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本日は舞踏会当日。

早めの昼食を食べて準備を始めます。

ちなみに準備して下さる方の中にアリアさんはいません。


アリアさんの処分は、三ヶ月の減俸だそうです。今回は高額なドレスに被害があった為にこのような処置となったそうです。

ちなみに貴族様のお屋敷で同様の事をしたらこの程度では済みません。恐らくアリアさんご自身が貴族だという事と、リューク様が上手く取り計らって下さったのではないかと思っています。

当のアリアさんは気分が優れないからと暫くお休みされているのです。大丈夫でしょうか…。早く戻って来て欲しいです。




…なので今回はアリアさん抜きで進めて行きます。




舞踏会のドレスは、針子さん達が魂を込めて作り直して下さいました。出来上がった瞬間力尽きられたそうですよ…。本当にありがとうございました!!



そのドレスは真紅の美しい布で仕立てられています。胸元は浅く肩口から袖にかけてふんわりとした広がりを持たせており、貧相な私の身体も目立たないようになっています。そして対照的に胸元から足元にかけては、体に沿うような緩やかな広がりを見せており、華美な装いを好まない私にピッタリの可愛らしいドレスに仕上がっております。


本日の髪型は全て纏めてアップにしております。これはオリビアさんの希望です。

『わぁ〜…すごい!!!』

全てが終わった私から感嘆の溜息が溢れます。これは………本当に……

「お似合い、です…」

「とてもお美しいですよ!!やはり赤もお似合いですね!!」

お二人が嬉しそうに褒めて下さいます。嬉しいです。でも皆さんの力があってこそです!!

『ありがとうございます』

しっかり口に乗せて感謝の気持ちを伝えます。私は何も返す事が出来ませんのに…。

「そんな顔をなさらないで下さい。私達はお優しいベル様にお支えする事を嬉しく思っています」

「…他の人…我が儘です」

「ベル様はお会いした時から現在まで、私達に親切に接して下さいます。それが本当に嬉しいのです」

「ベル様、好きですから…」

お二人はそう言ってニッコリ笑って下さいました。その笑顔の優しさに胸が温かくなります。

『あ…ありがとうございます!!私も皆さんが大好きです!!!』






気分がほっこりした所で隊長様が来て下さったと報せが入りました。なんと、今回も隊長様がエスコート役をして下さるのです。

アルフレッド様が最後まで「何故私のパートナーでは駄目なのだ」と拗ねて……いえ、提案されていましたが、リューク様が「君のパートナーになったら余計にベルの立場が微妙になるでしょ?それにベルは踊れないんだから」と仰って、最終的には納得されました。


そう。主役級の方々にはダンスを踊らねばならないというお仕事があるのです。


私も前回参加させて頂いて、優雅に踊るご令嬢達と鮮やかな足捌きでリードされる紳士を見て素敵だな〜とか私もいつか…とかは思いましたよ?でもね、実際に踊るとなると別なのですよ。

なんせ一曲を踊り切るまでの数分間、姿勢を気にしつつステップを踏むなんてどんな玄人なんですか!?って感じです。

私は自慢じゃないですが運動とは相性が悪いんですよ。

一度アルフレッド様に教えて頂いた事がありましたが、あの時はもう……思い出したくもありません。アルフレッド様も最後には「踊れなくても良いんだから」と慰めて下さいましたよ。…えぇ。別に気にしてなどいませんよ?目からしょっぱい汗なんて流しておりませんよ?






「赤か…」

私を見た隊長様がポツリと言われます。どこか変でしょうか?

「いや……良く似合っている」

あ、ありがとうございます。その様に褒められたのは初めてで少し気恥ずかしいです。

「では、行くか」

そう言って前回同様私の手を腕にかけて歩き出されました。

「今日は必ずお前の側にいるからな。安心しろ」

はい。大丈夫です!信じていますので。

力強く頷いた私に微笑みを落とし、以前見た時は不安で余裕が無かったドアの前までやって来ました。

今回も騎士様が両脇を護られ、前回以上にポカンとした表情で私達を見つめられています。ですが今日の私はその視線にも焦る事はありませんよ。だって隊長様が似合うって言って下さいましたからね!!


騎士様に微笑んで会釈をしてから隊長様を見上げます。


優しい黄金色の瞳が私を見返しています。






大丈夫。

だって隊長様が側にいて下さるのですから。



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