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11:ガイドコロニー

本日は五話更新です。

こちらは二話目です。

『本船『ツメバケイ号』は間もなく本日の目的地であるガイドコロニーのランディングエリアに到着。亜光速航行から通常航行に切り替えてランディングエリアに突入します。ガイドコロニーでは……』

 窓の外の光景が変化する。

 亜光速航行の全てが線のように見える光景から、暗黒の宇宙で無数の星々が淡く輝く光景へと。

 どうやら無事にガイドコロニーに着いたらしい。


「ガイドコロニーに着きましたが、何かやる事はありますか? 逆にやってはいけない事はありますか?」

 さて、夕食を堪能した俺は遊戯室に移動。

 そこでトランプを楽しみつつ、顔を合わせていなかった船員さんたちから話を聞いていた。

 ヴィリジアニラが居る状況と居ない状況で答えが変わる可能性は大いにあったからだ。

 が、回答に大きなずれはなかった。

 まあ、『ツメバケイ号』は船長から船員、仕事内容に至るまで真っ白なので、この結果は当然なのかもしれない。


 で、それからさらに過ごすことしばらく。

 『ツメバケイ号』は超光速航行に必要なガイドビーコンの周辺に到着し、ガイドビーコンに併設されたコロニー……ガイドコロニーと呼ばれている施設の近くにまで来ている。


「ガイドコロニーでやる事? 乗客がやる事は特にねえな。ああ、あっちから何か指摘があった場合は素直に従ってくれよ」

「それはもちろん」

 ガイドコロニーの見た目は……直径数キロメートルに及ぶ巨大な輪が二つと、それを繋ぐように併設された棒と言うのが一番分かり易いか。

 輪の内側には緑色の光に満ちていて、何艘もの宇宙船が順番と流れを守って通過している。

 棒の部分にも大小様々な船が横付けされていて、大変賑わっているように見える。

 が、ここの賑わいは商業や観光業的な意味での賑わいではない。


「やってはいけない事は……変わらんな。まあ、何かやらかしたときの処分が宇宙遊泳か豚箱かって違いはあるが」

「まあ、流石にこの場で宇宙遊泳はさせられませんからねぇ。他の船の迷惑になりますし」

「そういう事だな」

 ガイドコロニーの役目は簡単に言えば関所だ。

 あの巨大な輪はスキャン装置になっていて、船に乗り降りすることなくスムーズに違法な品や人の有無を探る事が出来るようになっている。

 そして、タグ付けの装置でもあり、一部例外を除いてガイドコロニーでのタグ付け無しで、人や物を別の星系へ移動することは帝国では違法となっているのである。


 なので、此処の賑わいは検査の待ち時間の為の賑わいであり、棒の部分に横付けされている船にはガイドコロニーの客だけでなく、何かあった時に動き出す警備員や軍人の為の船も含まれている。

 存在する位置が星系の外れなのも、ここが余所から超光速航行で入ってくる何者かに対しての防衛施設でもあるからだ。


 現状は……俺が探れる限りでは、おかしな事は起きていないようだ。

 普通にスキャンが進んで、普通にタグ付けされて、普通に次のステップに移行している。


「船が消えていきますね。あれが超光速航行ですか」

「その通りだ。外から見ると、あんなふうに見える」

 俺は視線をスキャンを終えた船の方へ向ける。

 その船たちは指定されたポイントに移動すると、黄金色の光を纏って姿が見えなくなり、光はグログロベータ星系がある方向に向かって光芒を残しながら突き進み……消える。

 あれが超光速航行。

 近い距離であってもなお光の速さで数年かかる距離を、数時間から数日で駆け抜ける、帝国を宇宙帝国にして見せたmod技術だ。


 原理としては……確かハイパースペースと言う特殊な空間に宇宙船を転移させ、その空間の中を亜光速航行、目的地に着いたところで元の空間に転移することで、光速の壁を打ち破るとかなんとか

……まあ、門外漢なのでよく分からない。

 うんまあ、この辺はmod技術の中でも特に特殊と言うか最先端の話だからな。

 ただのフリーライターである俺に分からなくても問題はない。

 日常的に利用している宇宙船乗りたちだって大半は理解していないらしいが、利用は出来ているのだから問題ない。

 お偉い学者様が理解できて、俺たちも利用できるように改良してもらえるのなら、それでいいんだよ、うん。


 それよりも、俺はちゃんと超光速航行に相乗りできるように最終チェックをしておこう。

 失敗すると、色々面倒になる。


『ヒラトラツグミ星系、グログロベータ星系行きのガイドコロニー当局より通達。ただいまより『ツメバケイ号』のスキャンを開始します。乗船中の方々は出来るだけ激しい運動を避け、その場に留まってください。スムーズなスキャンを実現するためにご協力のほど、よろしくお願いいたします』

 『ツメバケイ号』のスキャンが始まる。

 緑色の光の中へとゆっくりと進んでいき、船首から順にスキャンされていく。

 光は室内にも当然及んでいて、俺を通り過ぎ、遊戯室の品々を通り過ぎ、船員さんたちを通り過ぎていく。


『異常は検知されませんでした。『ツメバケイ号』は超光速航行のランディングエリアへとお進みください』

 問題はなかったらしい。

 『ツメバケイ号』は順調に進んでいく。


「ちなみに、スキャンされて駄目なものが見つかると、その瞬間に輪の中の光が赤くなるんだぜ」

「へー……今みたいにですか?」

「……。今みたいにだな」

 そして、進む『ツメバケイ号』の後ろでは、何かがスキャンに引っかかったらしい。

 輪の中の光が赤くなった上に、『ツメバケイ号』より小型の宇宙船へと、警備の戦闘機と宇宙船が複数向かっているのが見えた。

 何が引っ掛かったのかは分からないが……まあ、ご愁傷さまと言う奴だな。

 足止めをされることになった、『ツメバケイ号』より二隻後ろ以降の船たち含めて。


『本船『ツメバケイ号』はただいまより超光速航行に移行します。目的地はグログロベータ星系。ハイパースペース内部の空間を見て気分が悪くなった際には直ぐに窓から目を離すと共に、近くに居る船員に声をかけて……』

「……」

「楽しみそうだな」

「ええ。楽しみです。ハイパースペースの中をゆっくりと眺められる好機ですから」

 『ツメバケイ号』が黄金色の光に包まれていく。

 そうして、十分に光が強まったところで……俺たちはハイパースペースに突入した。

09/03誤字訂正

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