23.老いた楽毅,飯もできず
趙括と李牧が楽毅の屋敷の前に来ると、丁度馭者が馬車に乗って帰ってきた、趙括と李牧の身分と来た理由を聞いて、彼らに敬意を示した。田単の家臣ほど傲慢ではなかった。彼は二人を楽毅の屋敷に連れ込み、庭には矢が刺さった的がたくさんあった。
李牧はとても興奮しているように見え。、楽毅はほとんどこの時代の将軍がなしえる高峰を代表している。趙国において、誰もが彼を尊敬している。ましてや、趙人であるがゆえに、田単よりも地位が高い、李牧がファンのように楽毅の噂を話している。
「私は何度も楽毅将軍を拝見するためにここに来たことがある。でも...怖くて入れなかった。」
しかし、李牧が本当に楽毅を見た時、何かが壊れた音がした。楽毅は確かに名将だ。しかしそれは数十年前のことだ!
今の彼はベットで横になり、歯も抜けていて、髪の毛すらほとんど残らず、全身に臭い匂いがする。腐敗の匂いだ。
楽毅は年老いた。
藺相如ですら五十歳なのに、楽毅はその一回り年上だ。茫然と横になって、目もよく見えないが、来た二人を見て、少し嬉しそうにしている、
「趙奢?騎劫と私を見に来たのか?」
そう言って、よだれが出たのに、拭かなかった。
李牧は茫然として趙括を見た。趙括はこうなると少しは予想していた。この時代の人は長寿ではない、藺相如の年齢ですら後世ではまだ老人とは呼べない。しかしこの時代では死ぬ事の一歩手前だ。ましてや一回り大きい楽毅。
隣の馭者は、
「お許しください。将軍は長く寝台に倒れている、正常な時は少なくなり、混乱する時が増えてきました。人も認識できず....あなたを馬服君と勘違いしているかもしれません。」
彼は楽毅の口元のよだれを拭いてから、泣きそうな口調で、
「将軍、馬服君と騎劫はもう死にました。この人は馬服子の趙括で、この人は李牧です!どちらとも趙国に賢名がある若者で、あなたを拝見しにきました。」
楽毅は恍惚として、
「死んだのか?」
「はい、死にました。」
「誰が死んだ?」
「馬服君と騎劫です。」
「そうだった....彼達は死んだ。」と楽毅は茫然とうなずいた。
楽毅のこの様子は戦争するどころか、普通の生活ですら難しい。趙括も趙王の苦痛が分かってきた、これほどの名将がいながら、使えないとは....
趙括はゆっくりと楽毅の目の前に来て、李牧は彼の隣に座って、趙括は言った、
「楽毅将軍、私は馬服君の息子で、趙括と申します、あなたを拝見しに来ました。」
「趙括....趙括か..」
楽毅は何度もその名前を繰り返して、やっと覚えたような様子がしたが、また聞いてきた、
「趙..なんて?」
「趙括。」
「趙括!」楽毅は正確に彼の名前を読んだ途端、嬉しそうにした。趙括の名前を覚えた。それで不安気に、
「何の用で私を訪ねてきたのですか?」
また顔色を変えて、慌てて聞いてきた、
「まさか趙国にまた何か起こったのか?」
李牧は趙括を見たが、趙括は忽然笑い始めた、
「安心してください、趙国に何も起きてません!すべてが順調です。私はただあなたの武勇伝を聞いて、あなたを拝見しに来ただけです。」
「良い...良いことだ、もう何年も私を訪れる人がいなかった。彼らは皆、私を忘れた。」
「誰もあなたを忘れていません!今だけでなく、将来でも、あなたを忘れたりしません。今後は多くの天才たちが自分をあなたに例え、それを誇りに思うはずだ。」
「私はたとえ数千年が過ぎても、楽毅という勇敢な将軍を誰かが覚えて、あなたの話をして、あなたを誇りに思っているはずです。」
趙括は真剣な顔で言って、ただの慰めには見えなかった。
「噓だ。」
「あなたはすべてを洞察できる将軍です。誰があなたを騙せますか?私は事実を言っているだけです。」
「趙括....あんたはいい人だ。しかし、騎劫のような人と付き合うなよ、騎劫は兵法しか分からん、彼には戦争が分からない。」楽毅はそう言って、李牧を一目睨んだ。そして続けて言った、
「こんな人と付き合うのは、良い点より悪い点の方が多い。」
李牧は慌てて説明しようとした、
「楽毅将軍、私は李牧です、騎劫ではありません!」
「昔に....」楽毅の目に光が宿って、
「子之の悪人が謀反を起こして、大王を攻めた。斉国は私たちを助けるどころか、私たちを攻めてきた、都を攻め落とされ、大王も殺され、燕国を滅ぼそうとした。」
「私と新しい大王のおかげで斉人を撃退した、こんな仇、打たないわけがない。私は軍隊を連れて、斉国のすべての軍隊を潰し、斉国の都を攻め落とし、斉国を滅ぼした。」
「燕王が...燕王が私を殺そうとしなかったら。私はすでに斉国を占領し、斉国の土地と燕国の武勇を持って、三晋と合併した!秦国の出る幕もなかった。」
楽毅は忽然李牧を見て、
「これも全部お前のせいだ!」
その時は父すら生まれていなかった!李牧は楽毅を悔しそうに見て、
「将軍、私は李牧です!騎劫ではありません。」
楽毅は彼を構わず、また面白い噂をした。それの多くは彼が経験した戦争で起こった話だ。趙括は嫌そうにもせず、逆に興味津々に聞いていた。
楽毅はずっと昔から病気で寝台に倒れていた。彼の友達も死んせいで、だんだんと彼を訪れる人が少なくなった。こんなヘタレじいさん、会ったからって何の得がある、何のために訪れる?
楽毅はこんなに多くの話をしたことはなかった、こんなに嬉しそうにしたことはなかった、ずっと笑いながら、
「斉国は、覇王の国だ。今となってもその根幹が残っている、土地も広く、人口が多い。もし攻めるのであれば、必ず趙国、楚国、魏国と連合して攻めるんだ。」
「楽毅将軍の言う通りです。」
「はあ...」楽毅は忽然長くため息をして、悲しそうに言った、
「私が言った事は間違っている、天下で最もやりづらいのが将軍だ。負けても、自分の命を守れないし、勝っても、自分の命を守れない。どの国でも、無敗の将軍を我慢できないのだ。」
「趙括、絶対に勝ち戦をしすぎてはならん!さもなければ、大王はあなたを殺してしまう。」
隣にいる馭者は顔色を変えて、趙括は何かわかったような様子だった。楽毅は燕国で名声が高いから、駆逐された、田単は斉国で名声が高いから、同じように駆逐された。白起は....趙括は可能性を考えて、立ち上がり、楽毅に向かって一拝をした、
「将軍の教え、ありがとうございます、覚えました。」
楽毅は笑顔でうなずいた。
趙括は一歩前に来て、楽毅のよだれを拭いて、
「将軍、今日はこれ以上あなた様の休憩の邪魔をしません、今後も、また訪れに来ます。」
「分かった、分かった...」楽毅はとても嬉しそうにして、馭者が趙括たちを送り返した後にも、楽毅は依然と嬉しそうにして、馭者に向かって、
「趙括と騎劫がまた私を訪れるって、彼達が、私をまた訪れると言っていた。」
「はい、将軍、確かにそう言っていました。」
楽毅は寝台で倒れて、まるで彼達がいつ来るのを考えているようで、笑いながら独り言をしている。
馭者も涙を拭いて、
「それでは、今日はまた外に出かけますか?」
「今日はいいや...いいんだ。」