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「ベルは華美な物より可憐な物の方が似合うな」
「にしてもシンプル過ぎないか?これじゃぁ普段着と変わらん」
「可愛いじゃないか」
「まぁ…飾り立てるよりはマシだろうな」
「おいアレク!お前ベルに失礼だぞ!!」
「はぁ??俺はこれでも褒めてるんだよ」
「どこがだっ!!素直に可愛いと言え!!」
「まぁまぁ二人共、落ち着きなよ〜。ベルが困ってるよ」
本日は先日仕立てて頂いたドレスの試着会です。何故ドレスかと言うと、数日後にアルフレッド様がご帰国されるにあたっての舞踏会が催され、それに私も参加させて頂く為です。私なんかが参加させて頂く訳には!!とお断りしたのです。しかしアルフレッド様にどうしても!とお願いされ、断りきれなかったのです…。
アルフレッド様はとても優しくて大好きなのですが、時々過保護と言うか強引と言うか甘過ぎると言うか………なのですよ。
例えば、私が小さな段差で躓きかけたのを見ると「これは撤去するべきだ!!」と立腹されたり、私がお茶に咽せただけで「医者を呼ばねば!」と走り出そうとされたり……先日など文机に腕をぶつけた私を見て「ここは危険だからやはりベルをクシャナ王国に連れて行く!!」と真剣な顔でリューク様にお話しされていました。
さすがのリューク様も困り顔で「ちょっと落ち着きなよ…」と溜息を吐かれていましたね。
「すまない…君を困らせるつもりはなかったんだ。ベルは何を着ても可愛いよ」
「何を着てもは言い過ぎだろ」
「で!!!!これにするの?」
再び言い争いになりそうなお二人の会話を強制終了させ、リューク様に問われます。
多分そうだと思いますよ。でも私は良く分からないので……リリアンさん?
「こちらはお茶会用でございます。舞踏会用は当日のお楽しみにしておいて下さい」
え?まだあるんですか!?お金の無駄では……
「それは楽しみだ。しかしベルは何を着ても良く似合うからね」
『あ…ありがとうございます』
「しかし…やはりベルをここに残しておくのは心配だ」
「アレクと僕が居るでしょ?それにリリアン達も側に居るんだし諦めなよ」
「とっとと仕事終わらせりゃすぐに会えるだろ」
「そうなんだが……やはり今回は別の者に任せようかとも思うんだ…」
隊長様とリューク様のお言葉に項垂れるアルフレッド様。
お…思いが重いです……。しかし私なんかがここまで大切に思って頂けるなんて素直に嬉しいです。
ふとリューク様の視線を感じてそちらを見ると、何かを訴えていらっしゃいます。何でしょう?
(「笑顔で仕事頑張れって言ってやって!」)
あ、はい?分かりました。
『アルフレッド様、ありがとうございます。ご帰国されるのは寂しいですが…お身体に気を付けて、お仕事頑張って下さいね』
ニッコリ笑ってそう伝えると、途端にアルフレッド様がシャキッとされました。
「ベルがそう言ってくれるなら私は頑張るよ!!そしてすぐにでも終わらせて戻って来るから待っていてくれ!!」
再びウキウキとドレスの件についてリリアンと話し出されるアルフレッド様。その様子を見て隊長様とリューク様が大きく溜息を吐かれました。
「これは…重症だな」
「本当だよ……ここまでになるなんて…アレクも災難だねぇ」
「あぁ…全くだよ」
『何が災難なのですか?』
「ん?…あぁ、アルのシスコンが大変だねって話」
『?????』
会話について行けずに首を傾げる私にリューク様が笑われます。
「ほんと、アレクは大変だぁ〜」