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102.ユアを慰める



「終わったの?」


 もう少し続くと思われたオークとの戦闘は、オークが見せた隙をついて首を狩ったため急に戦いが終わって直ぐに倒したという実感が湧かなかった。終わったの?と思っていると後ろから走って来る音がしたので振り返るとユアが目の前にいてぶつかって来た。


「ぅわ!うっ」


 急なことで勢いを殺すことができなくて倒れたがちゃんとユアを抱き留めた。


「どうしたの?ユア?」


 そう言ってユアの顔を覗こうとするが胸に顔を埋めていて顔がのぞけなかったが泣いていることは、分かった。そういえば戦闘中に私の名前を叫んでいたから心配したのかな?

そんなことを思いながらユアの背中を撫でていた。


 それからしばらくするとだいぶ治まったのかユアが私を覗いた。その目元は、赤くはれていた。


「落ち着いた?」

「うん。レーナちゃんが生きていて良かった……」


 ユアは、そう安心したかのように呟いていた。


「ユアに心配をかけたかもしれないけど私もユアのことを心配していたからね?まぁ、ほとんど私のせいだけど……」


 ユアが危険な状態になったのは、オークを上手く引き付けることができなかったことが原因だった。私は、てっきり攻撃を仕掛けた人に襲い掛かって来ると思っていたけど、そうなるばかりではないという事が分かった。それは、ある意味いい収穫だったけどユアを危険に晒してしまって申し訳ないと思っていた。


「そ、そんなことないよ。レーナちゃんのおかげで助けてもらえたし、オークも倒してくれたから。それに彼等がどうなったのか知りたいと言ったのは、私だから……それでレーナちゃんに何かあったら私のせいだよ……」


 ユアは、そう言って暗い顔をしていた。


「そんなことないよ。それに、私達は生きているからもう気にしなくてもいいじゃない?」

「…そうなのかな?」

「そうだよ。とりあえずユアが怪我をしていないか確認しないと」


 そう言って起き上がりユアを太腿に座らせると腕や太股、背中に怪我はないのか確認する。


「え?え?」


ユアは、急なことに驚いていたけど私は、ユアの左掌が一部切り落とされたようになって血が滴っていたので魔法で直してあげた。


「よかった……。たいした怪我は無かったみたいね」

「それは、レーナちゃんのおかげだよ。レーナちゃんは怪我していない?」

「ちょっと足が心配なぐらいかな?」


 オークに踏まれたときは、かなり痛かったから。そんなことを思ったけど戦闘中は痛みをほとんど感じていなかったけど。そんなことを思いながらユアを立たせてから自分も立ち上がろうと左足を突いたとき激しい痛みが私を襲った。



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