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【ニチジョウ】
†ショウゲキ†矛盾の真実†
「お~い、どうした?」
商店街の一角で立ち止まってしまった幼馴染みに、少年は仕方なく歩み寄った。
赤い雲が棚引く夕暮れ時。
幼馴染みの視線を追えば、店頭の陳列棚に展示されているテレビがニュースを放映していて。
難しい顔で唸る。
「ヒドイよな」
無言で“何が”と聞き返せば、悲痛な面持ちで口を開いた。
「この兄ちゃんさ、薬飲んだのに怒られてるよ……」
――ぼくなんて“いやだ”って言っても“薬は風邪を治す正義の味方よ!”って言って、姉ちゃんに無理矢理飲まされるのに……
その何とも的外れな幼馴染みの言葉に、少年は苦笑を禁じ得ない。
「お前は、ずっとそのままピュアなままでいてくれよぉ~」
揶揄混じりに、頭一つ分は余裕で低いだろう幼馴染みの頭をポスポスと撫でながら願う。
「なっ!? お前、バカにしてるだろっ!」
「ハイハイ、そんなことナイデスヨ」
喚く幼馴染みを適当にあしらいながら、空を仰ぎ見てどこか遠くを見るように目を細めた。
彼のプライドが
彼女を殺し
彼女のエゴが
彼を壊し
彼女の慢心が
彼女自身の命を奪った
――カスミさん、あんたの望みは叶ったのかな?
無意識のうちに、そっと自分の額に触れる。
そこにあるのは一筋の傷痕。
「真実なんて、どこにもない」
矛盾の中に埋もれるように
俯瞰の景色に覆われるように
『――……今後警察は、北沢 エリカさん殺害にも関与していると見て捜査を――……』
風が運ぶテレビのアナウンスに、少年は薄く嗤う。
「真の勝者は、一体誰なんだろうね?」