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窓の外の小鳥の囀りで目が覚めました。
布団の中で大きく伸びをしてから身体を起こします。
さて、今日も一日が始まりますね。
まずは手早く身支度を整えてから裏庭の井戸で水を汲んで、それから使用人と一緒に朝食の支度。
あ。飼い犬のジョンのご飯も忘れてはいけません。この子はとても賢いので私や使用人の方々にとても懐いています。
可愛いです。
癒しですね。
食事の支度が整ったら、今度は奥様とお嬢様を起こさねばなりません。
これがなかなか一苦労。
寝起きの悪い奥様達は二度寝のプロです。なのに朝食の時間に遅れると怒られてしまいます。
理不尽ですね。
なので、私もしっかり叩き起こさせて頂きますよ。
「起きてるわよ!!!」
そう言ってギロリと睨みながら枕を投げ飛ばされればもう大丈夫です。
お二人ともが同じ反応なのは、遺伝というものでしょうか。美しい顔が台無しすぎて世の男性に見て頂きたいですね。
何にせよ、起きて頂けた事にホッとします。朝食が冷めたらまた叱られますからね。
その後は弟のアルト様とジョンのご飯をあげます。
「おはよう」
ニッコリと無邪気に微笑まれるアルト様は今年7歳になられました。青い瞳にふわふわの金髪が今日も眩しいです。私や使用人の方々にも親切にして下さる素晴らしい方。
お二方と血が繋がっているなんて信じられません。突然変異ですかね。
奥様達三人の朝食が済むと、使用人の方々と一緒に食事を摂ります。
彼らの他愛もないお喋りに耳を傾ける間も無く料理を流し込み、すぐに次の仕事に取り掛かります。
今日は玄関ホールの掃除があります。夕方までに終わらせなければ夕食が頂けなくなりますからね。俄然ヤル気ですよ。
モップを取りに行こうとした所に奥様からお呼びがかかってしまいました。
慌ててお部屋に向かうと「今夜は王宮の舞踏会なのよ。キャシーも連れて行くからね。早くして頂戴」との事。
そんな事聞いていなかった私や執事さんは大慌てで出仕の支度をし、なんとか間に合いましたよ。
そんな大切な事、なんで当日に言うんですかね。
ドレスの支度とかどうしたんですか?
あ、それは事前に準備してたんですね。
私も執事さんも知りませんでしたよ。
キャサリンお嬢様と、侍女として同行する事となった私達三人を乗せた馬車の中はすごく賑やかです。
なんでも、我がウェルネス王国の王太子様はとてもイケメンで結婚適齢期。今日は隣国に遊学なさっていた王太子様があちらの王子殿下を連れて帰国されたそうで、その歓迎の式典だそうです。
奥様はキャサリンお嬢様を王太子妃にとお考えのようで、お嬢様もノリノリのご様子。
確かにお嬢様は奥様とそっくりな美貌の持ち主。黒髪に口元のホクロがまだ17歳だというのに大人の色気を感じさせます。
プロポーションもバッチリで、出るとこ出てます。羨ましいです。
「殿下もきっとキャシーを気に入るわ」
「そう…かしら?」
「えぇ。キャシーはとても美しいから間違いないわ。これで貴女も未来の王太子妃よ」
「王太子妃……そうね、わたくしも覚悟を決めなければ……しっかりと彼を支えて差し上げますわ」
決意の光を灯した瞳がメラメラと燃えるようです。
「でもね、キャシー?いくら王太子様が望まれても貴女が嫌なら断っても構わないのよ?」
「そんなっ!!……わたくし、王太子妃として頑張ると決めましたから!」
「あぁっ…!!キャシー!!!何て素晴らしい娘!!」
「それに、彼ならわたくしを幸せにしてくれると確信しておりますの!」
「もちろんそうね!」
馬車の中は、とても賑やかです。