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閑話・アレクセイ4

ドアを潜り抜けてすぐにルシアンに捕まった。気付かない振りをする俺に隣から困惑が伝わる。しかしアイツは面倒だ。


「ちょっ、ちょっと…アレクセイ!?」

ルシアンが追い縋って来た。…チッ、鬱陶しい。

「いやぁ、まさか君に出会えるなんて驚いたよ〜。それにこんなに可愛らしいバンビちゃんなんてどこで見つけてきたんだい?あっ、僕はルシアンって言うんだ。よろしくね?バンビちゃん」

…これだよ。

コイツは女が大好きだ。更に言うと人の女を寝取るのが好きな酔狂な男。

それでも干されないのはコイツの話術の才能か。



早速彼女の腕を取って口付けている。自分で言う所の極上の笑みを浮かべているが…彼女は確実に嫌がっているな。

にしても、何時まで手を握り締めてるんだこの変態。困ってるのが分からんのか。



「で?可憐なバンビちゃんの名前を教えて頂いても?」

「…お前に教える義理はない」

「アレクセイならそう言うと思ったよ〜。でも、僕はこのバンビちゃんに聞いてるんだ。ね?名前はなぁに?」



彼女は慌てて俺を見上げて来た。

成る程。俺に紹介をと思っているんだな。

…しかし面倒だ。


「コレもお前に教える義理はないそうだ」


言った途端の彼女の焦り顏…。

ククッ、面白い。



慌てて首を振る彼女を背後に隠し、ルシアンに言ってやる。


「顔を見るのも嫌だそうだ」


瞬間ルシアンは虚を突かれたように固まった。その間に絶句している彼女を連れて立ち去る。



ルシアンめ…

彼女に手を出すなど馬鹿な奴だ。

彼女で遊んで良いのは俺だけだ。


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