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少女と、前触れ 2

 村の外から、来訪者が来たという話を聞いて私はちょっとびっくりした。誰が来たのだろうかと気になった。周りでは、そのことについて皆が口々に話題にしていた。



 私の前には、ガイアスが居る。



「ガイアス、私、見に、行きたい」

「ちょっとここにいたままでいて」

「ど、して?」

「今、来ているのって他の獣人の村の人たちなんだ。怖い雰囲気だったし、人間にいい感情持ってないかもしれなくて……」

「そう、なんだ……」

「だからランさんにも出てこないようにいってある。父さんが用件をきちんと聞いてからになるって」

「こうして、くる、珍しい?」

「交流はあるけれど、決まった期間で来るようになってたから今の時期に来るのは珍しいよ。それに様子がおかしいから、何かあったのかもしれない」



 ガイアスの話を、私は頭の中で整理する。

 ここは狼の獣人の村。皆は、他の獣人の村とも交流をしている。彼らとの交流はあるけれども、今の時期に来るのは珍しい。それでいて様子がおかしい。



 その獣人たちは、人間にいい感情を持っていないかもしれない。だから、用件をちゃんと聞いてからアトスさんが私が会ってもいいって判断したら会えるってことなのかな。



 それにしても、他の獣人の村か。

 それも狼、なのかな。



「そこも、おお、かみ?」

「いや、そこは猫の獣人の村だ。一番近いところにある獣人の村なんだ。まぁ、近いといってもそれなりに距離はあるけど」

「猫!」



 猫の耳と尻尾がついているのだろうか、とちょっとわくわくしてしまった。



「レルンダは……、耳と尻尾好きだな」

「ん。人間、ない。もふもふ、いい」



 人間にはないもふもふとした耳と尻尾は良いものだと私は思う。でも触るのは特別な意味って最初に触ってしまった時聞いたから見るだけで我慢している。



「ねこ、以外、いる?」

「いると思うけど、近くに村がないから俺は猫の獣人以外には会ったことはない。父さんなら色々な獣人に会ったことあると思うけど」



 私は生まれ育った村にいた頃、人間しか見たことなかったけど色々いるのだなと思った。それにしてもその猫の獣人の村の人たちは様子がおかしいということだけど、どうしたんだろう。

 正直どういうことが起こったら、他の村の人たちがこの村にやってくるのかなどが正直わからない。

 アトスさんは、何を話しているのだろうか。



「レルンダ、どうした?」

「かんがえ、てた」



 色々考えて無言になってしまった私にガイアスが問いかける。そう、私は考えている。



「やってきた人たちのこと?」

「ん」

「何か、心配しているのか?」

「ちょっと」



 何か、変わるのではないかという思いが湧いてきた。

 生まれ育った村での、私の暮らしが変わったのも神官がやってきたから。神官がやってきて、神子がここにいるはずだって。それで両親は姉を神子として、私を捨てた。



 出会いは、変化を伴う。誰かが来ること、誰かと出会うこと。それは、何かが変わっていく気がする。

 だってシーフォと出会って、グリフォンたちと出会って。のびのびとした生活が始まって。

 グリフォン達と暮らしていたから、アトスさんやガイアスたちと出会えて獣人の村での生活が始まって。



 誰かが来ること、誰かと出会うこと、それが変化に繋がっていっているんだなぁって捨てられてから色々経験して思うようになった。



 ……また、変わるのかな。



 良いことも、悪いことも、来るんだなと思うから、ちょっと不安。だって楽しいから。心がぽかぽかして、嬉しくて。そんな日々が来ること、想像なんてしていなかった。大好きな人たちが周りにいることが、こんなに楽しいなんて思ってもいなかった。楽しくて、嬉しい生活が、どう変わっていくんだろうって。


 ちょっと不安、だなって思う。



「なにか、かわる?」

「変わらないと思うけど」

「そう?」

「というか、何か変わったとしても心配することはない! レルンダが困っているなら助けるから」

「ん、ありがと」



 嬉しいなと思う。不安はあるけれど、ガイアスが大丈夫だって言ってくれるだけで大丈夫なんだってそんな気になる。

 何か、変化があっても大好きな人たちがい���のならば大丈夫なのではないかってそんな前向きな気持ちになれる。


 暖かい。胸の内が、凄く暖かい気持ちになる。



「猫の、人たち、どしたの、かな」

「どうしたんだろうな。悪いことではなければいいけど」

「悲しい、こと、やだ」

「だな。悲しいことが起こっていたら嫌だよな。笑って過ごせたらそれでいいのになー」

「ね」



 悲しいこと、嫌だなって私もガイアスと同じく思う。悲しいより、楽しい方が絶対にいいと思う。悲しい顔より、笑っている顔を見たいって思う。



「悲しい、ことなら……」


 私は思ったままの言葉を口にする。



「笑う、したい、ね」

「悲しい顔してたら笑えるようにしたい? そうだな、それがいいな。暗い顔しているから、笑えるようになってくれたらいいな」

「ん」



 心配はあるけど、やってきた猫の獣人たちのことを考えて、悲しいなら笑えるように出来たらいいなってそんな風に思った。




 ――――少女と、前触れ 2

 (多分、神子な少女は村の外から来た人たちについて少年と会話を交わす)




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