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アルフレッド様の笑いが収まった後、改めて自己紹介をさせて頂きました。


なんと、アルフレッド様は隣国の王太子殿下だったのですよ!!

その事実を隊長様から告げられた時は土下座せんばかりの勢いで謝らせて頂きました。いえ、むしろしようとしたのですけどアルフレッド様に止められてしまいました。とても優しい人です。本当なら不敬罪ですよ。





ついでとばかりに聞きたい事があったので、隊長様に質問させて頂きました。



『隊長様は魔術を使われますけど、魔術師様ですか?』



これにはアルフレッド様も呆れた顔をされておりました。何でですかね?変な事言ったつもりは無いのですが…。


「散々隊長って連呼しててそれか……俺は王太子の近衛隊長だ。前にも言っただろう」

『でも魔術を使われるではないですか』

「この世の中には魔術師でなくとも魔術を行使する奴は腐る程いる」

「…確かに世の中には魔力を持つものが大勢いる。私だって多少の魔力は持っているんだよ?しかし魔術師となれば別だ。魔力が一定値よりも高い者しか魔術師と呼ばれない。アレクは魔力が並外れて高いんだが、魔術師になるのを嫌がってな。元々戦闘力もズバ抜けていたから魔力無しでも隊長クラスにはなれただろうが……とにかくコイツはバカみたいに強いって事だ」


それではもしかして…と淡い期待が胸を過ぎります。

『私にもその魔力があったりするんですか?』

「いや、お前には魔力は感じない。そこら辺の雑草の方がまだマシだな」

ガーーン!!雑草以下……ですか…。少しくらいあるのではと思った自分がバカでした…。

「ここまで脆弱なのも珍しい。ひ弱な自分に自信を持て」

ニヤリと笑う隊長様を力無く睨み返します。ひ弱な事をどう自信を持つのですかぁ…。


「まぁそういじめるな。…おっと、こんな時間か。すまないが私は戻らねばならない。アレク、今度こそベルを頼んだぞ。……またな」

アルフレッド様はそう言って私の頭を撫でると立ち上がられます。

『あっ!ありがとうございました!!』

急いで頭を下げると、とても優しい笑顔を見せてから颯爽と出て行かれました。







「………」

「………」

残された私達に落ちる沈黙。

何だか気まずいです。何か…話題を……。

そうです!!言い忘れておりました。





『隊長様、私をここへ連れて来て下さり感謝しております。確かに嫌な事はありましたが、それ以上に素敵な夢を見させて頂きました。本当にありがとうございました』



私の書いた文字を感情の読めない表情で眺めてから、隊長様は口を開かれました。





「お前は弱い」






え…えぇ、えぇ。それは先程知りましたとも。どうせ雑草以下ですとも。それが何か?



「だから……手を貸せ」



はい?手がなんだと言うのですか?…あ、はい…手ですね。分かったから睨まないで下さいって。仕方ないですねぇ。



隊長様は私の左手を取ると聞き慣れない言葉を発せられました。これは王宮に連れて来られた時の言葉に似ています。

歌うような旋律が何故か懐かしい気持ちになりますね…。





左腕に微かな熱を感じたと思った瞬間。…そこには細い銀色の腕輪が出現していました。それはシンプルなデザインですが、良く見るととても手の込んだ意匠です。細かい花の模様が綺麗ですねぇ。所々にある小さな紫の石が可愛さを演出しています。これは…なかなか、いい仕事してますねぇ。


…って、アレ?抜けませんよ!?

ちょっと!!抜けませんって隊長様!!??



「それはお前にやる。…魔法で抜けなくしたから無駄だ」

えぇぇっ!?何ですかそれっ!?こんな高価そうな物っ……どうしてですか!?


「お前は本当に脆弱だ。それがあれば何かあった時に役に立つ」

それに…と隊長様は優しく笑われます。

「これで何時でもお前に会える」





え……それってどう言う…





「お前は遊び甲斐があって楽しいからな」






熱を持ち始めた頬が一気に青くなります。






私は、オモチャじゃありませーんっ!!!

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