105.メンデスの容態
それからメンデスが落ちたと思われる場所に向かった。道中は、魔物に遭うことなく移動できたため予想以上に早く移動することができた。多分だけど先程倒したオークがこの辺りにいたため魔物の気配が無かったのだと思う。
そうして一人の女が横たわっている?場所が見えて来た。
「あれ……だよね?」
「そうね。メンデスで合っているの?」
「う、うん……」
そうして彼女に近づくと異臭も漂ってくる。先程は、遠くからではっきりと状態が判らなかったけど思っていたより近くで見ると想像以上に酷い怪我だった。左腕は無く、左足は変な方向に折れていて、もう片方の足は半分ぐらいの大きさになっているほどズタズタに折れて骨が飛び出ている。額からも少し血を流していたみたいだけど現在は止まっているようだ。そんな感じで彼女をみているとあるものが目に入った。
「ん?これは……」
メンデスの近くに瓶が2つ転がっていた。それも割れているようではなくちゃんと開けられたような跡があった。もしかして、と思って首に手を当ててみると脈があった。
「生きている……」
「え?」
そう言うとユアは確認し出した。
「本当だ……」
と言ってユアも驚いていた。私は、崖をチラッと見たがこの高さから落ちて死んでいない彼女の悪運の強さには、本当に驚く。でも、私は彼女を助けたいとは思えない。
ユアにあんなに酷い事をしていたからこれはその罰だと私は思っている。だから生きていることが分かってもわざわざ助ける必要はないと思った。
「確認も済んだことだし帰る?」
「え?」
ユアは私が言ったことに驚いた表情をしながら彼女をチラチラと見ていた。
「どうしたの?」
「その……彼女は助けないの?」
「助けないけど?」
私がそう言うとユアは、強張ったような表情をしていた。ユアにそんなに怖がられることしたかな?と少し疑問に思っているとユアが恐る恐るこんなことを聞いて来た。
「助けちゃ駄目なの?」
私は、ユアがどうして彼女を助けようとすることに戸惑いを隠せなかった。私が知っている範囲でも、あれほど酷い事されてきたのにどうして助けようとするのかが分からなかった。
「ユアは、彼女にたくさん酷いことをされてきたのにどうして助けようとするの?」
「……一応これでも同じパーティメンバーとして活動してきたから……。それに私の知っている人だから生きていたら助けてあげたい」
とユアは、そう言った。あれほど酷い事されてきてもパーティメンバーだからで助けたいと思えるのかな?でも、パーティ以前から知っているからもっと付き合いは、長いのかもしれないけど……。
それとも私がおかしいのかな? 私をいじめて来た義母やその娘、またそれに同調していた父のことはそう言って助けることはできるかな?…… と考えたが私にはそんなことできないと思った。会わなければ別に何とも思わないけど彼女達がそんな窮地に立たされていたら、私は平気で見捨てると思う……。
それなのにユアは、助けたいと言った。いろいろされてきたのに……。彼女が優し過ぎるだけなのかな?…… 私には、よくわからない。結局よく考えても答えは出ない。でも、ユアの言っていることも尊重してあげたいと思い仕方なく助けることにした。
「……分かった。命だけは、助けるけどそれでもいい?」
「うん!」
私がそう言うとユアは、暗い表情から一変、少し嬉しそうにしていた。
「あ、あと彼女が目を覚ましたら二度とユアのことをいじめないように釘を刺しておくから」
「う、うん。ほどほどに……」
と言われながらメンデスの手当てをすることにした。