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あれから一週間が経ちました。
三人の女性達は私付きの侍女さんとしてあのままお世話をして下さっています。
私はしばらくこちらで過ごさねばならない事情があるのだと説明を受け、それではせめて私も侍女として働かせて欲しいと願い出たのですが「ベル様が働かれるという事は、誰かに辞めてもらわねばなりません…」と言われてしまいました。その様な事は本意ではありませんので、とても居たたまれませんがお世話になっております。
「本日もとても可憐ですわ」
小柄で大きな瞳が印象的な美少女はアリアさん。
「…(コックリ)」
無口ですが中性的な魅力溢れるスレンダー美女がオリビアさん。
「素敵ですよ」
目元がキツイ印象ですが、笑顔がとても柔らかいリリアンさん。
お三方はとても親切で丁寧なのですが、どうも私を着せ替えて楽しまれている様な気がします。
「明日はどちらの順番でした?」
「リリアン…」
「むふふっ、ふふふふっ…」
…いえ、楽しまれているのでしょう。
着飾って頂くのは素直に嬉しいのですが、本当に…本当に居たたまれませんよ…。だって私よりも皆さんの方がお世話されて当たり前のご身分をお持ちでしょうし。それに比べて私はただの書類上の貴族ですから。
それにしても毎日何もする事がありません。こんなに何もしないで過ごしたのは産まれて初めてですよ。
一度外へ出たいと伝えた時、リリアンさんやオリビアさんが困った顔をされたのでそれ以来大人しくしています。きっと何か出ては不都合な事があるのでしょうね。
部屋に篭って何かする事と言ったら着飾って読書、それから読書して着飾って、そして…読書……ですね。
あー……暇。ひま。……ヒマですってぇ!!!私はジッとしているのは大嫌いなんですよ!!!仕事プリーズです!!
暇を持て余していた所にリューク様とアルフレッド様が会いに来て下さいました。
珍しいお菓子やお花をお土産に取り留めのない話をしただけですが、私はとても嬉しかったです。
優しい笑顔を見るとほんわか温かな気持ちになりますよ。あ、リューク様は別です。リューク様は楽しい方ですが、何となく笑顔の裏に何かある気がしてビクリとする時があるのです。
お二人が来られた時に私はいつまでここにお世話になるのですか?と尋ねました。正直私がここに居る理由が分からなかったからです。
リューク様はもう少し我慢してね、と申し訳なさそうに仰っていたのでそれ以上は何も言いませんでした。
きっと私がここに居る事には何か意味があるのでしょう。せめて教えて頂きたいですが、それも無理な理由があるのかもしれません。
ならば私はもうしばらくここでこうして居ようと思います。
お世話をして下さるリリアンさん達には申し訳ないのですが……。
それ以降は特に変わりのない読書三昧の日々が続いております。
隊長様は、あの日以降会っておりません。