<< 前へ次へ >>  更新
96/353

少女と、村づくり 1

 目を覚まして、皆でどのような住む場所にしようかというのを話し合う。



 どの木を切って、どの木を残すか、どのあたりに作物を植えるエリアを作るか。そういう話し合いを一から皆でして、作り出していく。



 私たち、一人一人が積み上げていくもの。作り上げていくもの。皆で、一緒に共に過ごしていく場を作っていけることが本当に嬉しいと思う。

 ドングさんたちが切ると決めた木を伐採していく。

 身体強化を使って、私も伐採を手伝おうとしているけれど皆ほどうまくいかなかった。フレネに風の魔法で伐採したほうが早いといわれたんだけど、それも中々上手くいかなかった。魔力のコントロールが上手くいかなくて、余計な木を切ってしまったりしたため、一旦私の伐採の手伝いは保留になった。魔力があって、風の魔法が使えるかもしれないけれど現状では役に立てないことに落ち込んでくる。家づくりは、一軒ずつ、少しずつ組み立てられていった。



 家を一から作るのも力仕事で、私は中々上手くお手伝いが出来なかった。

 私の今の一番のお仕事は、精霊樹に魔力を込めることだ。フレネは、それはレルンダにしか出来ないことなんだよと言ってくれているし、私がこうして精霊樹や精霊たちのための力になれるのは嬉しいけれど、もっと皆のために行動をしたいって焦ってしまう。



 ガイアスは、耳と尻尾の色が銀色に変化してから、以前より力とかが増したみたいで私とあまり年も変わらないのに伐採や家づくりに貢献していた。ガイアスは、貢献できることに嬉しそうに笑っていた。

 薬草園や畑を作ろうという作業も行っている。私も一生懸命頑張った。土の魔法が得意なエルフたちがこちらでは活躍していた。



「レルンダ、私、今日は狩りの手伝いをしたの!」

「レルンダちゃん、私はね、お料理をしたんだよ」



 カユとシノミがにこにこしながら私に話しかけてくれる。



「俺たちは解体をやった。な、ダンドンガ」

「うん。解体、大分上手くできた」



 イルケサイとダンドンガが二人で解体をやったのだと告げる。




「俺たちはガイアスと一緒に家づくりやった!」

「あれ、俺達が建てたんだぜ」



 ルチェノとリリドが誇らしげにいって、家の方を指す。



 今、私は獣人の子供たちと一緒に話していた。もちろん、その場にガイアスもいる。

 私はガイアスの銀色の耳と尻尾をじーっと見る。元の色の耳と尻尾もとても魅力的だけど、綺麗な銀色の耳と尻尾はとても触りたくなる。番にしか認めない行為だと知っているから我慢してさわりはしないけれど、とても魅力的なもふもふだと思って仕方がない。




「少しずつ、家できて嬉しいね」

「ああ。グリフォン様たちの巣もできてきたな」

「うん」



 グリフォン達は自分たちで巣を運んで来ていた。少し小高になっている部分にレイマー達が一生懸命組み立てている様子を見てほほえましい気持ちになった。子グリフォン達は、初めて会った時よりも少しずつ大きくなっていた。あと三、四年で皆成体になるんだって、レイマーがいってた。

 子グリフォン達は大きくなるの楽しみだって声を上げていた。



 その頃には私ももっと背が伸びて、大人になっているのだろうか。その頃の私はどんな生活をしているのだろうか。少なくとも、大好きな皆と一緒に居られてたらいいな。皆と笑いあえる私で居られたら嬉しいな。



「レルンダ、もう少し落ち着いたらまたおばば様が色々教えてくれるっていってたよ!」

「それは楽しみ」

「私、お勉強あんまり好きじゃないけど、おばば様から教わるの最近できてなかったから楽しみなの」



 カユがそんなことを言う。人間から逃げて、エルフの村でばたばたして、そしてまた移動して。そうしている中で、おばば様からゆっくりお話を聞く時間が作れなかった。獣人の村では当たり前だった日常が、この新しい村で徐々にまた当たり前になっていく―――、それを思うと心が温かくなる。

 当たり前の、優しい日常がここでは待っている。そんな希望が芽生えてくる。



 そしてその当たり前の、優しい日常を継続させるために私は頑張りたい。その当たり前の日常を守っていけるように、私は一生懸命になりたい。



「グリフォン様たちに祈る場所とかも作れないかなーって皆いってるんだけど、エルフの人たちの精霊へ祈る場所みたいな感じの」

「んー……あんまり大げさだと皆嫌がるかも」

「ちょっとしたのなら大丈夫かな?」

「どうだろ?」



 イルケサイの言葉に、私はそう答える。今、周りにグリフォン達はいない。シーフォは私のすぐそばにいるけれど、グリフォン達は巣作りに必死だから。エルフの人たちが精霊への祈りのために凄く大きな建物作ってたのを見て、獣人の皆も作りたいと思ったみたい。



 私が……、本当に神子かもしれないのなら私に加護を与えてくれているらしい神様に祈る場所とか作った方がいいのかな? イルケサイの言葉を聞きながら私は、ランさんに相談してみようと思った。



 ―――少女と、村づくり 1

 (多分、神子な少女は大切な人たちと共に村づくりに励む。そして獣人の子供たちとの会話を交わすのだった)



 

<< 前へ次へ >>目次  更新