108.現れた人物とは
「やっぱり気付いていたのか」
そう言いながら出てきたのは、ゼロスさんだった。まぁ、チラッと確認したから誰がいるのかは分かっていたけど……。
「少し前にですよ?いつからいたのかは、分かりませんでしたが……」
「それでも十分に凄いぞ」
と呆れながらも褒めてくれた。でも、魔法を使ったと言ったらそのお褒めの言葉も無しになりそう……。
「それで彼女の宣言は、聞こえましたか?」
「ああ、『私は、ユアには、二度と関わりません!』といったやつか?」
「そうです」
よかったちゃんと聞こえていたみたいだ。そのことに安心しながらユアに視線を向けると驚いていた。メンデスも同様に驚いたような表情をしている。もしかして急に人が出てきてびっくりしたのかな? ……それにしてもゼロスさんは、どうしてここにいたのかな?
「そういえばゼロスさんは、どうしてここに?」
「あぁ、少し前、ギルドに慌てて帰って来たやつがいてな。そいつが街の近くの森でオークを見たとか言っていたから確認の為にオークを目撃した場所に向かっていたら嬢ちゃんたちを見つけた感じだ」
「!? オーク!!」
どうやらメンデスは今頃になってオークの事を思い出したようで辺りをキョロキョロし出した。目を覚ました時は、ユアや怪我の事以外何も話していないから違う事で恐怖を紛らわしていたのかと思っていたけど、どうやら目の前の事にしか目が行っていなかったようだ。
「嬢ちゃん達も見たのか?」
「まぁ、一応」
と言いながらユアの方に視線を向けると頷いていた。
「そうか……。なら、この怪我は、全部オークによるものなのか?」
と言いながらメンデスに視線を向けた。
「そうよ」「違うわ」
「なんであんたがそんなこと言うわけ! あんた達は知らないでしょ!」
「見てないけどオークによって受けた怪我は、左腕だけでしょ。あとは、崖から落ちた? それとも飛び降りた怪我でしょ?」
「っな!」
と言ってメンデスは、口をパクパクさせていた。どうやら図星みたい。まぁ、分かってはいたけど……。
「どういうことだ?」
そうゼロスさんが聞いて来た。
「この崖の上にあった足跡が崖の方に続いていたから」
と言ってメンデスの上辺りの崖を見る。
「……後で調べておこう」
ゼロスさんが調べてくれれば大丈夫かな? 無闇に走り回って崖から落ちたのにオークに襲われたとか言って凄く悲惨な被害者ぶっているのは気に食わないし……。とそんなことを思っているとユアがゼロスさんにこんなことを聞いていた。
「ゼロスさんは、いつから近くにいたの?」
「確か怪我をしている嬢ちゃんが喚き始めたあたりか? 声が聞こえてこっちに来たから」
ゼロスさんがそう言うと、メンデスは怪しげな笑みを浮かべていた。