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少女と、エルフ 1

 エルフ、という種族について私は詳しく知らない。

 知っているのは、人から教えられた情報での、エルフだけ。



 エルフは、魔法が得意な種族だといわれている。本当にそうであるかは、見ただけでは私はよく分からない。ただ、獣人の皆よりも、体が細くて、肉づきがよくない。

 獣人たちはもっと、がちっとした体つきをしているから、エルフたちと見比べてみると全然違う。とがっている耳を不思議な気持ちで私は見てしまう。人間の耳はとがってないし、獣人の耳は獣の耳だし。

 エルフたちと、ドングさんたちが向かい合っている。私やガイアスは、話を聞こうと近くにいた。エルフの人たちに、何で子供がいるんだという目で見られたけど話を聞きたかったからちょっと怖かったけど近くにいた。他の子供たちはエルフたちを怖がって別の所に大人たちといる。




「………我らは、自分の住まう場所を追われてしまった」



 ドングさんは言葉を選びながらも、エルフの人たちに説明している。エルフの人たちの目の色は、大体が緑。ちょっと違う色もあるけど緑っぽいのが多い。髪の色が金色が普通なのかな? 凄く綺麗。緑色の細められている目は、冷たい。でも考えてみてみれば、エルフたちからしてみれば、自分たちが住んでいた場所に突然、新しいよくわからない人がやってきたってことなんだから、仕方がないのかもしれない。私も、自分がいた場所に新しく人がやってきたらびっくりするもん。だから、冷たい目なのかな。冷たい目が、温かい目になってくれたらって思う。私たち次第では、優しい目になってくれるかな。仲良くできたらいい。仲良くできないよりも、仲良くできた方が絶対にいいって、そんな風に思うから。




「ここまで逃げてきた。そしてこの湖にたどり着いた。此処は生活がしやすい場だ」

「ふむ……」



 ドングさんの言葉に、エルフの人が頷く。

 こちらがどうしてここにいるかというのがわかってくれたら、警戒する気持ちがなくなってくれるのではないかってそう思ってた。でもエルフの人たちは冷たい目を浮かべたままで、不安になった。

 エルフの人たちは、何を思っているのだろう。どうしてそんなに怖い顔をしたままなんだろう。どうしたら、笑ってくれるだろうか。



「そういうことなら、我らの村に来るか」



 考え込むように黙り込んでいたエルフの人はそういった。

 エルフの村に私たちが行くことが出来る。それは素晴らしいことだと思う。でもエルフの村なんて近くにあったのかと驚いた。皆周りを探索していたはずなのに、誰かが生活している痕跡は発見できても村なんて誰ひとり見つけたといっていなかった。村が、そんなに見つからずにあるものなのだろうか、ちょっと不思議だった。



 ドングさんたちは、その言葉に、少し黙った。皆、何を思っているんだろう。エルフの村に行けることはいいことなんじゃないかって私は思うけれど、何か皆思う所があるのかな。

 エルフの人たちが、冷たい目を相変わらずしているからかな。エルフの人たちは、私たちを村に呼んでくれるのはどうしてだろう。一緒に暮らそうってこと? でも、そんなことよく考えたら一言もいっていない。



 ……ドングさんが頷いて、翌日、皆で行くことになった。難しい顔をしていた。でも、そうすることが最良の選択だと思うって、ドングさん言ってた。



 エルフの人たちが姿を消した後、エルフの村にいっていいのかという意見もあったみたいだけど、いった方がいいだろうって意見が多かったみたい。

 私とガイアス、正直どっちがいいかわからなかった。私はエルフの人たちと仲良くしたいって言ったけど、ガイアスに向こうは仲良くしたくないって思っているかもって言われて、そういう可能性もあるんだって気づいた。村に来ないかってはいってくれているけれど、エルフの人たちが私たちと仲良くしたいって思いで誘っていると限らないんだ。エルフの人たちと仲良くしたいって気持ちが強くて、そういうのあまり考えられてなかった。いっていいのかって不安そうな人たちの意見は、そういうところからあるのかな。



 エルフの人たちと、私は仲良くしたいけど、仲良く出来ないのかな。

「……仲良くしたい」

「じゃあ、そうできるようにしよう」



 私の言葉に、ガイアスもそういった。出来るだけ、っていうのはどうして仲良くできないかもしれない可能性もあるからだろう。

 エルフの人たちと、仲良く出来るかな。

 エルフの村ってどんなところだろう。エルフの村にたどり着けたら、何か変わるだろうか。




「獣人身体能力高くて、エルフ魔法得意。だから、仲良くできて、一緒に……一緒に歩めたら、素敵、思う」



 エルフと会って、エルフが魔法得意なの考えて、獣人たちの特性考えて、手を取り合えたら素敵だなってそう、思った。




「確かに。うん、凄くいいと思う」

「うん、仲良くしたいな」



 仲良くできたらいいな。翌日、エルフの村へ向かうことを考えて、私はただその思いでいっぱいになった。



 ―――少女と、エルフ 1

 (多分、神子な少女は獣人たちとエルフたちが手を取り合えたらってそう願う)




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