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少女と、グリフォン 3

「わぁ」



 目が覚めたら、お母さんグリフォンが変化していた。

 昨日見た夢と関係があったりするのか、正直わからないけれど、起きてびっくりした。お母さんグリフォン、一匹だけ毛並が金色に代わっていた。あとちょっと大きくなってた。


 なんかかっこいい!


 思わず起きて感嘆の声を上げてしまった私は、お母さんグリフォンの周りをぐるぐるしながら観察をしてしまう。かっこいい! と、そんな感想しか出てこない。



「ぐるぅ(恥ずかしい)」

「ん?」

「ぐるるるぅ(そんなにみられると恥ずかしい)」



 ぐるぅと鳴いているお母さんグリフォンの声と共に、何か流れ込んで来た。これ、もしかしてお母さんグリフォンの言っていることだったりするのかな。


「恥ずかしい……?」

「ぐるぅ(ん?)」

「言っていること……、わかるように……なったみたい」

「ぐる!?(そうなのか!?)」


 と、お母さんグリフォンとそんな会話を交わしたあと、もしかしたら他のグリフォンたちとも会話が交わせるのではないかと思った。けれど、他のグリフォンたちは相変わらずだった。



 やっぱり、お母さんグリフォンの姿が変わったのが原因で私と会話が出来るようになったのかな。よく分からないけど、お母さんグリフォンも不思議な夢を見たらしい。私は夢の内容はほとんど覚えていないけど、お母さんグリフォンはしっかり覚えていたようで説明をしてくれた。

 なんか私のことを守ることを誓いますか、みたいなことを聞かれたそうだ。……私を守ると誓う、そして変化が訪れるって、んー、よく分からない。

 それで受け入れたら起きたら変化していたらしい。



「ぐるぅう……」

「ぐるぐるぅ……」


 お母さんグリフォンと会話を交わしていたら、子グリフォンたちがなんだか落ち込んだように鳴いていた。お母さんグリフォンに通訳してもらったら、何でも「しゃべれなくて悲しい」と落ち込んでいたようだ。

 私も喋れなくて悲しい。



「ぐるぐるぐるるる(契約を結べば言っていること、なんとなくはわかるようになる)」

「契約?」


 落ち込んでいる私と子グリフォンたちにお母さんグリフォンはいった。契約などといわれても私はよく分からない。


「ぐるるるぅ、ぐるぐるぐるぅ(名づけ、それをしたら契約できる)」

「名づけ?」



 それを聞いておじいさんがいっていた名前を付けることが特別な意味があると言っていたのはそういうことなのだろうか。

 何でも名づけをして、魔物側が受け入れて、魔力を結びあうという行為をしたら契約がなされるらしい。そういう魔物を従える存在を魔物使いというらしいの。


 あと言葉が通じない時は分からなかったグリフォンたちの家族関係もきいた。この巣にいるグリフォンはまずお母さんグリフォン、その旦那さんのグリフォン、そしてその子グリフォンが二匹、お母さんグリフォンの姉夫婦グリフォン、その子グリフォンが一匹、旦那さんをなくしたグリフォンが一匹、その子供で成体になっているグリフォンが一匹、そして子グリフォンが一匹。という内訳のらしい。



 そして馬さんは《スカイホース》という名の魔物らしい。馬さんの種族は火魔法など使えないらしいが、馬さんは変異体で火魔法が使えて捨てられ、その後お母さんグリフォンたちが育てたらしい。

 それで馬さんが私を助けたのも、自分が捨てられたからというのもあるようだ。

 魔物たちにもそんなことがあるのだなぁと不思議な気持ちになった。



「ぐるぐるぐるぅ(皆、名づけしてほしいと言っている)」

「いいの……?」

「ぐるぅ(よい)」



 と、そんな風に言われたので名前を考えることにした。

 10匹のグリフォンと、馬さんの名前で、11匹分。正直私は頭を悩ませてしまった。だって誰かに名前を付けるのなんて初めてだし、中々思いつかない。


 悩んでいたら、思いついた名で良いとお母さんグリフォンに言われてしまった。


 そしてしばらく悩んで私がつけたそれぞれの名前はこれである。



 まずお母さんグリフォンは、レイマー、その旦那さんグリフォンはルルマー、子グリフォンはお兄ちゃんの方がレマで、妹の方がルマ。

 レイマーの姉夫婦の奥さんの方はリルハ、旦那さんの方はカミハ、お子さんの雌のグリフォンはルミハ。

 旦那さんをなくしたグリフォンはワノン。その子供で成体のグリフォンはリオン。まだ小さな子グリフォンはユイン。

 馬さんは、シーフォ。

 という名前にした。意味とかは特にない。家族で似たような名前にしてしまった。でも皆喜んでくれた。



「ぐるぐるぐる~(契約嬉しいな~)」

「ぐるぐるぅうう(私もお母さんみたいに金色がいい!)

「ぐる、ぐるぅ(私、ルミハ!)」

「ぐるぐる? ぐるぐる?(聞こえてる? 聞こえてる?)」



 契約を交わしたあとは、何だかどっと何かが抜けていった感覚があった。これが魔力というものなのか。よく分からないけれど、ちょっと疲れた私が座り込めば、子グリフォンたちがそれぞれ口を開いた。

 レマは契約が嬉しいと楽しそうで、ルマはレイマーと同じようになりたいといい、ルミハは嬉しそうに自己紹介をし、ユインは本当に聞こえているのかと問いかけている。



 可愛い子グリフォンたちに私はそれぞれ返事を返すのだった。


「ぐるぐるぐるぅ?(何か困っていることとかない?)」

「……服、がない」



 しばらく言葉が通じる、嬉しいとわちゃわちゃしていたのだけど、ユインに一つのことを問いかけられた。ここでの生活で何か困ったことはないか、と聞かれて最近悩んできたことを話す。

 魔物たちは洋服なんて着ない。でも私は裸でいるわけにもいかない。捨てられた時に着ていた服しかないからそろそろ着替えがほしくなってきていた。



 そういえば、

「ぐるぐるぐる(持ってきてもらおう!)」

 と、そういわれたけど誰に持ってきてもらうつもりなんだろう。






 ――――少女と、グリフォン 3

 (多分、神子な少女はグリフォンと馬さんと契約を結びました)




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