30:第一プライマルコロニー ※
本話はヴィー視点となっております。
「此処がグログロベータ星系の第一プライマルコロニーですね」
「その通りです。正確にはグログロベータ星系の第一プライマルコロニー上層部、降船口、8番ドック。警察専用の港になります」
警察の船がグログロベータ星系の第一プライマルコロニーへ到着すると、私、メモ、サタの三人は船から降ろされました。
周囲には同じように船が何隻も泊っていますが、その一部は停泊しているドックと周囲の機械ごとコロニーの中へと沈んでいきます。
勿論、沈まない船もあって、そちらの船は港に泊まると、出すものを出し終わった船から出ていきます。
複数の船が忙しなく動き回り、開放型の入り口を行き交う姿を見ていると、それだけでもこのコロニーがどれほどに賑わっているのかがよく分かります。
「降船口? と言うか、ヒラトラツグミ星系やセイリョーコロニーで見たことが無い形式のコロニーだな。サイズも俺の本体より大きいし、色々と気になるな」
「では、サタ様の為に順に説明していきましょう」
コロニー内へと移動する通路は……ありましたね。
では、そちらへ向かいながら、メモから第一プライマルコロニーについての基本的な情報を聞いて、おさらいをしておきましょうか。
「まず前提として、此処、第一プライマルコロニーはグログロベータ星系の主星である惑星グログロベータ1の為にある加工衛星とでも言うべきコロニーです」
グログロベータ星系の主星、惑星グログロベータ1の周囲には二つのプライマルコロニー……第一プライマルコロニーと第二プライマルコロニーがあります。
このことを踏まえて、一から話しましょう。
まず、惑星グログロベータ星系は惑星全土……いえ、海洋中、地中も含めて、あらゆる場所で農業が行われていると言っても過言ではありません。
それほどに大規模な農業を行う場合、ある程度の農業準備と農作物の加工は惑星上で済ませる事が出来ますが、ある程度以上の作業は惑星上で行うのは非効率であると、グログロベータ星系を管理運営している貴族、議員、企業たちは判断しました。
結果、二つのプライマルコロニーは惑星上で行うのは非効率だと判断された業務を一括して行うようになり……いえ、行えるように建造されました。
そして、その建造の際には、このプライマルコロニーでは物がライン工のように流れる方が効率が良いと言う話にもなったようです。
そうして生まれたのが降船口であり、ドッグごと船を移動していくやり方です。
さて、全ての船がそうではありませんが、事前にそうすると決まっている船は第一プライマルコロニーの中でこう動きます。
私たちの立ち位置の重力方向を基準として、一番上に降船口があり、まずここで人を降ろします。
次に船ごと搬入口へと移動し、ここで物を降ろします。
そして、降ろされた物はコロニー各地で加工されていき……対して船はそのまま下降を続けて、その下降の最中にメンテナンスや燃料の補充などを行っていきます。
で、最後には降船口の時とは逆の手順で、コロニーの一番下にある搬出口から物を載せ、乗船口で人を乗せ、再び宇宙に飛び立っていく。
と言う流れになっているのです。
「へー、でもそれだと、急ぎたい船とかは困りそうだな」
「そうですね。なので降船口でコロニー内に移動しない船は一度外に出て、外回りで乗船口へと向かうようです」
「よく問題が起きないな……」
「グログロベータ星系のプライマルコロニーにやってくる船は九割以上が企業に関わりがある船であり、同型の船が沢山あります。極端な話ですが、降船口で船を降りて、その足で乗船口へと向かい同型の別船に乗って出航する船員も居るそうです」
「効率的……ではあるのか」
ちなみにですが、個人所有かつ長期停泊予定の宇宙船は、降船口がない専用の港に集められるそうです。
位置は……コロニーの中腹、惑星がある方とは逆側だったはず。
私たちも『ツメバケイ号』に乗って此処まで来ていた場合には、その港を利用していた事でしょう。
まあ、ギガロク宙賊団の一件があったので、そんな予定は消えてしまいましたが。
「なるほどな。それでこれからの予定は?」
サタが私に尋ねて来ます。
「今日のところは事前に予約しておいたホテルに宿泊ですね。明日以降はコロニーからの超高精度望遠による惑星グログロベータ1の観察、第一プライマルコロニー内にある幾つかのラインの観光、単純に街の中を見て回って、地元ならではのお店に行くのも考えています。合計すれば……一週間以上は確実にかかるはずですね」
「ふむふむ。ちなみにロケットコーンは?」
「メモ」
「他の予約は容易でしたが、ロケットコーンについては難航していますね。可能ならグログロベータ星系内限定食のレストランを予約したいのですが……流石の人気ぶりです」
「だそうです」
「なるほどなぁ……」
なお、第一プライマルコロニーで見て回る予定はこの程度ですが、その後には幾つかの企業コロニーから見学しないかと言う誘いも来ています。
こちらについては、諜報部隊との連携も取りながら見に行くことにしましょう。
「さて、街が見えてきますね」
「お、おおっ……これは中々だな」
「……」
さて、降船口からコロニーの内部へ移動します。
通路を抜けて広がった視界に入ってきたのは……コロニー内とは思えないほどに緑が繁茂した居住地区でした。
09/19誤字訂正