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少女と、道中のお祝い

 今回のお祝いは、私だけじゃなくて魔物退治とかでごたごたしていた影響で出来なかった他の皆の誕生日も一緒に祝った。



「おめでとう」

「おめでとう!!」



 おめでとう、の声が周りでも沢山響いている。

 私も、皆におめでとうって告げた。おめでとう、って人に告げると笑ってくれる。皆が笑ってくれるのが私は嬉しい。こうやって今は住む場所もないけれど、だけど、それでも私は幸せだと思うんだ。それは、皆がいるからなんだ。皆がいなければ、こういう生活で幸せは感じられないと思う。




「……レルンダ、おめでとう」

「ありがとう。ガイアス、ガイアスも、おめでとう」



 ガイアスの誕生日、バタバタしている間に過ぎてしまっていた。ガイアスはやっぱりちょっと様子がおかしい。ガイアスは、何を思っているんだろう。



 魔物退治、ということを終えて、ガイアスは何を考えているんだろう。いつか、ちゃんと話してくれたら嬉しい。そう思いながらも私はガイアスに何も現状聞けないでいた。



「レルンダも九歳か」

「おめでとう」



 ニルシさんと、同じ猫の獣人のグジャさんが私の方へ寄ってくる。

 笑いかけてくれることが嬉しい。おめでとうが飛び交うこの場が嬉しい。心地よくて、温かい気持ちがどんどん広がっていく。



 去年、大好きだって、幸せだって思えた誕生日がもっともっと、好きになった。誕生日ってずっと姉のための日だって思ってた。でもそうではないんだって皆と出会って、皆が祝ってくれて、だからこそここまで幸せを感じられるのだ。



「レルンダ、嬉しいですか?」

「うん……!」

「良かった」



 ランさんはそういって、私の頭を撫でてくれる。



「ぐるぐるるううう~♪」

「ぐるっぐるっ」

「ぐるぐるるるるるるう~♪」



 グリフォン達は、私にまた歌を歌ってくれた。エルフの人たちからも歌を習ったらしくて、私が知らない歌もあった。私もその歌うたえるようになりたいな。




「ねぇ……オーシャシオさん」

「どうした?」

「ガイアスは?」

「ガイアスなら……あっちにいるな」



 しばらくしてガイアスが、中心にいなかった。

 オーシャシオさんに気になって話しかければ、ガイアスはこのお祝いの中、端の方で一人座っていた。ガイアス、やっぱり、何かを考えているみたい。

 その心は何を考えているのだろう。こんな楽しい場でどうしてそんな風に考えているのだろうか。




「ガイアス……、どうしたの、かな」

「んー、あいつも色々考えることがあるんだろ。今は放っておいて大丈夫だと思うぞ」

「……オーシャシオさん、ガイアス、何を考えてるか、わかる?」

「なんとなくはな」



 私は全然、分からない。なのにオーシャシオさんは分かるんだと思うとちょっとだけもやもやした。私はガイアスと仲良し、だと思う。私はガイアスのこと大好きだし、私はガイアスのおかげで助かったこと沢山ある。ガイアスに教えてもらったことも、いっぱいある。



 だから、私はガイアスが悩んでいるなら、何か力になりたいと思う。ガイアスのこと、知っていたいなと思う。でも、私は今、ガイアスが何を考えているのか全然分からない。




「――そんな顔するな。今日は思いっきり楽しんでいていいんだ。ほら、母さんが手招きしてるぞ」



 頭をぽんぽんとされて、オーシャシオさんの言う方を見たら確かにおばば様が私を手招きしていた。おばば様はこの中でも高齢の分類に入る。だからこそ、この移動も大変そうにしている。一生懸命皆でおばば様を助けながら進んでいる。



「おばば様」

「レルンダ、背も少し伸びたね」



 おばば様は私のことを見て、そんな風に言って笑う。

 確かに、獣人の村に初めてやってきた時と比べて私の背は少しずつ伸びている。大人になったらもう身長は伸びないから、皆との差も少しずつだけど小さくなってきている。



「うん、伸びた」

「レルンダに服を作ったから、これを着てみて」



 おばば様は私に服を作ってくれたみたい。いつも私が着ているようなワンピース。模様や飾りが可愛い。さっそくその服を着てみる。



 動きやすくて、何よりおばば様が私のために作ってくれたと思うとどうしようもなく嬉しかった。誰かに何かをしてもらうこと、私は嬉しい。だから私も誰かに何かを与えられる存在になりたい、って思う。

 朗らかに笑うおばば様は、私にとって憧れだ。私は将来、こんなおばあちゃんになりたい。

 シレーバさんや、ウェタニさんたちエルフの人たちもお祝いをしてくれて。よく考えたら皆で仲良く笑いあえること、奇跡だなと思った。



 だって私とランさんは人間で。ガイアスやドングさんたちは狼の獣人で。ニルシさんたちは猫の獣人で。シレーバさんたちはエルフで。それだけ違う存在たちがこうして笑い合えて、同じ目標を持ってるって凄いと思った。一緒にこうしてお祝い事が出来て。


 その事実が、一番うれしいことで、凄いと思う事で。一番の誕生日プレゼントだなと私は思った。



 ――――少女と、道中のお祝い 

 (多分、神子な少女は道中でのお祝いを楽しむ。さまざまな違った人たちが一緒に笑いあえる奇跡を感じながら)



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