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59:決まっている航路

「さて、今後の予定について話し合いましょうか」

「だな」

「そうですね」

 ザクロックさんの料理を食べた日の夜。

 俺たちはホテルの一室に集まると、今後の活動について話し合う事にした。


「まず帝星バニラシドへと向かう事は確定します。帝星バニラシドにある諜報部隊の本部は帝国で一番情報が集まる場所ですから、例の宇宙怪獣モドキを生み出している黒幕についての情報もきっとあるはずです」

「敢えて通信を介さず、データ化もされていない資料もある。だったか?」

「ええそうです。グレードEx+とも呼ばれる特別な資料です。私も何が含まれているかは分かりませんが、希少な資料なのは確かです。また、それ以外にも帝国各地の諜報部隊が総力を挙げても解決出来なかった事件の資料などもある筈ですから、今の私たちが向かえば無駄足になる事だけはないでしょう」

「なるほど。表には出せなさそうだが、面白そうでもあるな」

 とりあえず今回のロケットコーンテロ未遂事件の解決直後に話をしたように、帝星バニラシドへ向かう事は確定している。

 帝星バニラシドは帝国の政治と経済の中心部であり、そうであるが故に情報の中心部でもある。

 なので、そこへ行けば、俺たちが遭遇した宇宙怪獣モドキについても何か分かるかもしれない。

 という事で、帝星バニラシドへ向かうのは確定している。


 ちなみにだが、俺の個人情報と言うか能力についての情報はグレードExに指定されているらしい。

 これは帝室関係者が申請を出さなければ閲覧できず、扱い方によっては帝国全体を揺るがしかねない情報だそうだ。

 となれば、グレードEx+はその更に上、帝室関係者が申請を出した上に、他の記録媒体への記録が許されず、ネットワーク上に上げることも許されない、そんなトンデモの秘匿情報になるそうだ。


「サタ様。これは確認ですが、先日の事件の際に用いた転移能力。アレは座標が分かっていれば別の星系へと飛ぶことも可能。そうでしたよね?」

「ああそうだ。だが、俺の転移で利用している座標は俺独自のものだから、座標取得に使えるような何か……生成や改造に関わるmodが欲しいところだな」

「なるほど。では、いざと言う時の退避手段と退避先を得る意味でも赴く価値はありそうですね」

「んー、帝星バニラシドなんて重要な場所に俺が転移できるようにすることの方が問題な気がするが……ああそうだ。安全性を考えるなら、一度は俺が現地に赴いた方がいいと思うし、相応の備えと言うか準備もあった方がいいぞ」

「それは当然のことですね」

 と、帝星バニラシドへ向かう理由が増えたな。

 今の俺の転移先は、安全な場所という事になると、セイリョー社かヒラトラツグミ星系のとある場所という事になるのだが、確かにこの二か所に加えて帝星バニラシドにも飛べるようになっていれば、ヴィリジアニラの安全性は格段に高まる。

 うん、護衛としては確かに確保しておきたい場所だ。


 しかし同時に、一般常識的な判断として、宇宙怪獣が帝星バニラシドの特定場所へ突然現れるような仕掛けを施していいのだろうかと言う思いがある。

 なので、その辺の思いを込めつつヴィリジアニラへと視線を向けるわけだが……。


「サタ、申請を出すだけ出してみましょう。却下されるならそれはそれです。もしかしたら皇帝陛下がサタの能力を利用するような事態に繋がる可能性もありますが……それは可能な限り私が阻止しますので」

「分かった。ヴィーがそう言うなら、俺は任せる」

 まあ、通れば儲けものと言うところか。

 ただ、ヴィリジアニラと皇帝陛下の関係性を考えると申請自体は通りそうな気がするな。

 それでも転移先として準備されるのは、万が一敵に利用された時のことを考えたような位置になるだろうけど。

 少なくとも俺ならそうする。


「さて、そう言うわけですので、帝星バニラシドへ向かう事は確定です。ただ、向かう事が確定しただけで、直行するような事はしません。既に諜報部隊全体への通達がされている以上、私たちの用事はそれぞれの星系での仕事を放棄してまで優先するものではありませんから」

「なんなら他の諜報部隊が危険な場所については探ってくれるので、彼らが持ち帰った情報も含めてまとめるぐらいでちょうどいいとメモは愚考します」

「……」

「ノーコメントで」

 なるほど、帝星バニラシドへは向かうが、その道中にある星系ではこれまで通りに仕事をすると。

 まあ、当然と言えば当然の話だな。

 俺たち自身はグレードEx+に相当するような情報を得ていないし、俺たちで無ければ黒幕に対抗できないと言うのは驕り。

 それを考えたら、地道に仕事をしつつ進んだ方が、結果的に帝国の治安に寄与するかもしれないな。


 なお、メモクシの言葉についてはノーコメントで。

 それって要するに、行方を絶つことも含めて情報という事で、少々どうかと思う発言ではあるしな。

 ヴィリジアニラも目を細めつつメモクシの方を見ているぐらいだし。


「……。コホン。では、問題は帝星バニラシドへどういうルートで向かうかを検討しましょうか。メモ」

「はい、ヴィー様」

 さて、ある意味ではここからが本題だな。

 ヴィリジアニラの言葉を受けて、メモクシが帝国全体の地図を出した。

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