02
冒険者ギルドの二階で、ゴルダさんから装備や備品を購入。
その後、なぜか帰宅するゴルダさんに連れ帰られた。
そしてゴルダさんの手料理を頂き、準備してくれたお風呂に入らせてもらい、寝床に案内された。快適過ぎて素直に寝てしまった。
あれれー?
「布と紐で手作りの靴とか、その雑な造りの服とか、匂う体とか、子供のくせに丁寧な言葉とか所作とか」
ゴルダさんの怖い顔がこちらを見据える。
「いかにも訳ありだろうがよ、放っておけるか!」
翌朝まで丸一日ぐっすり寝てしまい、朝食の席でそんな話をされた。
ちなみにゴルダさんの手料理は、かなりおいしい。
男の独り住まいだが、きれいに掃除しており、客間があって、私は客間のベッドで快適に寝ました。
シーツも清潔でした。
女子力高いな! 顔怖いのにな!
でも匂う体とか言うな! なんとなくわかってたけどよ!
「ポーションが作れるくせに、無一文とかな」
「あ、厨房をお借りしてポーション作ってもいいですか?」
「スルーか!」
私がゴルダさんを怖がらず、遠慮せず自然体で世話になる図太い子供とわかったからか、言葉が雑になった。
雑に吠えながら、厨房に招いてくれる。優しいおっさんだ。
そして訳ありの理由を問わず、ちゃんとこの家に帰ってくるようにと言い聞かせて、共同生活開始となった。
当面の寝場所問題がいきなり解決して、我ながらびっくりしている。
ポーション売却の収入に対し、宿代と、装備そろえるのと、食費などなど、色々と頭を悩ませていたのです。私なりに。
ゴルダさんは訳ありの子供を放置できず、きちんと冒険者として生活が整うまで、彼の家で暮らすよう言ってくれた。
厨房もお風呂も、必要な物は使っていいらしい。
ゴルダさんの家から森に通い。
採取したあとゴルダさんの家で魔法薬を作成。
ギルドに納品、そしてお買い物という日々を過ごした。
稼ぎで食材を買って帰り、ごはんを作ると「あまり気をつかうな」と言いつつ、嬉しそうに食べてくれる。
本当に可愛いおっさんなのだ。作りがいがある。
たまに作成されるゲロマズ料理も、残さず食べてくれる。ええ人や。
いや、本当にね。私にはこちらの素材がよくわからないからね。
最悪の組み合わせをたまに引き当てるんですよ。
そういうときは、マズイマズイと言いながら、二人で食べるわけですよ。
彼がお休みの日には、一緒に採取に行くこともある。
いろんな魔獣の仕留め方や、解体方法などを教えてもらった。
なかなか生々しかったが、肉になった魔獣はおいしかった。
私が本の知識で、念願の胡蝶花の花蜜を高品質で採取。
パンケーキを作ってかけたら、がっついて食べてくれた。
怖い顔だが、どうやら甘党らしい。
共同生活は快適で、食事は作れる方が作る。
一緒に食べる以外は、各自で作ることになっている。
でもまあ、夜勤明けなどはなるべく、食事をテーブルに用意しておく。
疲れて帰ってきて、食事があるのは嬉しいよね!
「気をつかうな」と言いつつ、喜んでくれている様子に、また作ろうと思っちゃうってもんよ。
もちろんゴルダさんが早起きのときは、彼の手作り朝食を頂く。
休みの日は、とびきり手のこんだ夕食を作ってくれることもある。
このおっさんは、元Sランク冒険者という、実はすごい人だったらしい。
足の怪我で本来の動きができなくなり、引退したと聞いた。
でも普段の歩き方では、足が悪いとわからない。
いつもは若手や新人冒険者に、活動で気づいたことを指導しているそうだ。
ギルドにお金を払うと研修も受けられ、一緒に野営をして指導するという。
実際に若手冒険者の多くに慕われているよ。顔は怖いけど。
そしてあの日は、貴族っぽさがにじみ出る訳ありの奇妙な子供が、冒険者登録に来たことで、すごく心配になったらしい。
ポーションを作れるのも、保護理由として大きかったそうだ。
国や領主など貴族に仕える高位の薬師はともかく、一般の薬師はポーションを作れる量が少ない。
なのに大量にポーションを作れる子供がいる。
そんなのを野放しにして、変なところに確保されたら大変だと、焦ったという。
私もそれが身の危険に繋がるなんて思ってもいなかったので、びっくりだけどね。
そんなこんなであの日、一人前になるまで育てようと決意して、連れ帰ってくれたそうだ。ありがとう! ゴルダさん大好き!
戦争はまだ続いていると世間の噂で聞く。
隣国との小競り合いがあり、母が亡くなったのが八歳になってすぐのころ。
義母が嫁いできてから戦争になり、九歳で王都に移り住み。
一ヶ月目で主な使用人を帰し、二ヶ月目に虐待で私がこんにちはになった。
家庭教師解雇事件は、私が空間魔法を使えるようになった直後だったんだよ。あの先生は元気にしているかな。
ゴルダさんとの共同生活は半年たち、冒険者生活を満喫している。
短剣や体術などを教わり、攻撃魔法なんかも得意になってきて。
採取も討伐も順調に腕を上げ、作れる魔法薬も増え、生活に便利な魔法も色々と試してみて。
冒険者ティナちゃんは、王都の冒険者たちと気軽に挨拶をし、馴染んでいる。
商店街の人たちも、かなり顔見知りが増えた。
父とは一年ほど会っていない。
戦争は終わらない。
そしてもし終わっても。
父が私をあっさりと諦め、死亡扱いにするのなら。
このまま冒険者ライフを満喫するのみだ。
今の私には、冒険者としての父ゴルダさんがいるからね!
まあ、戦争が終わったなら、様子くらいは見に行ってあげようじゃあないか。