97.可能性
それからしばらくしてユアが顔を上げた。
「レーナちゃん、ありがとう。もう大丈夫だと思う」
「そうなの」
「うん。その……」
と言ってユアが私の下に視線を向けるので私も見ると……。
「あぁ。まぁ、どうせ汚れるから気にしなくていいよ。それより行くのなら行こう?」
そう言ってユアに手を差し出すと困った表情をしながら聞いて来た。
「え、えっと……。いいの?」
私が頷くとユアは、私の手を握り立ち上がる。
「こ、このまま行ってもいいかな?」
「ユアがそうしたいならいいよ?でも、魔物が来たときは手を放してね?」
「うん!」
そうして私達は、先程の場所に戻るべく歩き出した。
そして先ほどの現場に戻るがユアの顔色は、あまりよろしくない。
「大丈夫?」
「……う、うん」
ユアは、何とか返事をしている感じだが先程の様子と比べると大分よさそう。でも、あまり長い時間かけるのは、ユアの負担にもなるので早く探してこの場所を去らないと……。
そんなことを思いながらギルドカードらしきものを探していた。
探していて、ふと思ったのだが彼等の遺体らしきものが見当たらない。細かな破片ならそこら中に落ちているけどどうしてなのかな?と思った。もしかしてこの場所以外にも足跡があるのでは?そう思ってそれらしきものを探していると血がたくさん付着している茂みを発見した。もしかして、そう思いユアに声を掛ける。
「ユア、あそこの茂みに行ってみない?」
そう言って私が指を指した方をみたユアは、私が何を言いたいのか理解したような顔をして頷いたのでその茂みに近づいて掻き分けるとそこには、血を滴らせながら逃げていると思われる足跡があった。ただその足跡の数が1つしかない。
「?もしかして一人だけ逃げた?それともあの場所で二人が死んだの?」
そんなことを疑問に思っているとユアが後から服を掴んできた。
「どうしたの?」
そう聞きながら後を向くとそこには、震えながら俯くユアの姿があった。
「……お、オークって、人とか、食べる、の?」
私は、ユアの言ったことを聞いてなるほど。と思ってしまった。あれほど血などが散乱していては、全員逃げれるとは、思えない。仮に大怪我をしたのが二人としても、あれほど血が散乱するとは、考えにくいがオークに食べられてそうなったとしたらあり得るかもしれないと思った。
「……オークが人を食べるのかは、分からないけどあの惨状から考えるとあり得なくは、ないと思う」
「そうなの……」
ユアは、彼等の末路の一つとしてその可能性もあることを言うと顔色を青くしていた。
「大丈夫よ。仮にオークと遭遇してもちゃんと処理すれば大丈夫のはず!……多分」
「多分って」
そう言いながらユアが苦笑いしていた。ちょっとは、落ち着いたのかな?慰めようとは思ったけど上手く慰めれたのかは、謎だけど……。
「そろそろ先に進む?」
「……うん」
「今度は、もっと警戒しながら進もう。もしかしたら出てくるかもしれないからちゃんと気をつけてね?」
「分かった」
そうして私達は、その足跡を辿りながら再び歩き出した。