少女と、祈り
4月29日 二話目
神様へのお祈りする建物の中にたった一人でいる。建物を作ってもらってからは毎日、お祈りすることが日課になった。
私が神子ではなくても、神子であったとしても、お祈りすることは悪いことではないと思うから。今日も平穏に過ごさせてくれてありがとう、って気持ちを込めて一日の終わりにお祈りしている。私に加護を与えているかもしれない神様、ありがとうって。ちょっとした小さな祭壇も作ってくれたからそこにお祈りをしている。
子グリフォンたちも、何だか一緒にお祈りしてくれている。私の真似をしているみたい。
あと私は、他の二つの建物でもお祈りしている。精霊へのお祈りをする場所と、グリフォンたちへのお祈りをする場所にも行く。といっても神様にお祈りするよりも頻度は少ないけれど。
精霊へのお祈りをする建物は、以前のエルフの村で作られていたようにいくつもの木の上に重なるように出来ている。中にも入らせてもらったけれど、中に精霊の絵とか壁に描かれていたり凄くこっていて、こういうのが作れるなんてエルフの人たち凄いと思った。私も同じように絵を描けないかなと思ったけどあんなに上手くはかけなかった。
絵が上手な人、凄いと思った。凄いと口にしたら私の絵もかいてくれて、それを自慢したら他の人も書いてほしいといって、そのエルフさん、すごく絵をいっぱい書かなきゃになってしまってちょっと悪いことしてしまったと思った。本人は自分の絵が求められて嬉しいっていってたけど。
グリフォンたちへのお祈りをする部屋にはグリフォンたちの大きな置物がある。これは獣人の人たちの手作りだ。ちなみに、これは私が契約しているグリフォンたち全員分の置物だ。だからレイマーの置物は、金ぴかだ。レイマーたち、大人グリフォンはちょっと恥ずかしがってた。でも子グリフォンたちははしゃいでいた。
精霊へのお祈りをする場所では、精霊達早く元気になってね、仲良くしてねってことを祈った。
グリフォンたちへのお祈りをする場所では、これからもよろしくね、私と契約をしてくれてありがとうって祈った。
お祈りする場所は、三つもあるけれど、それぞれ特に決まった呼び名はない。エルフの人たちは「精霊様へ祈りをささげる場所」といっているし、獣人の皆は「グリフォン様へのお祈りをする場所」といっているし、私も「神様にお祈りする場所」といっている。もっとちゃんとした呼び名作った方がいいかもしれないと思った。
獣人の村にいた頃のように、私は皆のお手伝いをしながら過ごしている。決まった仕事というのが私には現状なかった。でも精霊樹へ魔力を込めることは一つの仕事と言えるかもしれないけれど、それ以外には決まった仕事はない。
ガイアスは、私と年は変わらないけど狩りにとても貢献している。私も一緒に狩りにいったりもする。でもまだ、私は魔法が上手く使えないのもあってちゃんと貢献出来ない。薬草園ではゼシヒさんやエルフの村で薬草園を担当していたエルフさんたちのお手伝いをする。洋服を作るのを手伝ったりもする。だけど、皆ほどうまくは出来ない。これが私の仕事だって、そういえるものが私にはないなぁと思うとちょっとだけ悩んでしまった。
ランさんはこの村でどんなルールが必要かとかドングさんたちと一生懸命話し合って、そのことを文章をしてまとめたりとか、様々なことを記録として残そうとしている。だからこの村で紙を作りたいと、ランさん一生懸命ずっと試行錯誤している。今まで必要なことは元いた場所から持ってきていた紙とかに書いていたらしい。まだそのあまりもあるらしいけど、ここでずっと過ごすなら紙が欲しいんだって。凄い頑張ってるみたい。
私は……何が出来るだろうか。一番何をしたらいいだろうか。村づくりは大体できてきたってだけだからこれから建物を増やしたりとか色々するだろうけど、何だか皆それぞれ新しく歩みだしているのに私は村のために何が出来るんだろうかって考えるとすぐに思いつかない。
最終的な目標は、私たちが過ごしやすい場所を作ること。逃げなくて済むように力をつけること。だからこそ、風の魔法の練習をしたりはしている。けど、何だか少しだけもどかしい気持ちになって、焦ってしまいそうになる。
今、とても穏やかで、優しい日々を過ごしている。
でも獣人の村ではずっと続いてほしかった日々は、突然終わった。
でもエルフの村では魔物という脅威が穏やかな日々の裏でいた。
―――脅威が訪れる前に逃げなくて済むような穏やかな日々が訪れるか、それを期待できるかというと、そんなに現実は甘くないと思う。
そう感じるから焦りが出てきて、私が神様に毎日お祈りをするようになったのはその焦りを落ち着かせるためっていうちょっと自分勝手な理由も入っている。毎日、神様に今日の出来事の報告をしたり、今日も楽しく過ごさせてくれてありがとうって、お祈りをする。そしたらちょっとだけ心が落ち着く。いっぱい神様に話しかけて、お祈りをして、また頑張ろうって気合いを入れる。
それが最近の私の日常だ。
―――少女と、祈り
(多分、神子な少女は神様へ祈りをささげる。毎日今日の出来事を告げ、ありがとうの気持ちを伝える。そして心を落ち着かせるのだ)
これでついに百話です。