2.信義無双馬服子
刺客を送り返したところ、趙括はやっと状況を整理する時間ができた。
実はこれは悪いことではない、前世は若かったが高血圧でいつも病室に倒れていた、苦痛を耐え続けた人にとって健康な体があることだけで、趙括は非常にうれしかった。
たとえこの人の未来が残酷であったとしても、趙括はすでに対応する方法を見つけたのである。
長平に行かなければいいだけだ。引き続き廉頗に主帥をやらせておいて、自分はたとえ家で餓死しても、長平には絶対行かない!
自分が長平に行かない限り、たとえ父である趙奢の残した財産だけで、優雅に一生を過ごせる。もし長平の敗がなければ、もしかすると趙国の滅亡を見ることなく、最後まで人生を楽しめるかもしれない!
趙括はそう思いながら、先ほどの恐怖はすぐに消え失せた。喜びの気持ちさえ湧いてきた。
すぐに、二人の賓客がそばに来た。この二人を趙括は知っている。彼らは趙括に長年仕えてきた、そのうちのヒゲある方は荻と呼ぶ、彼は中原の者でなく、林胡人らしい、四年前、彼は趙国にやってきて、寒さと飢餓を味わい、行き場のない彼は行き場を探したが、多くの貴族は異国からやってくる胡人の勇士を受け入れることを拒んでいた、当時やっと十六歳になった趙括だけが、初めての門客が身を寄ってくるのを見てうれしさがたまらず、彼を屋敷に残したのである。
荻は勇士として武芸に長けていた、趙括の屋敷で最強である。とは言っても、趙括の屋敷は仕女と母、それともう一人の五十歳をも超える門客を加えても七人しかいないけど。
もう一人は地元の趙人である、名を幸と呼ぶ、しかしその生涯は不幸である。幼い頃から父を亡くし、その後母も亡くした。邯鄲内で歩き回り、危うく他の士に殺されかけて、趙括の助けで何とか命だけは守られていた。故にそのまま趙府に残り、趙括の賓客となった、武芸もまあまあである。荻に少々劣り、趙府の二番目の手練れである。
「子君、趙異人はすでに私たちが返してやりました」
「彼は子君の徳に感服し、屋敷の門を出るところ、涙さえ出そうになったのです」荻は笑いながら言った、趙括は平然と笑った、荻が続けて言った「子君、私は昔から趙国に信義ある者が多いと聞く、しかし、今日になって初めてこの言葉を信じました、子君は友のために戦功を得る機会を放棄するとは、私は凄く敬服しております。」
「友のためなら、私は常にこうである。」趙括は言った、また慌てた口調で二人に話した「今日のことは、絶対に外に漏らしてはいけません。」
幸は少し不審な目で趙括を見た、趙括はいつも名声を渇望し、このような話がもし外に出ると、きっと趙括の趙国での名声をあげられるはず、何故外に漏らしてはいけないのかがわからなかった。
趙括は説明しなかった、今彼に必要なのは慎重さであった、より慎重に、一番は趙王の耳に趙括の名前が届かないことである。趙括は二人に退出させて、自分はこの二千年前の庭を歩き回り、周囲の環境を見た。たとえ前身の趙括の記憶を受けたとしても、彼は自分の目でもう一回見たかった。
趙府は比較的に広く、周囲に低い壁しかなく、門だけを残した、門に入ると犬小屋が一つある。この時代において、多くの人は庭で犬を飼うことを好んでいた。趙括の記憶を探ると、昔に猟犬を飼っていたことが分かった。父の趙奢の最愛だった、しかし、趙奢が世を去ったのち、この猟犬は食べず飲まず、三日後に父の趙奢と同様に去った。
庭の両端に桑の木が植えてある。この時代ではよくあるらしい。南に井戸がある、趙括は裏庭のトイレ行き、トイレは豚小屋とつないでいる、最初の緑の循環だ。
趙括が興味津々に自分の家を参観している時に、表庭で荻と幸が会話していた
「子君はなぜおれたちにこの話に言いふらしてはいけないと言ったのだ?」幸は少々疑惑があった。
「そんなこともわからないのか?いいか、もしこの話が外に流されたら、子君にはもちろん有益だ。しかし、あの趙異人は秦国の人質であるぞ!それが子君を暗殺しに来たのだ、趙人がこの話を聞いたら彼を許せるのか?子君は友のために、自分の名声を高める機会を放棄したのだよ!」荻は拳を強く握り、嬉しそうに言った。
幸はやっと悟ったように頷いた、それから、
「そうだ、子君がすでに言ったのだから、決してこの事を言いふらしてはだめだぜ!」
荻は怒った顔で幸を見つめ
「あなたは私をどんな人だと思っているのですか。私は林胡の勇士ですぞ!約束を固く守るものです、子君の言ったことにそむくわけがありません。」
幸はあきらめたように長くため息をした後に、
「他のことならまだしも、お前のその口は、ご飯を食べる時ですら止まらない。もしあなたが言葉が話せない人であれば、例え平原君でもあなたを賓客として彼の屋敷に招待し、牛や羊であなたをもてなすのに.....残念だ。」
幸は首を横に振りながら、その場を立ち去った。残った荻は少し怒った様子で何かを呟き、しばらくしてその場を立ち去った。
