91.治療
それからユアの左腕の骨を元の位置に戻してから利き腕と思われる右腕の修復を行った。前回は意識がなくなったけど、今回はあまり無駄な魔力を使わないようにやってみたから意識がなくなることはなかったけど、かなり魔力が減ったという事は分かった。
「一応、左腕の骨の位置を戻したのと右腕の修復をしてみたけどどう?」
そう言うとユアは、右腕を動かしたり指先を動かしたりしていた。
「元通りだと思う。多分だけど」
「それならよかった」
「それにしてもレーナちゃんの魔法、凄いね!治るまでの間ずっと痛いのかと思っていたけど、全く痛くなくて不思議な感じ」
「そうなの?」
「うん」
治癒魔法を使っている間は痛いのかと思っていたけど、そうじゃないことに少し驚いた。それなら私の魔力だけ気をつければいいかな?まぁ、まだまだ時間が掛かりそうだけど…。
「…そういえばオノマに飛ばされたとか言っていたけど、どの辺に衝撃があったの?」
「背中辺りかな?」
「それなら一応みておくから起きてくれる?あ、それと服も脱げたら脱いで?」
「う、うん」
と言ってユアは起き上がり何とか服を脱いだので、後に回って背中の部分を見ると殴られた?と思われる場所が青黒くなっていた。
「これ寝転がっていて痛くなかったの?」
「?特に?痛くはなかったけど?」
え?痛くなかったの?と思いながらその部分に触れてみた。
「うっ!」
「やっぱり痛いみたいじゃない」
「そうだけど、寝ているときは痛くなかったもん!」
「そうなの?」
触ったらあんなに痛そうにしていたのに…。もしかしてウルフの毛皮がいい感じにクッションの役割をしていたのかな?
「とりあえず治療しておくよ」
そう言って治療をしたけど骨を修復した時のような魔力消費は、なかった。もっと魔力を使うのかと思ったけどどうゆうことなのかな?骨を治すことは、魔力消費が多いということなのかな?位置を戻すだけならそれほど魔力とか使わなかったし、今の治療も…。
もしかして怪我の度合いかな?大怪我とかだと元に戻すまでの魔力消費が激しくて、先程の治療は骨が折れているとかそんなこととかは、なかったからそれほど魔力を使ったように感じなかったから…。それなら、治るまでの期間の方が近いのかな?とそんなことを考えていた。
「レーナちゃん、終わったの?」
「あ、ごめん」
そう言って新しいローブをユアにかけて先ほどユアが羽織っていたローブを私が着る。
「?さっきと違うローブ?」
「そうだよ。さっきは急いでいたから私が着ていたローブをかけたけど早く綺麗な方に変えればよかったね。ごめんね?」
「そんなことは気にしなくてもいいよ。(レーナちゃんの匂いがしてちょっと落ち着いたというか…)」
「?後半の部分が聞こえなかったけど何か言った?」
「な、なんでもないよ!そ、それより治療をしてくれてありがとう」
「気にしなくてもいいよ。私もここまで使えるとは思っていなかったし、それにただの実験だよ?上手く行く保証、なかったわけだし」
「それでもありがとう。いつかこのお礼できるように頑張るから」
と私を見つめながらお礼を言ってくれた。
何というのかその…面と向かってそんなことを言われると何だか恥ずかしい。
「…気持ちだけは、受け取っておくから寝ましょう」
そう言ってユアに毛布とかを渡したけどユアは、レーナちゃんのおかげで生きているから受け取れないと断られた。そんなことをしばらく繰り返していたけど一緒に寝ればいいと言う話になってユアと一緒に毛布と寒さ対策用の布をかけて横になる。それからしばらくするとユアの寝息が聞こえて来た。余程疲れていたのかな?そんなことを思いながらユアの寝顔をみるとあどけない表情で眠っていた。何だか妹ができたみたい。そんなことを思いながら私も眠りについた。