服子さえ将軍になれば、とっくに白起を殺していたと皆に言っていたぞ。」


 「さらに、馬服子は秦国を滅ぼす策が十個もあると聞く。俺にこの十個の策を詳細に教えてくれんか?お前はどうやって秦国を滅ぼすつもりだ??」


 「あっ....」

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