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90.苛立ち



 それからご飯も食べ終わり火を消すと辺りが暗くなるが月明かりが木の隙間から射し、それなりに明るい。


「今日は、早く寝て明日に備えようか?」

「うん」

「とりあえずユアの治療、上手くいくか分からないけどやってみようか?」

「う、うん」


 私がそう言うとユアは、少し体を強張らせていた。痛い事をするわけじゃないからそこまで身構えなくてもいいと思うけどなぁ。と思いながら、痛くないのかは、分からないのでとりあえずそのままにしておく。


「まず左腕の怪我の具合をみたいけど…流石に服は、脱げないよね?」

「…うん」

「服を切ってもいい?と言うかもう一部切っているけど」

「え、いや、その…このままは、無理なの?」


 と少し、嫌そうというか恥ずかしそうというか、何か理由があって少し断りたそうに聞いて来た。


「それは、分からないけど怪我の具合をみた方が上手くいきやすいかなと思って…嫌なら頑張ってみるけど…」


 まぁ、嫌がるのなら無理にとは、言わないけどそうなると少し不安。


「そ、そこまで無理にじゃないから、レーナちゃんがやりやすいのなら切ってもいいよ」

「いいの?」

「う、うん」


 となぜか緊張した面持ちで頷いてきた。ナイフで服を切られることが怖いのかな?とそんなことを思いながら魔法で明かりを作ってから左肩部分から腕の部分を切って服を捲った。


「!?」


 そこから出てきたのは、酷いやけどの痕で私は、驚いた。もしかして先ほどユアが少し躊躇していたのはこれが原因だったのかと思った。


「このやけどの痕は、どうしたの?」

「その、昔メンデスに魔法で…」

「へぇ~」


 あのパーティの奴らがそんなことをしたのか…本当に碌な奴がいないパーティだなぁ。


「(あいつら殺っちゃおうかな?)」

「え?え?」


 とユアが戸惑っているような声を出した。もしかして声に出ちゃったかな?でも、何もしていないのにユアにそんなことをしたと思うと腹立たしい。絶対脅しとかそんな感じでユアに火を放ったに違いないと思った。


 実際にどのようなことがあったのかは、レーナは、知らないけどユアの出来事としては、正しい。でも、レーナがそのことを知る機会は、あるのかと聞かれると何も言えないが…。




 それからしばらくするとユアがおそるおそる声を掛けて来た。


「れ、レーナちゃん?」

「?どうしたの」


 とユアの方に視線を向けるとビクッとした。ん?もしかして怖い顔をしていたのかな?そう思い少し心を落ち着かせた。するとユアは、何か決意したかのような表情を見せながら私にこう言ってきた。


「さ、さっき物騒なことを言っていたけどレーナちゃんにそんなことして欲しくないの。だからそんなことを考えないで?」


 と上目遣いでそうなこと言ってきた。注意されているはずなのにそんなユアの様子がかわいいと思ってしまった。まぁ、本気で殺っちゃおうと思ったわけじゃないけど…。


「本気じゃないから大丈夫だよ」


 そう言うとユアは、安心したような表情を見せた。


「でも、殴るか蹴るかは、すると思うけど」


 というと少し困ったような表情をしていた。それにしてもコロコロと表情が変わるなぁ。と思った。育った環境が環境だったから少し感情に乏しいのかもと心配をしていたけど諦めたような表情以外もちゃんとしているなぁ。と思った。


「ほどほどにしてね」


 とユアは、少し苦笑いしながらそんなことを言った。あれだけの事や今までにもいろいろなことをされているのにそんなことを言えるユアが少しだけ眩しく感じた。感情のままに殺そうかな?と思ったのは、少し直情的過ぎたかも…と少しだけ反省をした。ちゃんとやったことの責任や罰を受けてもらわないといけないからね?とそんなことを思っていた。



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