少女と、少年の変化
ガイアスとお話をして、ガイアスの心を知って。
その翌日、私は結構ぐっすり眠ってしまっていた。だけど、周りがざわめいていて、思わず驚いて飛び起きた。
どうしたんだろう、何かあったのだろうか。私はそう思いながらざわめきの方に向かった。
その中心には、ガイアスが居た。
ガイアスが戸惑った表情を浮かべている。
「あれ……?」
私も、驚いた声を出した。
ガイアスの耳と尻尾の色が、違う。茶色だったそれが、異なっていた。
「綺麗な、銀色……」
耳と尻尾の色が、銀色に変わっていた。その色は見たことがないぐらい綺麗だった。目が覚めて、気づいたら色が変わっている。これって、私……、思わずレイマーの方を見てしまう。
レイマーも目が覚めたら変わっていた。
ガイアスにも同じことが、起きた? 私が……起こしてしまった?
「……ガイアス、色、私のせいかも」
「レルンダの、せい?」
「うん……、レイマーも私が怪我をしてほしくないと願ったら金色に変わった。私、ガイアスのこと祈った。もしかしたら……それでかもしれない」
私は、皆に囲まれているガイアスに近づいてそういった。
私のせいかもしれなかった。
ううん、かもしれないではなくて、私のせいだと思う。
「……そうなのか」
「うん、多分……、ガイアス、何か夢みた?」
「ああ……」
「……ごめん、なさい」
「なんで謝るんだ?」
「ガイアス、自分で力つけたいいってた。私、何かガイアスにしてしまった。ガイアス、望んでなかったかもしれないのに」
ガイアス、自分の手で強くなることを望んでいたかもしれない。なのに、私はガイアスが望んでなかったかもしれないのに、与えてしまったかもしれない。ガイアスは望んでなかったかもしれない、欲しくなかったかもしれない。―――なのに、あげてしまったかもしれない。
ガイアス、私のこと嫌ってしまうかもしれない。そう思うと、緊張した。
「レルンダ、おそらくそれは違います。ガイアスはレルンダから祝福を与えられたのだと思いますが、その祝福は与えられる側が承諾しない限り与えられないはずですから」
私の言葉に真っ先に返事を返したのは、ランさんだった。
そういえばレイマーも何か聞かれて、答えて変化が訪れたといっていた気がする。ガイアスも、そうなのだろうか。
「ガイアス、そうなの?」
「……ああ。聞かれて、答えて……俺が受け入れたのは確かだ。夢だと思っていたし、まさかこんな変化があるとか思ってなかったけど」
夢だと思って聞かれて、受け入れて、それで結果的に自分が変わっているなんて不意打ちにもほどがあるし、ガイアスが望んだ変化なのか分からない。
「やっぱ、ごめん。ガイアス、変化望んでなかったかも。私余計なことしてしまったかもしれない」
「気にしなくていい。どんな形でも、力が手に入るのは……まぁ、複雑だけど嬉しいことだから」
「うん……」
「何か、力が湧いてくる感覚はある。見た目は色が変わっただけなのに。……でも今は、与えられているだけだから。俺はもっとこの与えられた力を自分の力に出来るようにしたい。もらったものに、自分が追い付けるように―――、そして皆のために役に立てるように」
ガイアスは、私の目を見ていった。
ガイアスは、やっぱり優しい。そして心が強いと思う。そうでなければ私が神子かもしれないと告白した時に、あんな態度は出来なかっただろう。そして今だって役に立てないということを落ち込んでいたけれどもそれでも卑屈になることがない。
―――私はやっぱり、ガイアスは凄いと思う。
「うん……私も、頑張る。神子かもしれない、って力はある。そして契約している皆がいる。だけど……私自身はそんな力ない」
ガイアスの思っていることは私も思っていることだ。
私は特別な何かがあるかもしれない。そして契約を交わしている皆がいる。皆はとても凄いかもしれない。だけど、私自身は、全然凄くない。もっと、私自身が皆の契約主として相応しい存在になりたい。胸を張って、皆と一緒に居れる存在で居たい。
「だから、ガイアス、一緒に頑張ろう。一緒に、強くなろう」
「うん……」
「レイマー、大きくなったりしている。ガイアスは、どう変わったか知らなきゃ」
「うん」
ガイアス、レイマーは大きくなったりといった大きな変化があったけれど、そんな大きな変化は見られない。耳と尻尾の色が変わっているけれど、それ以外に何がどう変わったのだろうか。それも知っていかなければならないと思った。
私自身が、神子かもしれない力についてもっと知らなければならないのと同様に。ガイアスも、知っていくべきだと思った。
「レルンダ、やっぱり貴方は神子ですわ」
ランさんはそんなことをつぶやきながら、何かを書いていた。
――――少女と、少年の変化
(多分、神子な少女の祈りにより獣人の少年が変化する。少女は少年に頑張ろうと告げ、少年もそれに頷いた)