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少女と、エルフ 2

「仲良くしたいというレルンダの思いはわかります。レルンダは優しい子ですから、そういうだろうという事も分かってました。でも、仲良くしたいからといって、必ずしも仲良くできるわけではありません。エルフに私は会ったことがありませんが、エルフにも人間との間に諍いがあるのは確かなことです。人間はエルフでさえも、奴隷にしていますから。フェアリートロフ王国ではエルフの奴隷の数は少なかったですが、それでも奴隷として存在していましたから……」



 ランさんは、私がガイアスと一緒に、言いに行ったらそういわれた。

 そしてランさんは私の目をまっすぐに見ていった。



「―――エルフが、何を考えて私たちを招くのか現状はわかりません。敵意を明確に持っているようには思えませんでしたが、だけれども私たちの味方というわけでは決してありませんから。だから……もしかしたら、大変なことが起こるかもしれません」

「大変なこと?」



 私が問いかければ、ランさんはいった。



「もしかしたら、私たちは人間に捕まるよりひどい目に合う可能性もあります」

「……そんな?」

「ええ。もしかしたらの可能性なんですけれど……、敵意は持っていなくても、悪気なく私たちの本意でないところを要求してくる可能性もあるのですよ。例えば、優しいようにみえても真意が違う場合もありますし。だからこそ、警戒心は必要ですね」



 警戒心か……と私は思う。私はグリフォンたちやシーフォと結果的に契約できたし、であった獣人たちと仲良くできているけれど、それってただ運がいいだけの話なんだ。生まれ育った村にいた頃も、たまたま、運がよくってことが多かったし、私が神子だとしたら、神子の能力って運をよくするとかなんじゃないかって最近ちょっと考えている。

 完璧ではない能力だから、私が何もしなくても、全て上手くいくなんてことはない。それは、これまでのことでわかる。でも確かに、人よりは、多分、運がいいんだと思う。それでいて、住んでいる場所が豊作になったりとかはするんだろうなとは思う。



 ……でもそれを考えると、私の運がちょっとだけ人よりもいいのならば、私が出会えたエルフの人も、良い人の確率の方が高かったりとかしないのかなとちょっとだけ思った。



 そのことをランさんに言ったら、「それは可能性は高いかもしれないけれども、そうじゃない可能性もあるのよ」と言われた。



「うん」

「まぁ、でもエルフの人たちと仲良くなれたら一番良いのですけれども。そう、なれるように努力しましょうね」

「うん」

「ああ」



 私とガイアスは、ランさんの言葉に頷いた。

 ドキドキするな。エルフの人たちと、どんな関係に私たちはなっていくのだろうか。エルフの人たちと、仲良くなれたらいいなって思いを強くしながら、ルルマーの体にもたれかかって眠った。





 翌日、朝早くからエルフの村からの迎えが来た。





 迎えに来た人は、昨日も見かけた人だと思う。エルフの人たち、結構似ているから確証は持てないのだけど、多分、昨日もいたと思う。




 迎えの人数は流石に昨日のように大勢ではないけどそれなりにいる。荷物を持って、ぞろぞろと移動する私たちの周りを囲むようにエルフの人たちは居る。相変わらず冷たい目を浮かべている。ランさんに手をつながれながら、私は、笑って欲しいなと思う。どうしたら笑わせられるだろうか。そうやってじっと見つめていたら、一人と目が合った。にっこり笑いかけたら、顔をそらされた。ちょっとショックを受けた。




 でも、仲良くなりたいからもっと笑いかけて、話しかけたいと思う。

 グリフォンたちとシーフォももちろん一緒にエルフの村に向かっている。エルフの人たちはグリフォンたちとシーフォのことを警戒しているみたいだった。



 レイマーがぐるぐるうると声を上げて、エルフの人たちがグリフォンたちとシーフォのことを気にしていることを教えてくれた。グリフォンたちとシーフォは、私にとって家族で、大好きな皆だけど、初めて見る人にとっては怖いとか、あるんだろうなって思う。獣人の皆の場合は、グリフォンのことを神様のように考えていたからこそ、簡単に受け入れられたのかなと思った。グリフォンたちとシーフォのこと、エルフの人たちが怖がっていて、それで笑顔を浮かべてくれてないとかあるのかな。となると、怖くないってことを伝えたら大丈夫なのかな。




「……ランさん、怖くない、伝えたら、笑ってくれるかな」

「どうでしょうね」



 私とランさんはこそこそと会話を交���す。小さな声で話していたら、じって、見られたりした。エルフの村、少しだけ距離が離れていた。



「ここだ」



 といわれて目にしたエルフの村の光景に私は驚いた。獣人の村は、人間の村のように森を切り開いて家を建てていた。だけど、エルフの村は、彼らの住まう場所は――――森をそのままにして、切り開くことなく、そこに家を作っている。木の上に、森の一部のように家を作っている。そういう感じだったのだ。

 初めて見る光景に興奮した。



 わぁって思わず声を上げてしまった。

 そして、大勢のエルフが、私たちの事を迎えてくれた。





 ―――――少女と、エルフ 2

 (多分、神子な少女はエルフの村へとたどり着く。はたして少女の願いは叶うのか)




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