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暴力表現があります。
目の前で繰り広げられる魔術師の戦いは、隊長様が圧倒的に不利でした。
何せ私を庇いながら動かなければならないのです。お荷物過ぎて泣けて来ます。
しかし何も出来ない私はこうして守られながら見守る事しか出来ません。
隊長様はルシアン様が放った稲妻を交わし、炎で迎え討たれます。
しかし横手から影が黒い槍の様な物を投げ付けて来た為、攻撃は逸れてしまいました。
「クソッ…」
先程から隊長様の呼吸が荒くなって来ています。二対一なんて卑怯ですよ!!
「グ…!!」
「かはっ…」
隊長様が放った炎がついに二人に直撃しました!!隊長様は攻撃の手を休める事なく次々と相手にダメージを与えていかれます。
隊長様……とても楽しそうですね。
「遊んでいる時間は無い。早く死ね」
『えぇっ!?こ、殺してしまうのですか!?それはいけませんよ!!』
「あぁそうだった。その前に術を解いておけよ?」
『そうではなくて!!』
私が止めようとした時、倒れ込んだルシアン様が楽しそうに笑い出しました。
「…何が可笑しい」
「君が馬鹿だからさ!!…僕が術を掛けたと思っているんだから!」
ルシアン様の言葉に隊長様がピクリと片方の眉を上げます。
「僕は力を貸しただけ」
「どう言う事だ!?」
「僕が禁忌を犯したのは死んだセイラムを蘇らせた事だけだ」
「な、何だと!?」
それでは、この城に掛けられた術は一体誰の仕業だと言うのでしょう!?
『きゃぁ!?』
突然身体が後ろへ飛ばされ、地面に転がります。
私達がルシアン様の言葉に気を取られている間にあの影が背後に迫っている事に気付けなかったのです。
「ベル!!」
直ぐさま隊長様が駆け寄ろうとされましたが、私の首筋に回された影の手を見てぴたりと動きを止められました。
その一瞬の隙にルシアン様が隊長様に術を掛けられます。
身体中に巻き付いた鎖には鋭い棘が付いており、動く度に身体へ食い込みます。
「…っ!!」
「捕まえた……魔術封じの鎖だ…君はもう無力な人間だ。苦しんで死ね」
ルシアン様がニヤリと笑われました。
『隊長様!!』
「…オ前モ、スグ二後ヲ追ワセテヤル」
影が私に触れた途端、頭の中に怨嗟の声が響き渡りました。
ーーコイツのせいで俺の人生が終わったんだ!!憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!殺してやる!!!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!ーー
『い、いやぁっ!!』
恐怖に駆られて振り払おうとしましたが、身体が動きません。
「クソッ…ベル!!」
隊長様が無理矢理動かそうとする度に、その棘が身体中を傷付けます。ドクドクと流れ出る、赤い………
私はハッとして叫びました。そんな事をしては隊長様が!!
『止めて!!動かないで!!!』
私は必死に身体を動かそうとしましたが、思うように行きません。
「死、ネ!!」
首に巻き付いた影が私の呼吸を奪います。
『う………』
恐怖、混乱、そして苦しみに私の頬を涙が伝います。
歪む視界に血塗れの隊長様が映ります。
助けなきゃ……
でも身体が動かない…
あぁ…
もう、だ…め……
バーーーン!!!
突然大きな音がして、私の呼吸を奪っていた物が塵となって消失しました。
私はむせ込みながら息を吸い込みます。
た…助かった…の?
見上げた先に立つ人物は肩を怒らせながら怒鳴りました。
「何をしている!!」