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「どのドレスにしようかしらっ」
「キャシーはどれを着ても素敵よ」
「ダメですわっ!今日は殿下にプロポーズされますのよ?殿下に恥をかかせない為にも、しっかりと着飾らなければなりませんの」
「まぁ、キャシー!!貴女は本当に出来た娘だわ!!殿下も見る目がお有りだわ!」
本日は王宮の舞踏会の日。アドリアーノ公爵家のお二人は事更にお元気です。何と私が起こしに伺った時には既に起床されており、夢見る瞳で両手を握り締められていました。
ちなみにお二人共が同じ反応でしたよ。本当に血の繋がりを確信出来ますね。
うっとりとしながら朝食を召し上がられた後は、冒頭の台詞になります。あれがエンドレスで続いています。私がお茶の用意で訪れただけでも一五回は繰り返し言われていますね。
支度に付き合っている侍女さんなんかは、お二人に合わせて口パクで台詞を合わせるという技を披露されていますよ。
そしてまたうっとりしながら早めの昼食を召し上がられ、再びドレス選びです。今度は朝よりも真剣に。なんせ時間が迫ってますからね。目がギラギラしていて若干引きます。
ようやくドレスが選ばれ、髪を結って化粧が施されます。ここでも一悶着ありましたが面倒なので省きますね。
そして一仕事終えられたお二人は、侍女さんを引き連れて王宮へと向かわれました。今回私はお留守番です。残された私達にも仕事があるのですが、取りあえず休憩しましょう。
グッタリとした使用人さん達のために紅茶を入れ、一息つきます。皆さんお疲れ様でした。後は夜までノンビリしましょうね。
「おい、何寛いでんだよ」
聞こえるはずのない声にビクッとして、ゆっくりと振り返りました。いや…まさか、そんな……
「何だ?俺に会えてそんなに嬉しいか?」
サタン様降臨です。