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12.応侯の策略

はい,今回は少し難しい言葉を使います,わからない人もいますからね,恥ずかしからずに...


<遠交近攻>…兵法三十六計の第二十三計にあたる戦術で,遠い国と親しくし近くの国を攻略するという意味。

 秦の道はすべての国の中で最も平坦で広大である。しかし諸国はそう思わなかった、三晋(さんしん)特に地区は、

 “たかが西から来た野蛮人、野蛮な国は無礼なり。彼らはその野蛮さや残酷さで軍隊を維持し、文化もなければ、制度もない。秦人は悲惨に暮らしている、そんな道があるわけがない。”


 たとえ三晋地区が見ぬふりをしても、鄭朱(ていしゅ)は身をもって直感した。


 秦人はまだすべての上党郡(じょうとうくん)を攻略していないのに、すでに上党郡の建設工事を始めている。道を歩くと、秦人が道具を振って、道を建設しているのが見える。上党郡から秦国の道を作ろうとしているのだ。


 鄭朱は最初秦王への残酷さについて不平を言い、秦人の体験を哀れに思ったが、歩ければ歩くほど、鄭朱は次第に無口になっていた。


 鄭朱は怖い。


 彼が途中から見る秦人は狂気のようだった。上党郡の建設工事をしているのは最下層の庶民にもかかわらず、その顔に一切の不満はなく、黄土に覆われた顔に、強い意志を感じさせ、その目は自信に満ちていた。鄭朱は軽蔑な視線で見られた。


 鄭朱は一人としてさぼる秦人を見なかった、たとえ汗まみれでも、必死に手に持つ道具を振ってた。


 まるで国の事業ではなく、自分の家事のように。


 趙国では自分の家事でしか、こんなに気を使わない。


 さらに秦人が口を開くことなく、沈黙を貫いて、自分の仕事に専念していた、ある程度の道を経過するたびに十人が一緒に仕事をしている、一人の長官と九人の配下の構成だ。


 鄭朱は馬車に乗って奇妙な感じをした、まるで馬車は前進せず、ただ同じ道を何度も何度も繰り返しているように、なぜなら先ほど見る秦人は体、容貌、さらに挙動まで同じに見えたからである。


 「上党郡の道の幅は秦国と異なるのだから、この人たちに工事をさせているのです」

 護衛を任された蒙武(もうぶ)は微笑んで説明した、鄭朱はうなずく、道の横で止まっている馬車の後ろにある無感情な顔を見ると、恐怖を感じさせざるを得なかった。


 “和議...和議をしなければならない、趙国は秦国の相手ではない...いや、違う、すべての国が連合しないと、秦国に勝てない!”


 馬車は尹氏城(いんしじょう)へと向かい、鄭朱の心情も重くなってきた。


 この時、范雎(はんしょ)の馬車も尹氏城に速い速度で向かっている、彼は趙国からの使節の知らせを聞いた時から、急いで咸陽を離れ、上党郡の方向を向って馬車を走らせた、范雎の心ではこの“戦”は秦国にとって最も重要な戦争だと思っている、この戦に勝てば遠交近攻が成立する!


 范雎はみずから行かなければならん、さもなければ、鄭朱が来るまで、数ヶ月かかるかもしれない。范雎は短気な性格をしている。一番嫌いなのは待つことだ!


 上党郡へ赴き、鄭朱と合流してした方が時間が省ける。秦人から趙国への礼儀も表明できるしな...范雎は目をつぶって考えた。


 范雎は結果重視をしている、彼が何かを決定する多くの時、この決定が一石二鳥、あるいは三つの成果をもたらしてくれると期待している。さもなければ、この決定は失敗したと思っている。だから、范雎はいかに利益を最大化できるかを考えた。


 二人とも各自の使命を持って、長い旅をして、尹氏城に到着した。


 鄭朱が馬車を降りると、遠方から頭を下げ、小幅に走る人が来た、これは自分より尊敬な人を迎える姿勢である。鄭朱は驚き、途方に暮れた、そばにいる蒙武も目をピクリと開き、鄭朱より驚いた、彼は応侯のこのような姿を見たこともない。


 「私は趙国には賢才鄭朱がいて、性格は優しく、高雅な賢人がいると聞く。趙王ですら彼を見たら馬車から降り、大臣たちも彼を見たら立ち止まって彼にお辞儀をするという。」


 「雎は何の才能もない庸人である、あなたにはこのような姿で拝見さしてもらいます。」

 范雎は言った。

 

