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24:グログロベータ星系とは

「ヴィー様、サタ様。関係者への事情聴取が一通り終わったので、メモたちの行動制限も解除されると言う通知が来ました」

「ようやくですか。随分とかかりましたね」

「宙賊があのギガロク宙賊団の一員だったために、余罪やら交渉やら、他にも色々とあって長引いたようです」

 俺とヴィリジアニラが契約を交わして数日後。

 俺たち三人への事情聴取は特に何事もなく終了したのだが、俺たちを足止めして進めないといけない案件が警邏部隊などにはあったらしく、今日までグログロベータ星系のガイドコロニーにある高級ホテルのロイヤルスイートへの滞在は続いていた。

 が、遂にその滞在の日々も終わるらしい。


「いずれにせよ、メモたちがこのホテルに泊まれるのは今日までで、明日の朝には当ホテルを後にすることになります。そして、活動の再開は本日から可能となりました」

「ふむふむ」

「分かったわ」

 さて、高級茶葉によるミルクティー他、舌鼓を打たずにはいられない高級料理の数々を味わう事が出来た日々であったが、終わるのであればきっぱり諦めて、表裏両面の仕事に邁進するべきだろう。


「じゃあ、今日の内に明日からどういう活動をするかを決める感じか」

「そうなります。なのでまずはグログロベータ星系がどんな星系であるかと言う表面的な情報の共有をしてから、何処へ何を見に行くかを決めましょう。メモ」

 と言うわけで、お勉強の時間である。

 内容はグログロベータ星系とはどんなところ? だ。


「こちらをどうぞ」

 メモクシが部屋に備え付けのプロジェクターを使って、グログロベータ星系全体のホログラムを投影した。


 さて、グログロベータ星系は一言で言ってしまえば、農業星系だ。

 と言うのも、グログロベータ星系のSw(スターウェア)……星系中に張り巡らされ、常時発動しているmodの効果は植物の生育速度増幅であり、これを生かすべく、四つある居住可能惑星、八つあるプライマルコロニー、無数かつ大小さまざまな小惑星、衛星、コロニーたち、その殆ど全てで農業あるいは農作物の加工事業が行われているからである。

 そして、作り出された農作物は加工を施された上で、グログロベータ星系内だけでなく、周囲にある他の星系……さらには帝星バニラシドなどなどで消費されているそうだ。


 うん、当たり前のように超光速航行を数度行った先の星系にまでグログロベータ星系の農産物が届いている事からも、その生産量と品質が窺えると言うものである。


「メモたちがどこへ行くかですが……まず、グログロベータ星及び、他の居住惑星にはメモたちは正規の手順ではまず入れません」

「それは当然ですね。一般的コロニーでも関係者以外がライフライン関係へ立ち入ることは難しいですから」

「えーと、ツアーに予約して……半年か。俺一人ならまだしも、ヴィーたちにそこまでの時間は無いってことだな」

 だが光があれば影があると言うか、極めて大規模かつ効率的な農業を行っているからこその制限もある。

 その一つが、関係者以外に対する星への立ち入り禁止。

 星全体が巨大な農場であり、農作物に対する病気などを警戒して、グログロベータ星系にある星は基本的に部外者は立ち入れないのだ。


 一応、ツアーと言う形で入ることも出来るが……それもかなり制限がかかったものになるようだし、一時的にでも星に降りられるという事で余裕と貫禄の半年待ちの状況。

 費用的にはお手軽だが、半年待つのは……まあ、ヴィリジアニラたちには厳しいようだ。


「ああでも、惑星上の様子を窺いたいだけなら、一部のコロニーから望遠して地上を覗けるんだな」

「そのようですね。私たちの立場上、惑星上の様子に一切目を向けないのもよくないですから、これで見てみましょう」

「では、グログロベータ星系の立ち入り自体は確定ですか」

 とは言え、地上の様子を見たいだけなら、超高精度の望遠鏡で地上を見れる場所があったり、農業用に設置された各地のカメラを転用したライブビューイングツアーなんて手法もあるようだ。


「となれば、明日から一日は検査の為に待機になりますね」

「あ、あー……あったな。そう言うのも」

「ありましたね。そう言えば」

 グログロベータ星系のSwの影はまだある。

 それがSwの効力圏内に踏み込む際に、本人も知らずに植物の種子などを付けていないかを確認するべく、まずは一日、外部から隔離された部屋で過ごして、異常が発生しないかを確かめるそうだ。

 これを怠ると、最悪の場合、突然全身に植物の根が張ってミイラなんてことも……まあ、昔にあったらしい。

 これについては『ツメバケイ号』に乗っていれば、移動しつつ船内でチェックできたので省けたプロセスなのだが……まあ、仕方がない。


 それと、これは俺たちには関係のない事であるが、植物の生育速度を早めるとは、裏を返せば植物の寿命を縮めるという事でもある。

 そのため、安全面を考慮してグログロベータ星系には植物の要素が強い人間は立ち入る事が出来ないようになっている。

 なので、実は今俺たちが居るガイドコロニーは、管理運営はグログロベータ星系で行っているが、Swの範囲的にはまだグログロベータ星系に入っていないと言う微妙な立ち位置であるし、他のガイドコロニーと違って此処までしか入れない人間の為に生活環境や大回りで他の星系へ向かうための設備があったりと、特殊かつ大きめのガイドコロニーであったりする。

 まあ、この辺は余談だな。


「コホン。ではメモ。三人分で星系進入の為の待機施設使用の申請を提出してください。明日の朝一から、待機施設へと移動します」

「かしこまりました。ヴィー様は本日のこれからはどうされますか?」

「メモ、サタの二人と一緒にガイドコロニーの観光をしようと思います。いいですよね?」

「もちろん。俺も色々と見て回りたいところだったしな」

「かしこまりました。では、申請もオンラインで済ませましたので、参りましょう」

 その後、グログロベータ星系内で何をするかをさっくり決め、必要な予約を済ませたところで、俺たち三人は久しぶりにホテルの外に出た。

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