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60:広大なる宇宙 ※

本話はヴィー視点となっております。

「こちらは最新版のバニラ宇宙帝国が属する銀河系全体の地図です」

 メモが動かした機械によって巨大な銀河を表した三次元地図が投影されます。


「で、これがバニラ宇宙帝国全体の地図になります」

「こうして見ると、バニラ宇宙帝国ですら銀河系全体から見ると本当に極々一部なんだよな。既に人の一生をかけても帝国全域を見て回る事も難しいくらいなのに。本当に宇宙は広い」

「銀河系全体の地図とバニラ宇宙帝国全体の地図を見比べた時に大抵の方が言われる感想ですね。メモも同じ感想ですが」

 そして、その極一部……1%にも満たない程度が薄い黄色で表示された上で、ズームインしていきます。

 これがバニラ宇宙帝国の全体図ですね。

 二人と同じ感想になりますが、本当に広いです。

 これだけ広いのであれば、バニラ宇宙帝国2500年ちょっとの歴史で千を超える恒星系を領域に収めた程度ではまだまだ開拓事業が止まらないと言う事実も、独自に宇宙にまで本格進出した他国とぶつかり合わないのも納得がいきます。

 なにせ、全方位が帝国の領域で囲まれている領域にすら、未開拓になっている場所が山のようにあるのですから。


 この未開拓の領域をどうするかは帝国にとっては悩みの種の一つなのですが……と、今はそれどころではありませんね。


「さて、メモたちが今居るグログロベータ星系がここで。帝星バニラシドがあるバニラシド星系はこちらですね」

「ふむふむ」

「そして、両者をあからさまな遠回りをせずに繋いでいる超光速航行の航路がこちらになります」

「なるほど」

 メモの操作でグログロベータ星系とバニラシド星系が赤い光になります。

 そして、二つの赤い光を結ぶように赤い線が引かれます。

 その光はまるで網の目のようにも見えます。


「幾つかのルートがあるみたいだが……グログロベータ星系からに限れば二本だけになるんだな」

「はい。サタ様の言う通りです。イカズノルート星系とフラレタンボ星系ですね」

 ただ、サタの言うようにグログロベータ星系から出ている光に限れば二本だけです。

 なので、次に選ぶ星系は必ずこのどちらかになるでしょう。


「えーと、イカズノルート星系は普通の星系みたいだな。人口は多いが、目立ったと言うか突出した産業が見当たらず、何処までも……うん、普通だな。ある意味では人材の産出こそが産業か? 超光速航行の航路の数も十分にあるから、交通の便は悪くなさそうだな」

「対するフラレタンボ星系は少々特異なSwに超光速航行の経路が二本しかない事が合わさって、歴史があるのに開拓は進んでいない星系のようですね。最近ではそれを逆手にとって、半端な開発状況を楽しめる田舎星系と言いますか、隠れ家的な立ち位置を目指しているようですが」

 さて、どちらを選びましょうか。

 サタとメモも自分で調べられる範囲で色々と調べては、その調べた結果を機械に投影してくれています。


 イカズノルート星系はいわゆる人口産出星系ですね。

 とにかく沢山の人間を抱える事で人材を確保。

 それらの人材が他の星系あるいは未知の星系へ向かう事で帝国を潤し、版図を広げると言う意味では重要な役目を持っている星系と言えるでしょう。


 対するフラレタンボ星系は……交通の便が悪さをしている上に特殊なSwのせいで開拓も進んでいない。

 帝国全体の隆盛から一歩引いていると言うか、遅れていると言うか、そんな感じの星系になってしまっていますね。

 閑散としているせいで、宙賊からも……いえ、そう言えば少し前に何かで名前を……。


「メモ。しばらく前にフラレタンボ星系の名前をニュースか何かで見たと思うのだけれど……」

「しばらくお待ちくださいヴィー様。見つかりました。宙賊による超光速航行の事故が発生していますね」

「あったなそう言えば。続報は?」

「……。宙賊はギガロク宙賊団の生き残りだったようですね。それらが正面衝突して大爆発を起こし、双方生存者は無し。衝突原因は解析中なのか、あるいは事情があるのか、秘匿されているようです」

「「……」」

 なんだか一気にフラレタンボ星系がきな臭くなったように思えます。

 と言いますか、私の未来視がフラレタンボ星系に行った方が帝国の利益にはなるのだけれども、相応の脅威も潜んでいるから覚悟を決めるようにと言った感じの未来を予測しています。


「フラレタンボ星系へ向かいましょうか。ギガロク宙賊団が関わっている案件なら、宇宙怪獣モドキの黒幕にも関係があるかもしれません。そうでなくとも秘匿情報があると言うのも気になります」

「かしこまりました。現地の情報を集められる範囲で集めておきます。それと諜報部隊にも連絡をしておきます」

「了解。フラレタンボ星系へ向かうための経路の確認と船の確保を始めておく」

「二人ともお願いします」

 フラレタンボ星系で何かが起きている。

 そしてそれは私たちが対応しなければいけないような何かである。

 私が言外にそう発したのを理解してくれたのか、メモもサタも直ぐに動き出してくれます。

 これならば数日中にはフラレタンボ星系に向かって出発することも出来るでしょう。


「では私は……」

「あ、ヴィー様。こちらの書類へのサインをお願いします」

「俺の方も決済を頼む」

「現地のグレード1(最低限)資料です」

「この船は駄目。こいつも微妙。これは……おっと違法品」

「あ、はい。それとサタは通報もしておくように」

 私は旅の責任者として書類作業と確認作業を始めました。

 さて、フラレタンボ星系では何が私たちを待っているのでしょうか……。

現実の銀河系の話になりますが。

直径は約10~20万光年、厚みは約1000光年。

恒星の数は2000億~4000億個とのことです。(Wikipediaより)


広すぎない?多すぎない?

SFよりSFしてますね……。

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