女史の記録 2
本日二話目です。4/14
『神子に関する記録』
記録者:ランドーノ・ストッファー
神子と想定される少女、レルンダは九歳になった。
私がレルンダに会ってから様々なことが起こっている。まずは、レルンダによくしていた獣人が殺されたこと。そして獣人の村を追われたこと。
猫の獣人たちの村が襲われたのは確かに神子、という存在が現れたからであると言える。猫の獣人たちは奴隷になったり命を落としたという。
そして狼の獣人の村にまでミッガ王国は手を伸ばした。とはいえ、その後レルンダが居たからこそ、一人の被害だけで済んだという見方が出来るのだ。
考えてみれば当然のことである。人間の国は、獣人の村よりもずっと人数が多く、力を持っている。その人間の国が行動を起こしておきながら一人だけの被害で済んだのは幸いなことといえる。恐らくレルンダがいなければ、獣人の村は全滅――それか良くて半壊か全員奴隷に落ちるといったことになっていたのではないかとも考えられる。
レルンダはその後、獣人の少年ガイアスと誓いを立てた。
それは、皆が笑って過ごせる場所を作ること。その誓いを叶えたいと二人はいった。
その願いを本当の意味で叶えられたらレルンダとガイアスの名も、そして他の皆の名も歴史上に残っていくだろう。
その後、エルフという種族たちと会うこととなった。
エルフという種族についても文献では読んだことはあったが、実際に会ったのは初めてだった。
あまりにも好意的に迎えられたため警戒はしていたが、まさか魔物の脅威にさらされ、私たちを生贄に捧げようとしているなどとは思ってもいなかった。
レルンダが居なければ私たちはそのまま生贄にされたことだろう。
レルンダが精霊を感じることが出来る力を持ち、なおかつ説得をすることが出来たからこそ私たちの命が存在している。
魔物を倒すことが出来、精霊樹の問題を片づけることもレルンダは成功させた。
神子であるかもしれない、という事実をレルンダは仲間たちに告げることも出来た。
私はやはり、レルンダは神子であると確信している。
レルンダは、現在グリフォン、スカイホースに加え、風の精霊とも契約を交わしている。
そして『神子の騎士』と呼ばれる現象を二例も引き起こしている。
一つはグリフォンのレイマー。
もう一つは、獣人の少年のガイアス。
ガイアスの変化は耳と尻尾の色が茶から銀へと変化したこと。そして魔力を感じやすくなったことだとは聞いている。しかし、おそらくそれだけではないだろうと考えられる。ガイアスがどのように変化を遂げていくかも記録していかなければならない。
そして、『神子の騎士』がどのような条件で祝福が与えられるか、そして祝福が与えられた存在がどのように変化していくか。それは神子の研究者として興味深いところである。
ただ神子は無限に祝福を与え、『神子の騎士』を生み出し続けられるわけではないというのは研究からも分かっている。レルンダがいつか、祝福を与えることで悲しいことが起こらなければ良いが。レルンダに敵対するかもしれない存在に祝福が与えられない、などということが出来ていれば問題がないかもしれないが、少しだけ心配になる。
レルンダはこれからどこに向かうだろうか。どのような人生を歩むのだろうか。
レルンダが歩む道がこのまま何も起こらずに目標を叶えていける可能性は少ないだろう。レルンダとガイアスの望みをかなえていくことは困難の道を究める。私たちが叶えたい目標を叶えるためには、人間達がいずれこちらを見つけた時に戦わなければならない。私たちは私たち自身を守る力を磨いていかなければならない。
風の精霊と契約をしたレルンダが風の属性の適性が高いことが判明した。
また、グリフォンやスカイホースといった存在と契約を交わしていることからも、どの神様の加護を受けているのかを少なからず予想は出来る。ただし、まだ明確な根拠も何もない。レルンダがどの神様の加護を受けているか、レルンダが本当に神子なのか、それを明確に証明していきたい。
何か根拠となるものをレルンダに示せれば、レルンダが”神子かもしれない”ではなく、”神子である”と認めてくれるだろうか。私はレルンダが神子であると思っている。だけど、もしかしたら違うかもしれない可能性は少なからずある。この世に絶対はないのだから。
神子であろう少女、レルンダ。
彼女の足取りを手助けし、見守りつづけよう。そしてレルンダが間違えそうな時には導ける存在でありたい。
―――女史の記録 2
(女史は多分、神子な少女のことを記録する。そして少女が神子であることの根拠が欲しいと望んでいる)