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少女と、獣人 2

本日二話目

「乱暴しちゃ、駄目」

「ぐるぐるぐるる(背にのせるの嫌だったから……)」

「でも下ろす時に、丁寧には出来たでしょ」



 ルルマーの言葉に私は思わずそういってしまう。もう少し丁寧に下ろしたらいいのに。


「ぐるぐる……(今度から気をつける)」



 注意をされてルルマーは少し落ち込んでいた。

 ルルマーが私に注意された後だからかレイマーたちはちょっとだけ丁寧に獣人たちを下ろしていた。レイマーたちが連れてきた獣人は四人だけだ。


 全員大人で、ガイアスもいれて五人。

 少ない人数でグリフォンの元へ貢物を持ってきたって感じなのかな。それにしてもなんでガイアスだけ子供なのに一緒に来たのだろうか。



 ちなみに全員狼の耳と尻尾だった。一人はガイアスに顔立ちや毛並が似ていたからその人がガイアスのお父さんなのかなと思う。


 そのガイアスのお父さんは、私とグリフォンたち、あとシーフォを見て唖然とした顔をした後、キリッとした顔で立ち上がって問いかけた。



「グリフォン様、どうして我らはここに連れてこられたのでしょうか。我らがグリフォン様の巣に足を踏み入れさせていただいたことは光栄に思います。まさかとは思いますが、恐れ多くもグリフォン様のおそばに立たせていただいている我が息子が何か粗相をしでかしてしまったのでしょうか。私はどんな罰でも受けますので、どうか息子だけは助けていただきたい限りです」

「固い……」



 思わずつぶやいてしまった。

 だって、かたい。口調も態度もかたっくるしい。凄くかしこまっている。



 グリフォンを神としているって、ガイアスの話からわかったけどこんな接し方なのかと驚いた。

 それにこの場にいるガイアスが何か起こして、その結果グリフォンたちが自分たちをここに連れてきたと勘違いしているみたいだけど……。寧ろやらかしたのは私だよ。ガイアスの耳と尻尾を思う存分もふもふしてしまった私が謝らなきゃいけない案件だよ。


 私のつぶやきに、ガイアスのお父さんらしき人は私を視界に留める。



「私、レルンダ」


 私、とりあえずガイアスのお父さんに挨拶をする。

 ガイアスのお父さん、無言。無視しているとかではなくて対応に困っているみたい。

 ガイアスも私がここにいること驚いていたし、多分、何で人間の子供がここにいるのだろうとか考えている気がする。

 でもとりあえず言いたいことを言おう。そう思って私は続けて言葉を口にする。



「ガイアス、お父さん?」

「……確かに、私はガイアスの父親だが、君は……」

「ガイアス、お父さん、ごめんなさい」



 とりあえず謝っておく。私は貴方の息子さんにやらかしてしまいましたってことで。獣人と出会ったことも初めてで、本当に全然知らなかった。

 許してくれるかな?



「……それは、何に対しての謝罪だ?」

「ガイアス、もふもふ、してしまったので」



 そんなことで謝られて困惑したのか、ガイアスのお父さんはガイアスの方を戸惑ったように見た。

 説明を求めているようだ。



「ええと、父さん、歌が聞こえていったらレルンダと《スカイホース》がいて。レルンダになでまわされて……ここに連れてこられたというか……。あと、俺、何も粗相はおかしてない!」



 ガイアス、必死に言葉を言い放つ。しかし、ガイアスのお父さん、ガイアスの説明で分からなかったのか困った顔をしている。困惑顔、二人ともそっくり。

 親子だなぁと私は思う。

 ガイアスのお父さん、今度は私の方を見る。



「レルンダ、だったか、君に説明を求めてもいいか?」



 説明といわれてもガイアスが言い放ったこと以上のことは何もない。何を説明すればいいのだろうか。

 こくりと頷けば、ガイアスのお父さんに聞かれる。



「人間なのに君はどうして、ここに?」

「皆、家族。ここ、家」

「……ここに住んでいる?」

「そう」

「ガイアスはどうして、ここに?」

「迷子。それで皆を神様、言ったから」

「私たちが連れてこられたのは?」

「ガイアス、迷子だから。合流できるように」



 私がそういえば、ガイアスのお父さんも他の獣人たちも考え込むような仕草になった。固まってどうしたのかな。私は事実を口にしただけなんだけど。



「ガイアス、ガイアスのお父さんたち、どうしたの」

「……俺と一緒で驚いて固まっているだけだ。俺も、まだ色々理解できてないし」

「そう、なの?」

「ああ。ここに人間がいるのはおかしいし、人間がグリフォン様と暮らしてるのもおかしいし……。普通ありえないからちょっとびっくりしてるだけだと思う……」

「そっか」



 私はそういった後、考え込んでいる獣人たちの耳と尻尾を見つめてしまう。今のうちにちょっとでも触っちゃ駄目かな。ガイアスとは違ったふさふさ、もふもふなのかな。ちょっと気になる。

 じっと、見ていたら私の思考はガイアスにばれていたらしい。



「……触るのは、駄目だから」

「代わりに、ガイアスの触るのは……?」

「駄目」



 こんなに目の前にもふもふがあるのに触っては駄目なんて……と悲しくなっていたら自分のことは触っていいと、グリフォンたちとシーフォがよってきたので私は思う存分もふもふした。

 気がすむまでもふもふして、ガイアスのお父さんたちをみたらそれはもう驚いた顔で私たちを見ていた。




 ―――少女と、獣人 2

 (多分、神子な少女はガイアスのお父さんと会話をする)



 

 

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