少女、南へ
一部指摘された部分書き換えました。
私たちは南に向かうことになった。南には、何があるのだろうか。南へ向かったら何か変わるのだろうか。
今後、どうなっていくか分からないけど、皆がいるから大丈夫。皆が一緒にいてくれるから、私のことを受け入れてくれて、そのことが本当に嬉しくて仕方がない。不安よりも、これから皆で作っていくことが出来るんだって気持ちの方が強い。
私たちはエルフの村で荷物をまとめて、南へ出発する。皆で荷物を持って、移動し始める。
今回は、この前の移動のように逃げているわけではない。
だからこそ、急いで進む必要はない。自分たちのペースで、自分たちの住みたい場所を探す。私たちの今度の移動はそれだ。
「住みたい場所、早く、見つけられたら……いいな」
「ええ、そうですね。レルンダ」
私のつぶやきに、ランさんがにこにこと笑っていってくれた。
私とガイアスの未来が夢が皆の夢になって、皆でともに叶えていこうとしている夢。
その夢をかなえるための一歩。それが南への移動なのだ。そう思うと、アトスさんが殺されて逃げるようにあの大好きだった村を後にした時とは、全然気持ちが違ってくる。
皆で、南へと、少しずつ歩いていく。
私は自分が神子かもしれないということを言えて、正直心の底からほっとしていた。肩の荷が下りて、嬉しくて仕方がなくて、最近すぐに私は笑みを零してしまう。
少しずつ南へと進んでいって、私たちは川にぶち当たった。
川を越えるための橋はない。ここは人の手が入っていないのだろう。結構川の幅も広い。深さは、そこそこ深い。これは、グリフォンたちやシーフォが少しずつ皆を運んでくれた。あとフレネが風の魔法を使って運んだりしてた。でもフレネの魔法はちょっと不安定でフレネが運んでいる人は少しだけ不安そうな顔をしていた。
というか、私、フレネと契約をして、風の精霊と相性が良いってことは私は飛べるようになったりするのだろうか。飛べるようになれたらもっといろんなことが出来るようになると思う。というか、飛べるようになりたいな。フレネに聞いて、もっと魔法を使えるように頑張ってみよう。
そういえば、ガイアスは……何か、色々考えているみたい。
魔物を倒してから、何だか考え込んでいる。私はガイアスが何を考えているか知りたいし、相談してほしいと思うけれどガイアスが自分から話してくれるのを待っとこうと思う。
川を皆でわたって、その場で一休みをした。
グリフォンたちやシーフォ、フレネたちがゆっくり休んでいる。フレネは、精霊という立場だから人と同じように休む必要はないらしいけど、私と一緒に休んでいた。そういえば、フレネの姿は通常だと人に見えたり、声が聞こえたりしない。ただ、フレネが自分で声が聞こえるように姿が見えるように魔力を使ってしているらしい。元から精霊を感じ取れる人には何もしなくても見えるし聞こえるわけだけど。
「フレネ、風の魔法、教えてね」
「うん。教える」
フレネは私の言葉にそう答えてくれる。
「私、他の魔法も使える?」
「多分、風が一番相性がいいみたいだけど、他も使えると思う。レルンダは、精霊と本当に相性が良いもの」
「……そっか、嬉しい。フレネ以外精霊とも仲良くなれるかな?」
「レルンダが望めば出来ると思う」
精霊達と相性が良い、という事実は正直嬉しい。色んな精霊たちと仲良くなれたら嬉しいと思う。仲良くなれて、一緒に生きられたら――それだけ私は楽しいし、嬉しいと思うから。
「フレネ、沢山、私に魔法、教えてね」
「風は出来るけど、他は私にはちょっと難しいかも」
「うん。あと、精霊のことも沢山教えてね」
「うん」
フレネと一緒に寝っころがって、二人で話す。その周りにはグリフォン達やシーフォもいる。こうして青い空を見上げて、のんびりするの、楽しい。日の光が気持ち良い。
その日、私はそのまま、眠りについてしまった。
目が覚めた時、ふと、皆が何かを話していた。固まっている皆、私は皆の元へ近づいてく。
そしたら、
「お誕生日おめでとう、レルンダ」
そういわれた。
ああ、そうだった。私の誕生日。そんな時期になっていたことを、私はすっかり忘れていた。
そっか……、あの私にとって初めての楽しい誕生日になった日からもう一年も経つんだ。アトスさんが亡くなって、皆で逃げて、エルフの人たちと出会って、魔物と戦って。そんな慌ただしい日々の中で、今がいつかなんて考えてもなかった。だけど、そんな日々の中でも、私の誕生日、覚えててくれたんだ。お祝いしてくれるんだ。
そのことが、嬉しかった。
心がまた、温かくなった。
「移動中だから前のようにお祝いは出来ないけど、でもお祝いしますからね」
ランさんが、優しい目をして笑ってくれた。
―――少女、南へ
(多分、神子な少女が仲間たちと共に南へ向かう。そして少女の誕生日がまた訪れる)