 「恐縮ではございます。あなたこそが天下の賢臣、秦王はあなたを寵愛し、天下の士人は皆あなたを尊敬しています!こんな礼儀を受けるわけにはいけません。どうか私に恥ずかし目を受けさせないでください。」と鄭朱は慌てて答えた。


 范雎微笑んで前に進み、鄭朱の手を取り、周りの人々に言った、

 「秦と趙はまるで兄弟みたいな国である、全ては馮亭のような悪党が私たちの仲を悪くさせた。これで戦争を終わらしていいと思う!」


 蒙武の体はぷるっと震え、慌てて、「しかし...」


 「黙れ!」范雎は容赦なくそう言って、蒙武は仕方なく頭を下げて、何も言わなかった。


 范雎は鄭朱の手を引っ張って城の門に入った。鄭朱は言葉が出ないほど興奮しながら、范雎と場内に入った。范雎はまた自ら宴会を開き彼を招待した、誰も鄭朱を非難する人はなかった。


 范雎は再び彼の手を握って、再び言った、

 「秦国と趙国は兄弟のような国だ、韓、魏こそが他人だ、この世に矛を他人に向けずに、身内に向ける道理はない、いかが思いますか?」


 鄭朱は興奮しながら、

 「あんたの言う通りです!秦国と趙国は戦争をすべきではない!」


 宴会が終わると范雎は鄭朱を自分の部屋に連れ込み、一晩中思いを語っていた。


 鄭朱はすごく嬉しかった。


 彼は目から涙をこぼして、室内に座り、范雎の手を握って言った、

 「私が来るときは秦趙の和議が出来ないと、とても心配していました。趙国はすでに四回も徴兵の命令を出し、すでに国内にひげが生えてる青年がいません。農耕の季節ですよ!まさかあたなのような高尚な人がいらしたとは...招待に深く感謝申し上げます。」


 「私は趙国と秦国にこれ以上戦争させたくありません。私の息子は趙国の将を務めていて、秦人に殺されました。しかし私は恨んでいません!彼は国のために死ぬことができたからです!」


 「私が悲しいのは私に息子が一人しかいなく、早く戦争が終わらさなければ、より多くの人々が息子を失うことです!」

 鄭朱は涙を拭きながらそう言った。


 范雎は彼を見て、言葉が出なかった。


 「ありがとう!応侯、趙国人はあなたの恩徳を決して忘れません。息子が死んで以来、こんなにもうれしくなった..ことは...なっい.....」

 鄭朱は酒を飲む過ぎたか、ゆっくりと寝た、顔には涙の跡が見える。


 范雎は彼を見て、気持ちが複雑になりながら、最後には長くため息をして、何も言わなかった。

 

 “すまない、私がこうしなければ、より多くの秦人の息子が戦場で死んでしまう。”


 次の日、范雎は鄭朱を連れて、再び秦王に会う旅に出た。今回の旅では、鄭朱はやっと重たい使命を外し、范雎と会話しながら咸陽に向かった。范雎も焦らずに鄭朱を連れて、秦国を見て、色々と解説した。


 鄭朱も当然ながら焦ることはなかった。范雎はすでに和議を同意し、秦国の侵略も止まったからだ。


............


 魏国、大梁(たいりょう)


 「今にも秦国は我らを侵略して、趙国の城を攻め落とし、趙国の官吏を殺そうとしています。趙国と魏国は兄弟の国であり、魏国に趙国を助けてもらい、秦人の侵略を退治してもらいたい!」

 趙禹(ちょうう)は魏王にお辞儀ををして言った。


 魏王は目を細めて、不快な顔で、

 「しかし、寡人は秦国と趙国こそが兄弟の国で、魏国を討伐すると聞いたのだが?」


 「上君、こんなでたらめな噂を信じてはなりません!それはすべて秦国の策です!」

 趙禹は驚いて、慌てて言った。


 「でたらめだと?范雎が自ら趙国の使節である鄭朱に言った言葉であるぞ!今では秦国は侵略をやめ、鄭朱を非常に尊敬して、同盟みたいな話まで出来ていると聞く!」


 「まさか魏国の軍隊を趙国へ騙し、秦国と共に我ら魏国の軍隊を滅ぼそうとしているのではないか?!王宮の武士はどこにいる!この者を追い出せ!二度と魏国に入れるな!」

 魏王は怒りで大声で言った。


 忽然周囲から十数人の武士が出てきて、趙禹を王宮から連れ出した。


 このような幕は秦国以外の趙国が出したすべての使節の身に起こった。

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