馬服は邯鄲西北にある小さな村で、趙の地としてもまあまあ有名である。有名の原因はここの封君が名将趙奢だからである。
趙奢が馬服君となってからは常にここにいた。馬服君の死後、馬服子の趙括がここの封君となった。もし春秋時代であれば、趙括も諸侯として数えられることができる。土地を持ち、個々の官吏に軍隊の招集を依頼できるのである。
しかし残念ながら、今は昔と違う。今の封君は、地方の行政の権利はなく、租税を取り立てる権利しかもっていない。ここの官吏は趙王の委託を受けているのだから、趙括の命令を聞く必要はない。
ただ、それでも、租税だけで趙括は困ることなく暮らせることができる。
馬服と邯鄲の道路のとある柳の木の下に、何人か顔を真っ赤にした漢が輪になっている。周囲の人たちはそれを見てみんなは近づきたくないのでまわり道をするのである。
このように見られる人たちは遊侠や門客などが多い。平日はすることがなく、遊んで暮らしている。尋常な人だけでなく、たとえ官吏だとしてもこの人たちに口出すことができない。
何しろ、この人たちの多くは貴族の食客として招かれることが多いのだから。ここでの食客は食べることを指しているわけではない、下につくと言う意味である。
この遊侠の中に体格がよくて堂々としている二人がいて、角抵、日本ではいわゆる相撲をしていたのである。二人は相手の肩を掴み、力をどんどん出して、顔を真っ赤にするほど必死だった。
周りにいる男たちは拍手をし、それを眺めていた、荻もその中にいたのである。角抵を熱烈に見ていた。これは彼が最も好きな活動であった、そのうち、周りにいる友人たちが会話をし始めた。
「皆のものよ、私が聞いたことによると、平原君の屋敷の隣に足が不便な人が住んでいるらしい、ある日、平原君の妾がその人が歩いているのを見て、大声を出して嘲笑った。」
「 次の日、その足が不便な人は平原君の家に来て、平原君にこう言った.....私はあなたが下のものを愛し、だから門客たちは千里も遠くからここへ来て、あなたの門客になろうとしているのです。」
「なぜならば、あなたが士を重視し、妻や妾を軽くみることができるのだからです。私は不幸にも足が不便である、それをあなたの妾は見て嘲笑った、どうかその妾を殺してほしい!」
と一人の男が興味深い噂について語り、周りの人たちはそれを興味津々に聞いていた。
貴族たちは平日いろんな遊びができるのが、荻みたいのものは角抵、または集まって話をするくらいしかできないのだ。その男の物語を聞き、荻は鼻で笑った、この話を彼はすでに七か八回くらい聞いたことがある。
「その後、平原君は本当にその妾を殺したらしい!」
「平原君こそ士を愛する者」
「まさしく信義ある者だな」と周りの遊侠は我慢できずに声を上げた。
荻は不敵に鼻で笑いながら「皆の者は信義が何だかを知っているのか。」
「ほう?それでは荻は知っているのですか、あなたはいつも馬服子の隣についている、馬服子はまだお若い.....馬服子の傍にいるからといって何を知っているといえるのですか。」
と荻に話を途切れられた男は少し不快な顔をし、何か悪口を言おうとしたが、自分の封君の悪口を言うのもよくないから、遠回りに自分の考えを言った、若造から何を学べるのだと.....
荻はすぐさま怒り「今日.....」口を開けたが、また口を閉じ、歯を食いしばって何も言わなかった。
荻の様子を見て、他の人たちはさらに好奇心が湧いてきた、彼らは荻が口を閉じるのを見たことがない、こいつは朝から晩までずっと話し続けることができる、もしや本当に何かあったのか?
周りにいる者が荻を囲んで、
「荻、もし本当に私たちを友達として扱い、家族として見ているのであれば、何が起こったのかを教えてほしい。」
荻は彼らを見ながら、ちょうど相撲をし終わった二人でさえ近くに寄ってきたのである。荻は少し怒った様子を見せ、しばらく経った。
この話を心に隠すことは彼にとって死ぬほどつらいのである。荻は真面目な顔を見せ、
「この事はあなたたちにしか言わない、あなたたちは外に言いふらしてはいけないと約束してくれますか。」
「ああ、もちろんだ、私たちを誰だと思っている?約束を固く守る者ですよ!」
「よし、分かった。」荻はそれで嬉しそうにして、さっき趙括の庭で起きたことを話した。
荻がこの話を話しているときは唾が跳び、意気揚々としている。彼が刺客を仕留めたシーンを話している途中、皆に分かりやすいように本当に隣に立っている友でさえを地面に蹴り倒した。荻の話が終わると、周りにいる遊侠たちは皆顔を赤くし、跳ぶくらい興奮していた。
「なんと!馬服子が!」
「私たちは今までに信義のある主を探し、何度も平原君の門下に入ろうとした。まさか.....まさか、私たちは海の隣に立ちながら、川を眺めていたとは!私は封君の門下に入り、彼の食客になりたい!皆の者はどうなんだ?」
「われらも共に行きたい!」
なんか,初めて小説書くから,誤字とかあったら言ってね.....