49:魔改造ロケットコーン
『サタ。対処を優先しつつ、説明できる範囲で説明してもらえますか? サタの能力なら、収穫した時点でロケットコーンのmod構成を割れていると思っているので』
「ああ、説明する。だが対処が最優先だ。こいつら、一発でもコロニーに当てるわけにはいかない……ぞっ!」
メモクシがスクーターを操縦して移動をし、ヴィリジアニラが次のロケットコーンを捕捉し、俺がそれを本体の居る空間へと引きずり込む。
それをしつつ、俺は本体で解析した、今飛んできているロケットコーンに含まれているmodをヴィリジアニラたちに説明する。
そして、説明を聞いたヴィリジアニラたちは……。
『完全に兵器になっているじゃないですか……』
『俗に魔改造と呼ばれるものですね。とは言え、これほどとなるとメモも引きますが』
「ま、そういう反応にもなるよな、なっ!」
完全にドン引きである。
だがそれも当然のことだろう。
ロケットコーンにはこんなmodが含まれていたからだ。
・例の金属で全体を薄くコーティングする事によって発揮されている、シールド貫通mod
・射出時に十分な加速を得るための亜光速航行mod
・ヴィリジアニラの目でなければ目視できなくなるような光学迷彩をもたらす、隠蔽mod
・慣性飛行移行後に目的物への着弾精度を上げるためにあると思しき、落下制御mod
・着弾時に一定時間全体の位置を固定する事によって剛性を得ると共に、大抵の建材を貫通できるようにする、固定mod
・着弾時に固定modの影響を受けたままの実をばら撒く事によって破壊を拡大する、散布mod
・宇宙空間にあるチリや水を含め、周囲にあるものを片っ端から成長に利用する、生育促進mod
・着弾時に破壊した建材を成長に利用しやすいように特定の形で分解する、指定破砕mod
・これらのmodに本来ならば存在しているであろう各種制御を取り払う、暴走mod
・その他諸々.etc、とりあえず被害拡大につながりそうなmod類多数
一部例外を除いて、一つ一つならば問題視されないmodと言うか、普通に使われているようなmodsではあるが、これほどの数を一つの物体に集めた上で、超高速で叩き込むなら、完全に兵器の類……それも使いようによっては星系一つを滅ぼせるような危険物である。
なにせ、一発コロニーに叩きこまれただけで、そのコロニーを完全に破壊しつつ、元コロニーを材料に次の魔改造ロケットコーンが急速成長し、四方八方に放たれるのだから。
「しかも、何がヤバいって、これだけのmodを一体の生物に注ぎ込んでおきながら、事象破綻を起こしてない。作った奴の技術レベルは明らかにテロリストの範疇じゃないぞ」
『そうですね。私でも普通の代物ではないのは分かります。そして、此処まで酷い代物を出されるとなると、トリティカムファクトリーには後で事情を訊く必要がありますね。あまりにも殺意が高い』
『発射が行われたロケットコーンの経営者も被害者ではなく容疑者として押さえておくべきですね。明らかに一朝一夕で準備できるような代物ではありません』
幸いなのは、これほどの代物であっても、ロケットコーンを元にしているからか、グログロベータ星系のSwの範囲外には出られないと言う点だろうか。
いや、油断はできないな。
これだけのmod構築を出来る奴なら、その制限を外すことも不可能ではないと捉えた方がよさそうだ。
「ヴィー、残りのロケットコーンは!?」
『今現在、私の目で認識できる限りでは12……13……まだ増えます!』
『完全に途中で増えていますね……。おまけに全方位からですか』
「やったらぁ!」
モニターになっているヘルメットのバイザーに、ヴィリジアニラの手によるマーキングが表示される。
俺はそれを認識すると、詳細を確認せずにとにかく指示通りに本体の腕を伸ばし、掴み、本体が居る空間へと引きずり込んで無力化していく。
企業コロニーに向かって文字通りの全方位から迫ってくるが、とにかくメモクシがスクーターを飛ばし、俺が腕を振り……そして、その間にもヴィリジアニラのマーキングは増えていく。
どう考えても普通の人間なら手が足りない状況であるが、こちとら宇宙怪獣、本体の腕は二本や三本どころではないので、片っ端から引きずり込んでいく。
傍目には俺が腕を伸ばし、手を開いては閉じているのを繰り返しているようにしか見えないかもしれないが、それでも処理は進み、ロケットコーンもマーキングも音も光もなく消えていく。
『すぅ……はぁ……すうっ……はあっ……』
「今回の騒動の元凶は後で絶対に叩いておく。貴族だろうと遠慮なく、物理的に叩き潰してやる」
『同意します。諜報部隊……いえ、帝国の総力を挙げて協力させていただきます』
疲れからか、目以外は普通なヴィリジアニラの呼吸が荒くなってきている。
だがそれでもマーキングの手は緩まない。
だから俺も指示通りにロケットコーンを消していく。
消した総数が20……30……そして、50を超える。
『はぁはぁ……すぅ……はぁっ……。サタ、メモ。二人ともお疲れ様です。私の目で捉えられる範囲ではあるけれど、もうロケットコーンは確認できません』
超えて……途絶えた。
「ふぅ……いや、お疲れさまはこっちのセリフだからな。ヴィー」
『お疲れ様ですヴィー様』
『では、ありがとうと言い換えましょうか。私だけでは何も出来ませんでしたから』
どうやら守り切ったらしい。
宇宙空間に静寂と言うか、変化が無い状態が戻ってくる。
念のために俺の本体の目でも見てみるが……いやまあ、ヴィリジアニラの目で分からないなら、俺の目で分かる道理はないが、それでも一応見てみて、何も確認は出来なかった。
「はぁ……メモクシ」
『もう向かっています。今のヴィー様には一刻も早く休んでいただく必要がありますので』
スクーターが企業コロニーの港へ向かって飛んでいく。
「ヴィー」
『何ですか?』
「あー、ありがとうも、自分だけでは何もできなかったもお互い様だ。だから、ありがとう。俺だけじゃ、そもそもこの場にも居なかった」
『ふふふ、そうかもしれませんね』
港には既にトリティカムファクトリーの職員の一部が歓迎モードで集まっているようだ。
それを見てヴィリジアニラは嬉しそうにし……俺とメモクシはむしろ警戒を強めた。
そして、スクーターは港に着地した。