98.足取り
それから周囲を警戒しながら歩いて行くと足跡から少し離れた所にあるものを発見した。
「あれって……」
そう思い近づいて見ると左腕が落ちていた。二の腕の中程から切れていて切り口辺りには、血が広がり赤黒い色で固まっている。試しに軽く触ってみたがかなり冷たかった。後にいるユアはというとその光景をみて「ゴクリ」と唾を飲み込む音が聞こえた。
多分だけどこの腕は、女のものだと思うけどユアに一応、聞いてみる。
「誰の左腕か分かる?」
「……メンデスのだと思う」
切り口から考えると何かで切られてここに切り飛ばされた感じかな?割と綺麗に切れているし……。そう言えばオークは、どんな武器を持っていたのか聞いていないと思いユアに聞いてみた。
「ユアがオークと遭遇した時は、どんな武器を持っていたの?」
「?武器なんかは、持っていなかったよ?」
「え?」
オークは、武器を持っていなかったの?でもこの切り口から考えると刃で切られた感じだ。となるとユアが崖から落ちた後に武器を手に入れたって事?……それってあの3人の誰かの武器を持っているの?
「……もしかしてオークは、武器を持っているの?」
「多分」
「何も持っていなくても強かったのに武器まで……」
とユアは、武器を持っているオークでも想像したのか少し震えていた。そんなユアの背中を軽く撫でながら先を急ぐことにした。
「……とりあえず進もう?」
「……うん」
それから足跡を辿って行くと腕が落ちていた辺りから森の中を出鱈目に走ったようで同じような所をウロウロしながらとある木に座ったような跡があった。そこには、ポーチのようなものと空き瓶が2つ転がっていた。
「ユア、彼等ってポーションを持っていたの?」
「一応、私を除いて一人一個持っていたと思うけど……」
「そう……。でも、ここに2つあるわよね」
そう言いながらポーチの中を見るとギルドカードが入っていた。
「あ、ギルドカード」
そう言って手に取り、誰のかを確認した。
名前 オノマ
年齢 14
特技 剣
冒険者ランク E
「オノマって14歳なの?」
「そうだよ。私以外みんな14だよ」
「そうなの?ユアは?」
「私?私は、11だよ」
ユアが11歳と聞いて少し驚いた。私より背が低いから10歳になっているかどうかと思っていた。まぁ、ユアが、可愛いのは、変わらないけど……。
「それにしてもメンデスがオノマのポーチを持っていたの?」
「多分そうなると思う」
「逃げるときにオノマのポーチを持ち出して逃げたということ?持ち出せるくらいには、余裕があったのかな?」
「どうかな?」
「……まぁ、考えても分かるとは、思えないし続いている足跡を辿ろうか?」
「うん」
オノマのギルドカードをユアに渡してから歩き出したがしばらく歩くとその足跡が途切れた。
そして、その先にあるのは、高さ数十メートルもある崖だった。