19
誤字訂正させて頂きました。
ご指摘ありがとうございます^ ^
「騒がせちゃってごめんね?」
「お前のせいだバカ!」
「病み上がりに騒がせてすまなかった。全ては馬鹿の策略に嵌ってしまった私達のせいだ」
「バカバカって酷いなぁ〜…イテッ!!」
アルフレッド様がリューク様の頭を叩かれます。いや…ですからその方は王太子殿下ですよね?
私はあれからニ、三日寝て起きてを繰り返し、ようやく通常に生活出来るまでに回復する事が出来ました。
そして本日はお三方が私に謝罪を、とお越しになられているのです。ちなみに私の目の前にリューク様。そしてその隣にアルフレッド様で、私の隣が隊長様です。
「随分顔色が良くなったね?これなら話も出来るかな?」
『あ、はい。もう平気です。ご迷惑をおかけしました』
「そんなに畏まらなくても良いって言ったでしよ?迷惑をかけたのは僕らなんだし」
「…僕“ら”?」
「あ……いや、僕…だし…」
隊長様の一睨みで小さくなるリューク様。本当に小さな子供のようですね。
そんな様子を見て思わずクスクスと笑ってしまいます。
「で、それは申し訳なく思ってるんだけど……とにかく、本題に入るね」
リューク様は途端に真剣な表情で告げられました。私も姿勢を正します。
「今回君を王宮で保護する事になったのは話したね?でもその経緯について…君が公爵家で襲われかけた後の事を話すよ?…平気?」
「襲われかけた」と告げられた時つい身体が強張ってしまいました。でも、大丈夫です。落ち着いて…。私はもう大丈夫。
腕輪に手をやりながら真っ直ぐリューク様を見つめ、ゆっくりと頷くと気遣わしげな瞳が満足そうに輝きました。
「よし。なら続けるよ」
リューク様によると、セイラム様は公爵家やご自身の屋敷で働く使用人さんを手篭めにされていたとの事。
それだけではよくある話で収まるそうですが(そうなのですか!?)それだけではなく、その方達を隣国へと売り飛ばしていたそうなのです。何て酷い男でしょう!!!あんな男など、呼び捨てで呼んでやりますよ!!
公爵家の若い女性が次々と辞めて行かれていたのはそんな理由があったのですね…私は呑気にセイラムが嫌だからだと思っていました。…本当に申し訳なく思います。
アルフレッド様は売られた方々を出来るだけ保護し、こちらに帰されていると仰っていました。少しでも助けられた方がいらっしゃると聞いて救われた気持ちです。
以前から人身売買の実態を調査されていたリューク様達は、セイラムを監視し今回の出来事を機に捕縛されたのだとか。
諸悪の根源が捕まって本当に良かったです。私以上に恐ろしい思いをした女性が数多くいらっしゃるというのが本当に居たたまれません。
私にはその女性達が幸せになりますように…と願う事しか出来ません。
一通り説明が終わると公務の時間だからとリューク様が退室され、アルフレッド様も所用があると一緒に出て行かれました。
残されたのは隊長様と私のみ。あれ?先程まで女性達が給仕して下さっていたのに…。
「………」
「………」
はい、無言です。
何ですかね、これは激しく既視感を覚えますよ。
しかし不思議と居心地は悪くありません。何故ですかね?
「…すまなかった」
隊長様がポツリと零されました。
「お前を助けるのが遅くなってしまった…」
そう告げられた隊長様はとても苦しそうで…私は気付いた時には隊長様の腕に手を当てていました。
そんな事言わないで下さい!私は嬉しかったんです。あの時隊長様が来て下さらなかったら私はどうなっていた事か。
それに…
(今度コソ助ケニ来テクレタ!!)
…今度こそ?
それってどう言う事でしょう?
「舞踏会の時に約束したのに…また恐い思いをさせてしまった…本当に不甲斐ない」
隊長様はこの間の事を仰っているのですね。私もそれは忘れていたのですが…
確かに恐ろしい体験でした。
しかし隊長様に非はありませんよ!!
必死に首を振る私の頬に隊長様がそっと触れました。華奢な見た目からは想像出来なかった男らしい手にドキリとします。
「傷…残らなくて良かった…」
隊長様は私の頬に手を当てたままで、黄金色の瞳で私を捉えます。
「ベル…」
名前を呼ばれた瞬間、私の奥に不思議な感情が芽生えました。どこか切ないような、嬉しいような…
アルフレッド様に頭を撫でて頂いた時と似ていますが、それとは少し違うような……
「俺は……」
『は、はい?…何ですか?』
隊長様はふいっと視線を外し、窓の外を見ると立ち上がられました。
「いや……長居した。…じゃぁまたな」
隊長様は私の頭をひと撫ですると、そう言い置いて出て行かれました。