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25:帝国人は多種多様

「さて、当たり前なんだが多種多様な人種だなぁ」

「帝国の誇るべき光景。と言うものですね」

「そうですね。多様な人種が何かを気にすることなく往来を行き交い出来るのは、帝国の政治が上手くいっている証拠の一つと言えるでしょう」

 俺、ヴィリジアニラ、メモクシの三人はグログロベータ星系のガイドコロニー……正確には至ヒラトラツグミ星系のガイドコロニーの観光を始めた。

 このガイドコロニーは積み荷チェック用の巨大な輪が二つあり、その輪に挟まれるように巨大で薄い円盤があるような形になっている。

 まあ、薄いと言っても俺の本体視点での話なので、実際の厚みは数百メートル程度あるわけだが。


 で、現在俺たちはコロニーのメインストリートを歩いているのだが、此処には同じように観光で歩く人々が沢山居る。

 そして、その沢山いる人々の内九割ちょっとは帝国人で一般的なヒューマン種と呼ばれる姿をした人間であるのだが、残りの一割弱は実に多彩だ。


「オーガ、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ウェアビースト、アンドロイド、ハーピー、マーマン、インセクター、リザードマン……」

 筋骨隆々の肉体に額から角を生やした大柄な人間であるオーガ。

 長く尖った耳が特徴的なエルフ。

 筋肉質で小柄で、肌に金属的な光沢が幾らか見られるドワーフ。

 同様に小柄だが、線が細く、細かい機械を得意げに弄繰り回しているハーフリング。

 獣の耳を生やした人間であるウェアビースト。

 機械知性……AIを元に発展していって生まれたアンドロイド。

 鳥の翼を背中から、あるいは腕から生やしているハーピー。

 魚の特徴を体の各部に持ち、エラ部分に専用の機械をくっつけて歩いているマーマン。

 外骨格の体を持ち、無機質な複眼を周囲へ向けているインセクター。

 鱗に覆われた体を持ち、仲間と談笑をしているリザードマン。


 ざっと見た感じでも、ヒューマン以外の種族がこれだけ居る。

 また、ヒューマンにしてもだ。

 ヴィリジアニラのように身体強化modの影響で外見的差異が生まれているもの。

 一部が機械化されているサイボーグ。

 よく見れば第三の目を額に持っていたり、第三の腕を背中に持っていたりするアディション。

 あるいは俺ほど精巧ではないが、ヒューマンに擬態しているミミック系統の何か。

 そんな風に呼ばれる存在が入り混じっていて、見ていて飽きない光景が広がっている。


「いやー、ヒラトラツグミ星系とは段違いだ」

「あちらは……ほぼヒューマン。極一部に移住してきたハーピーが居るだけ、他種族は殆ど居ない、でしたか」

「そうそう。まあ、普通の星系だからな」

 うん、流石は観光地や土産屋も兼ねているガイドコロニーだな。

 びっくりするぐらいに多種多様だ。

 見かけないのは……植物の特徴を体に持つ種族たちぐらいか。

 まあ、グログロベータ星系のSw的に当然の話だな。


「普通……でもセイリョーコロニーに唯一繋がる星系という事で、何かはあったのでは?」

「まあ、検査の為に本来なら違法なmodが運搬されてくる星系ではあったから、そっち方面で色々あったのは否定しない」

 なお、帝国法では彼らはいずれもまとめて人間として定義される。

 権利面での扱いの差は殆ど無いし、差がある場合にはそうしないと全体にとって不利益であるから、と言う場合がほぼ全て。

 本人の能力次第では普通に貴族として取り立てられることもある……と言うか、それぞれの種族の母星と呼ばれる本拠地は、だいたいその種族の貴族が治めていたはずだ。


 なお余談だが、人間同士と言っても異種族であることに違いはないので、そのままでは子作りは出来ない。

 が、帝国のmod技術をもってすれば、異種族間での子作りも可能となるので、種族の人口比を大きく崩さないように留意しつつも、互いの合意があれば異種族間の婚姻も子作りも特に問題なく行えるのが今の帝国である。

 そして、当然ながら、それらの行為に対する偏見の目もない。


 うん、本来なら宇宙怪獣である俺ですら人間扱いをしてくれるのだから当然かもしれないが、帝国の懐の広さが窺える話と言えるだろうな。


「具体的には?」

「セイリョー社で検査する為に輸入されてきた違法modの横流しをしていた阿呆とか、それを元に自分で違法modを構築していた馬鹿とか、構築された違法modで作った品を俺に売りつけようとした間抜けとかは居たな。全員まとめて通報してやったけど」

 あれは……酷い事件だったなあ……。

 味を原形を留めないレベルで改変するmodに、それをさらに強化してドラッグのようにして見せたmodに、それを当時色々と裏でやっていた俺をハメるべく売りつけようとしたんだったか。

 最終的にはヒラトラツグミ星系の主星に秘密建造されていた違法mod及びそれを利用したドラッグを製造する施設を制圧して、治安維持機関に居る馴染みの奴に売り渡したんだったか。

 結構な額が動こうとしていたのか、貴族も何人か捕まったって話だったかなぁ。


「……。詳細は尋ねないでおきますね」

「まあ、俺が知っているもの以上が上がっているだろうしな」

 さて、人間観察を何時までもしていても仕方がないので、話を進めよう。


「ま、それよりも食べてみよう。グログロベータ星系の名産品らしいからな」

「そうですね。そうしましょうか」

 俺とヴィリジアニラはグログロベータ星系の名産品であるらしいそれ……ベジタブルチップス、フルーツジュースなどをお土産屋で買うと、イートインスペースで一部を食べてみることにした。

なお、本話中に登場していない種族も当然ながら居ます。

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