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18:戦闘終了

「えーと、回線をオープンにして……あーあー、こちらサタ・セーテクス。衝角付きの宙賊船の制圧を完了した。『ツメバケイ号』はこちらを気にせずに目の前の敵に専念してもらって構わない」

 俺は艦橋内に存在しているコンソールを操作。

 宙賊の船らしくと言ったらいいのかは分からないが、操作をロックするような機構はなかったので、通信回線をオープンにし、周囲に居る全ての船に聞こえるようにした上で、船の制圧が完了したことを通達する。

 と同時に船の中で稼働している諸々も最低限を残して停止し、傍目にも制圧が完了したことが分かるようにする。


『感謝します。サタさん。全員構えて、反撃に転じます!』

 回線からヴィリジアニラの声が聞こえてくる。

 と同時に、これまで散発的な攻撃をし合っていた『ツメバケイ号』と宙賊の船のやり取りが一気に激しさを増す。

 『ツメバケイ号』はこれまで全方位に向けて展開していたシールドを相手の船がある方向に限定して展開することで出力を向上させつつ、消費するエネルギーに余裕を持たせる。

 そして、捻出した余裕分を攻撃に回し、どうやったのかは分からないが、『ツメバケイ号』が備えている護身用のビーム砲の出力を上げた上で発射している。


「んー、メモクシ辺りがビーム砲のmodや構造辺りを弄ったか? あるいは積み荷にその手のものでも載せていたか? いずれにせよ趨勢は決まった感じだな」

 対する宙賊の船は仲間がやられたことで及び腰になっていることもあるだろうが、明らかに余裕がなくなっている。


 まあ、これは当然の事でもあるな。

 引きずり出しのmodは要求するエネルギー量が多い上に、起動し続けなければ相手の逃走を妨害する事が出来ない。

 となれば、必然的に攻撃に回せるエネルギーの量は減り、火力は落ちる。

 だから仲間が火力面をサポートする必要があるわけだが……その仲間は俺によって沈黙させられたからな。

 つまり、攻める手段がなくなってしまったわけだ。


 となれば。相手が取る手段はただ一つ。


『クソが! やってられるか! 逃げるぞ!!』

 逃走だ。


「判断が遅い」

『判断を間違えましたね』

『!?』

 だが、それを実行するなら、俺がこちらの船を制圧している途中でやるべきだった。

 引きずり出しの宙賊船は攻撃を全部捨てて逃走を選んだ。

 それは『ツメバケイ号』が出している救援信号を聞きつけてやってくる、軍あるいは警察の船が直ぐ近くにまで迫っていたからかもしれないし、獲物が狩れないならば一目散に逃げだすと言ういつも通りの行動だったのかもしれない。

 だが、今それをやるのは明らかな失策だ。


 攻撃を全部捨てて逃走を選ぶという事はつまり、航行とシールドの為に必要な機構やmodにだけエネルギーを回すという事であり、『ツメバケイ号』からの攻撃を防ぐ牽制も捨てるという事。

 ヴィリジアニラはその隙を見逃さずに、一時的にシールドどころか船内の環境維持のために必要なmodまでも一瞬切って、明らかにリミッターが解除されているビーム砲を発射した。


『な、馬鹿な……い、一発でなんで……』

 一発ではなく二発だ。

 一部の人間にしか分からないぐらいの間隔であったが、『ツメバケイ号』は二発のビームを放っていた。

 そして、一発目でシールドを剥がし、二発目で宙賊の船に風穴を開けた。

 それも機関部の中でも超光速航行、超高速航行、推力の発生と言った、移動の為に必要な部分だけを正確に撃ち抜いている。

 恐ろしいほどの精密さである。


 そして、こうなれば宙賊は逃げることは出来ず、残された手段は降伏、徹底抗戦、自爆のいずれかなわけだが……。


『そこまでだ! こちらは帝国軍、グログロベータ星系-ヒラトラツグミ星系間の警邏部隊である! 不法船籍の二隻は即刻機関を停止せよ! さもなくば撃墜する!!』

『な……!?』

 軍の到着だ。

 超光速航行から通常航行へと移行した帝国軍の真っ白な船が八隻もハイパースペースから姿を現し、引きずり出しの船と……俺が居る衝角持ちの船を各種武装でロックオンしながら取り囲む。

 うん、完全に詰みだな。


「あーあー、こちらは衝角持ち? えーと、船名とか分からんから、宙賊が乗っていた船の片方と表現するんだが、こっちは俺……サタ・セーテクスが制圧済みなので、撃つのは止めてもらいたい。後、各種機関の停止方法とか教えてもらえると助かる」

『?』

『こちら『ツメバケイ号』を臨時に指揮しているヴィリジアニラ・バニラゲンルートと言います。サタさんの言っていることは事実のようですので、保護と……指示の方をお願いします』

『……。了解しました。では……』

 引きずり出しの船に色々と浴びせかけられている。

 たぶんだが、自爆とかをさせないための何かだろう。

 で、それを眺めつつ、警邏部隊の方の言葉に従って俺は処理していく。

 なお、作業をしている間に仲間が居ないかとか、どうやったのかとか色々と聞かれたが……その辺は落ち着いてからでという事で流させてもらう。

 こっちは慣れない作業をしているので、余計なことに割ける思考のリソースが足りないのだ。

 俺は宇宙船とか弄ったことないんだよ!


 が、それでも何とか宙賊の船の機能を停止。

 警邏部隊の船の一隻……ヴィリジアニラたちが保護されている船と接続することに成功。

 俺は接続した通路から、警邏部隊の船に向かおうとして……。


「ではまずはこちらの除染兼検査室へ。宙賊の使っていた人造人間となると、その肉や血に何が含まれているのか分かったものではありませんので」

「あ、はい」

 とりあえず服を着たまま頭から各種消毒modを搭載起動した液体をぶっかけられた。

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