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少女と、少年。

「じゃ……責任、とる」

「は? な、何を言って……」

「今、触る、特別な意味って、聞いたから」

「いや、だからってそんな簡単に言うものじゃないだろう……つか、誰に聞いたんだよ」

「シーフォ」



 少年はころころ表情を変えて面白い。誰に聞いたのか聞かれたので、シーフォの名前をいって指差す。


「言葉、わかるのか!?」

「契約、してるから」

「契約……? じゃあ、《スカイホース》に認められたってこと?」

「認められたかは、分からないけど、仲良し」



 驚いた顔をしているのを見るに、魔物が契約を結ぶのはそうはないことなのかもしれない。正直そういう知識が全然ない私には何が特別で、何が特別ではないことか分からないけれど。


「少年は……、どうして、ここに?」

「少年って、俺はガイアスって名前がある。ここには俺達の神様がいるからな! 父さんたちと一緒に貢物もってきたんだ!」

「貢物?」

「そう! なんかよくわかんないけど、服が欲しいって言われたって父さんが言ってた」

「服……?」



 それって、もしかしてと私は考える。

 もしかして、獣人の少年ガイアスのいう神様って……。



「グリフォンの、こと?」

「な、何で知ってんだ!? お前、心でも読めるのか!?」



 ガイアスが凄く期待した目で私を見ている。でも残念ながら私は心が読めるわけじゃない。というか、ガイアスは心読める人とかいるとわくわくしちゃう感じの子なの? 私なら心読まれるとちょっと嫌だけど。


「心なんて読めない。ガイアスは、お父さんと来たって、はぐれたの?」

「ああ、なんか歌が聞こえたから気になってこっちきちゃって……」

「私と、シーフォの歌?」

「そう、なんか気になってきたら《スカイホース》とお前が歌っているからなんかびっくりして。そしたらお前……俺の耳と尻尾凄いなでるし! もうああいうこと獣人にしちゃ駄目だぞ!」



 なんと、私とシーフォの歌につられてお父さんとはぐれちゃったらしい。それは大変だ。

 それにしても、グリフォンたちが神とはどういうことだろうか。あと服を手に入れるって獣人からなのね。貢物っていってたから、定期的にグリフォンたち貢がれている?



 自然の中で生活している人たちって、強い存在をあがめてるとかそういうのがあるのかな。

 耳と尻尾。

 ガイアスの耳と尻尾、茶色で、凄いもふもふしてさわり心地いいのに。もう触っちゃ駄目なのかな。触りたい……。


 じゃあ、やっぱり……。


「責任とったら、ガイアスの、触ってもいい?」


 ずっともふもふ触れないより、責任とってもふもふ三昧の方が私にとって良い気がする。もふもふしたいし、もふもふが旦那さんになるのは良いことだと思う。



「お前……女がそんな簡単に言っちゃ駄目なんだぞ!」

「でも、触りたい……」

「そ、そんな目で見ても駄目だぞ!」

「……ガイアスは、私が、番、嫌?」

「い、嫌じゃないけど! そうじゃなくて、父さんがいっていたぞ。番っていうのは大切だからそう簡単に決めるものじゃないって!」



 嫌じゃないんだ。尻尾揺れているけど、実は嬉しい? なんだか可愛い。揺れてる尻尾触りたい。ぴくぴく動いている耳も触りたい。

 それにしてもガイアスのお父さんもガイアスと同じ狼のもふもふなのかな。それとも違うもふもふの獣人もいるのかな。



「よく考えて、なりたかったら、いい?」

「それは……い、いいけど」

「いいんだ。ガイアス、可愛い」



 ぶんぶん揺れる尻尾と、なんか素直な物言いに思わず笑みが零れる。

 あ、なんかガイアスが固まった。どうしたの?



「どうしたの……?」

「……な、なんでもない!」

「顔、赤い?」

「見るな!」


 どうしたんだろう。まぁ、いいや。それより、私ガイアスに自己紹介していない気がする。ちゃんと名前を言わなきゃ。



「レルンダ」

「ん?」

「私の、名前」

「ああ、レルンダっていうのか。というか、レルンダはなんでここに? こんな森の奥に人間は来ないだろ?」

「私、捨てられたから……」

「は!?」



 捨てられたと正直に言ったらガイアスが驚いた顔をした。

 人間は確かにこんな森の奥深くには来ない。人間が住んでいるのは、森を切り開いたりした場所とかだし、こういう場所には魔物がいるから来ないもの。

 私も捨てられて、シーフォに連れてこられるまでこんな奥深くに来たこともなかった。



「捨てられたって、大丈夫なのか!?」

「ん。大丈夫だから、こうして、元気」



 心配してくれているらしい。初対面なのに、いい子。心配されると、嬉しい。

 あ、そうだ。ガイアスはお父さんたちとはぐれたって言ってた。ガイアスのお父さんたちもガイアスのこと凄く心配しているかもしれない。早くガイアスは無事だってことをガイアスのお父さんたちに教えなきゃ。


 ガイアスのお父さんたちがグリフォンへの貢物を持ってきたっていうなら、グリフォンの巣に戻ったらなんとかなるかな。

 私はそう考えた。



「ガイアス、行こう」

「行く? 何処に?」

「グリフォンのとこ」

「は!?」

「いいから、乗って」


 そのままガイアスをシーフォに乗せて、私もシーフォに乗って、グリフォンの巣に戻ることにした。




 

 ―――少女と、少年。

 (多分、神子な少女は獣人の少年と会話を交わしている)




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