96.惨状
それから足跡を追って歩いていると血を流している人数が増えたのか血痕が2つになっていた。そしてそこからしばらく歩いて行くと血の臭いが強くなってゆく茂みを抜けると。
「!?」
ユアは、驚いたと思ったら口を手で押さえて、しゃがんでしまった。何があったのかな?そう思って私もユアの視線の先をみると辺りには、夥しい量の血が辺りに散乱していた。よく見ると肉片や臓器らしきものも散らばっている。
「思っていた以上に悲惨な光景ねぇ……」
そんなことを思いながらユアに視線を向けるとユアは、顔中に汗を掻きながら嘔吐いていた。ユアには、刺激が強すぎたみたい。私は……思いのほか平気みたいだけど。
「ユア、大丈夫?」
「うっぷ、うっぷ」
とユアは、口を押えながら嘔吐いている。一旦この場所を離れた方がいいかもしれない。
「一旦場所を変えて落ち着かない?」
そう言うとユアは、頷いたのでユアの手を引き、離れた場所に移動した。
風が吹いている方に歩いて来たのでこの辺りでは、あまり血の臭いは、しないはず。そんなことを思いながら近くにあった木の根にユアを座らせた。
「吐きそうなら手で押さえないで出しちゃおうね?」
そう言いながらユアの片方の手を握ってもう片方の手で背を摩っていると戻したので落ち着くまでその行為を続けていた。それからしばらくすると嘔吐かなくなった。
「大分落ち着いた?」
「うん」
「それなら口の中濯ぐ?」
と言ってコップに水を入れて渡してあげる。
「ありがとう」
「その辺に適当に吐いちゃって。飲みたかったらもう一度あげるからその時は、言ってね?」
それからユアが口を濯ぎ、水を飲んで少し落ち着いた。
「大分落ち着いたかな?」
「うん。レーナちゃんありがとう」
「大丈夫だよ。流石にあれは、予想外だったからしょうがないよ」
と言いながらユアの頭を撫でていた。
「あ、う、うん」
とユアは、そっぽを向きながらそう返事をした。少し照れているのかな?とそんなことを思いながらあの現場で何かしたいことがあるのか聞いて見ることにした。
「……ユアは、どうしたいの?」
「……ギルドカードぐらいは、拾っておきたいかな?見つかるのかもわからないけど……」
「そうなの……ならちゃんと落ち着いたらもう一度一緒に行こうか?」
「……一緒に来てくれるの?」
「何言っているの?ユアが一人で行って倒れたら大変じゃない。それに、魔物とかも出てくるかもしれないから一人で行くのは、危ないよ?」
「そう、だね」
「じゃあ落ち着くまで待っているから大丈夫だと思ったら教えて?」
そう言ってユアの手を離そうとしたらユアが私の手を握って来た。どうしたのかと思いユアの顔を見るが目を合わせてくれない。すると顔を赤くしながらこんなことを言って来た。
「あ、その……抱き着いてもいいかな?」
そう言うとユアは、俯いていた。その言葉を聞いた私は、ユアの正面に回り抱いてあげるとユアの体がピクッとしたかと思うとユアも手を回してきた。それからしばらくの間ユアを抱いていた。